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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
いざ着陸、3億年前の異世界ー石炭紀の地球に、私たちの世界の「あたりまえ」は通用しない―
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<コラム>―宇宙に上がるには?―

余談ではあるが、地球においてロケットの地上発射は過去の遺物である。

地球上にはすでに軌道エレベーターが複数設置されている。この動力には電気(機種にもよるが原子力、太陽光、送電レーザー等)を用いることができ、エネルギー必要量も半分未満(理論値で1/6と喧伝している)である。そのため、20トン未満の貨物輸送にわざわざロケットを必要とする局面はほぼない。

問題は、人間の輸送だ。軌道エレベーターの速度には(機種によって差があるが)時速200㎞を超えるものはまずない。最低二週間はかかる。そして、数週間におよぶ軌道エレベーターでの閉鎖条件は人間を容易に狂わせる。私も宇宙に行ってみたいということで軌道エレベーターに乗ってみたことがあったが、3週間にも及ぶ閉鎖空間、極めて狭い密閉個室、その過酷な環境を使わざるを得ない、すし詰め状態になった低賃金労働者のマナーの悪さや体臭にあてられ、旅する前に体調を崩してまた2週間かけて帰ったことがある。

このように、人間の輸送などの急を要する用途にはロケットが未だ用いられるが、燃料問題と安全問題がつねに付きまとい、ロケットにとっては大変不利だ。ロケット発射とはいっても大部分がペイロード1~10トンの小型ロケットを用いる宇宙旅客機である。航空発射は気象条件による制約が小さく、発射中止判断が安全かつ容易である。さらに、エネルギー資源が枯渇して久しく合成燃料を使わざるを得ない地球においては大量のロケット燃料を消費するより、比較的少量のジェット燃料を使ってペイロード1~10トン級の小型ロケットを頻回に空中発射し、総燃料量を削減する(とはいっても多くて1割程度だが)ほうが好まれる。


なお、緊急を要するものや、ペイロード30~50トン帯の需要に関しては、最後までロケットが生き残った領域である。これは空中発射母機の重量の問題が大きく、500トンを超える離陸重量から特に降着装置や機体強度にしわ寄せがくるためである。

しかしながら、実際に何に使うかと言われれば対隕石弾頭と大陸間弾道弾くらいしかない。

なので、この種の用途には軍用ミサイルをチャーターして用いることになっている。

民間人が目にしたり乗ったりすることは、まずない。


このように、巨大ロケットの出番は地球においては、もうない。

資源やエネルギー問題が植民惑星の開拓である程度のめどをみるようになるまで、巨大ロケットの開発技術すらほとんど失われ、対隕石ミサイルとしての技術が温存されたのみだった。

そして、民間用ロケットというものは20~21世紀に存在したある種伝説に近いポンコツ、愚かしさと無駄遣いの象徴としてみなされてきた。

20世紀的な言い方をするならばだが、「宇宙のT型フォード」といえるだろう。

「恐竜」という喩えも、古生物を好むものとしては恥ずかしいがよく似合っている。

私たちにとってロケットとは、それそのものがAncientな存在なのだ。


しかし、いま、植民惑星という古代の地において、巨大ロケットが再注目されている。

エネルギー資源が潤沢だが施設インフラの整っていない植民惑星を開拓し、おもにその高額商品や高額資源を安価な燃料で打ち上げて地球圏に届ける、という用途にはロケット以上に勝るものはない。植民惑星では炭化水素類には事欠かず、勿論ながら軌道エレベーターの建設はまだ何十年も先だ。

結果として、21世紀に火星開拓に用いられた巨大ロケット、「マーズシップII」の設計を参考に、信頼性を上げるためその規模を半分に削ったロケット(”ハーフシップ”)が主に用いられている。さらにロケットの生産は植民惑星の技術レベルでは困難であるため、ブースターにも一回限りの耐熱シールドをつけて月面基地で生産し、再使用回数が尽きるごとに売りつけている。結局のところ、植民惑星では資源を売っても売ってもロケット代と燃料基地の設備投資に消えていき、外貨は殆ど稼げず産業の発展も見込めないという。

なんとも世知辛い話だ。


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