海を眺めて、口直し≪登場古生物: ウミユリ類≫
気を取り直して、海を覗く。
泥底にちりばめられた腕足動物や、その間で花咲くウミユリ類には、もう慣れてきた。ここは波あたりが強いようで、ホテルから見下ろしたときあんなにも豪奢に茂っていた網状のコケムシ類は、影も形も見当たらない。
石炭紀のウミユリ類は、現在のトリノアシなどといったウミユリ類に比べて、よりカップ状の先端部がはっきりして見える。ちょうど、チューリップの花弁がうんと伸びて触手になったような印象を、受けた。
そんなウミユリ類には、面白いことにというべきか、興味深いことにというべきか。首がもがれたように、棒だけになってしまっているものが多かった。
しばらく眺めていると、原因が明らかになる。
――魚だ。
平べったい条鰭類が、その鱗を輝かせながら、群れを成してウミユリをつついている。群れが一斉に向きを変えるたび、キラキラと鏡のように、光る。
腕が一本千切れると、そこに一斉に群がった。ウミユリ類の“頭”を一口に食いちぎるには全く不足と見えるが、そのうちああやって、食いちぎられてしまうのだろう。
あの魚も種類が皆目わからない。
網があって採集できれば、と悔やむ限りである。
ここで、心躍る出会いがあった。
海中に、直線のように現れたそれは、最初のうちはなにか人工物だろうかと思った。
しかし、それが近づいてくるにつれ、直角貝の一団だとわかった。
大きさは10センチもなく、ペンくらいといっていいのだが。
それでも。おぉ、本当に古生代に来たのだな、という実感がわいてくる。
時間が許せばシュノーケリングでもしたいところだ。水着なんて、ないけど。
と思ったとたん、ひゅう、と風が吹いて、身震い。
——そう、亜熱帯にあるとはいえ、いまは氷河期なのだ。
午前中のパラーは、海水浴にはちょっと寒い。




