表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
いざ着陸、3億年前の異世界ー石炭紀の地球に、私たちの世界の「あたりまえ」は通用しない―
51/227

<石炭紀紀行> ORBIT

超時空ゲートが開くのは、月に1回。

そのうち、夏と冬の2回はとくに輸送規模が大きく、数十隻にも及ぶ大船団となる。

輸出資源を満載したロケットの発射は一週間にも及び、輸入物資を積んだ宇宙船の着陸も3日に及ぶ。星を挙げた、一大イベントである。

ロケットの発射を祝う前半の祭りは、すでに終了。


私たちがすでに降下していることからわかるように、いま行われているのは後半の、着陸を祝う祭りである。

――しかし、植民惑星の人々にとって、その理由はどうでもよいようだ。

煽情的なダンス、さまざまな歌や音楽、出し物、フリーマーケットなどなど…

様々な出し物が行われていて、まるでまとまりがない。

理由はともあれ植民惑星の人々にとって、宇宙船は日常であり、誰も気に留めるものはいない。

重要なのは「祭りがある」ということなのだ。


時折、空をひゅっ、と細い線のように、再突入する宇宙船がある。

しかし、誰も気に留める様子はない。

ひときわ大きな“流星“が、昼間だというのに光りながら駆けぬけても、見上げるものさえいなかった。数十秒遅れて、ゴロゴロとした、雷のような重低音が響く。

「あれ、大丈夫⁉」

心配しているのは、私だけだ。

「あぁ、ブースターね」

アリアはなに、知らなかったの、と言わんばかりに、すましている。

「ブースター⁉ 何百トンもあるよね。再利用でもこの惑星から作るでもなく…軌道から降下させるってこと?」そう驚くのも、やはり私だけだ。

「そう。植民惑星では、宇宙船を造船するほどの技術力はないから、月面で製造されたブースターを超時空ゲートで送って届けるの。」

――どうやらそれもまた、植民惑星の日常らしい。

「火球が大きいのは、使い捨ての断熱材を採用しているから?」

「たぶんそうね。ブースターはいちど落としたら最後、大気圏再突入することはないから。」

「そこまでして届けないと、植民惑星から資源を回収する手段がないってことか…」

どうあがいても、ここは地球政府による植民地なのである。植民地であるからには、本国に富をもたらさねばならない。その存在自体が搾取的であって、ここを訪れるということ自体がそういう目的を帯びざるを得ないことを、改めて感じさせられる。


――そういう背景があるから、彼らはまったくもって降下する宇宙船に対して気にも留めないのかもしれない。

だいいち、宇宙船は居住地から遠く離れた洋上や砂漠に着陸する。

ちゃんと目視できる範囲に着陸するのは、万が一落ちてもたいした被害を及ぼさない、有人・精密機械ユニットだけだ。距離にしても、宇宙までの垂直距離よりも、着陸地点までの水平距離のほうが長い。

それでは、軌道祭といいつつ軌道の話が全然盛り上がらないのも納得といえよう。


「もう一本串焼き買ってきたけど、食べる?」

「結構おなかいっぱいだけど、食べる。また「ドルフィン」?」

「そうよ」

「さっきも食べたけど、しっとりとした食感、かなりいけるよね、これ」

「ここの人たち、ほとんどこれしか食べないのよ」

「南の島でマグロしか食べない人がいるのと同じ構造、ってことか」

「そうね。マグロ漁船は近いかも。外洋でまとまってとれて、船内冷凍で新鮮なまま届けられるってあたりが」

「刺身も試したいな、これ」

――Eugeneodontはギンザメにどちらかといえば近いから、サメに倣って刺身にするなら心臓、だろうか。


「刺身はないかな…たぶん。ま、もし誰かがスシ屋を始めてないか、気にしてはみるけど」

「そっか、残念」

「ところでさ、この惑星って自転周期が22時間45分ってことは、打ち上げと着陸はしやすそう、ちょっと地球が速く「追い風」になるし、地球の扁平度が上がって赤道付近の重力が低くなる」

私はふと思いついたことを口走ってみたが、ちょっと会話の流れを読めばよかったと思う。

「えっ、いまなんて?」

アリアが聞き返したとき、ファンファーレが鳴り響いた。

「軌道杯レース開催まで、あと1時間。海上座席が解禁されました」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ