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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
いざ着陸、3億年前の異世界ー石炭紀の地球に、私たちの世界の「あたりまえ」は通用しない―
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―描写を支える科学的背景―  石炭紀の一日は、いまより短いことについて

時間表現の単位を“年”から“日”というもっと素朴な単位へと落とすことができれば、古生物学的な資料の中に、絶対年代を推定するためのデータが見つかるかもしれない。もしそうなら、高価な同位体分析の代わりに化石を調べるだけで、運が良ければその化石の“相対年代”だけでなく“絶対年代”まで直接推定できるようになるかもしれない。そのとき、あらゆる古生物学者が年代測定者に、あらゆる化石が年代測定器になりうるのだ。――ジョン・H・ウェルズ(1963)

一年は365日、一日は24時間――私たちのあたりまえは、過去の地球には通用しない。このことについて初めて考察したのは、チャールズ・ダーウィンの息子であるジョージ・ダーウィンと思われる。彼は潮汐摩擦による自転への影響や、月の軌道が時間とともに外側に拡大したこと、過去の地球において、一日はより短かったであろうと推定した。しかし――その物的証拠が見つかるまでには、相当の時間を要した。

64年後、Wellsは現在、デボン紀及び石炭紀の化石サンゴにおける成長線を測定し、現在のManicina areolataで360本、中期デボン紀のHeliophyllum, Eridophyllum, Favositesで385-410本、石炭紀後期のLophophyllidium、Oaniniaで385-390本を記録した。地球の公転周期は変わっていないとすると、一日の時間が

もともと地球の自転時間は5~10時間であり、その後潮汐干渉により自転時間は徐々に伸びていき、現代の24時間に至ったということである。現在では精密な観測により、100年あたり1.7~1.8ミリ秒の割合で地球の一日が長くなっており、月が毎年3.8㎝地球から遠ざかっていていることがわかっている。

ここで鋭い読者なら疑問に思うだろう――石炭紀から現代までの3億年で1時間も一日が伸びたのならば、ちょっと計算が合わないのではないか?と。

これは、太陽による大気加熱が地球の自転を加速し、月による潮汐ブレーキを打ち消していたとする説がある。これは20億年前から6億年前まで地球の一日が19~20時間で停滞した状態に保ち、それが6億年前ごろから何らかの理由で破綻して1日が伸び始めた――という説である。


本書では、石炭紀の1日の日数推定としてもっとも妥当な数字である385±5日説を採用し、1日は22時間45分として描写することとする。

さて――問題は、これを時計や暦にどう合わせるかという問題だ。

現在の時計は、12時間で一周するように作られている。古代エジプトでは日の出から日没を12分割、日没から日の出を12分割していたというから、その名残なのだろう。60進法との相性も良く、分針と秒針は60で1回転する時計はとても都合がいい。初期の時計には1日に24回鐘を鳴らすこともあったという話はあるが、文字盤としてはやはり12のほうが認識しやすい。

現在も24時間アナログ時計なるものがある(文字盤が24まである)ので、それに近いものを使えばよいが…1時間が60分であることは変わらないのに、時の針は23時間で1回転…とすると、なんとも気持ち悪い。そもそも文字盤が12までの時計における、1時間あたりの角度変化が30度というのが割と人間がわかりやすい角度の限界に達している…といえそうだ。これが15度…いや、15.65度になると、ユーザーインターフェースが最悪である。最悪なのが、23は素数である点だ。たとえば5分待て、と言われたときに、時計上で5分が直感的にわかりにくい。

さらに――運用上の問題もある。

過去の地球の時間が23時間きっかり(石炭紀なら割とそうだが)とも限らないので、少しずつ暦にズレが生じてきてしまう。新たな暦体系を作るのが望ましい。

デジタル時計のほうが望ましい、とも思ったが、そもそも人間にとって時計とは、なんだ。一日の長さのうちどのくらいが経過したかを知りたい目的なら、やはりアナログに一日の長がある。

Darwin, G. H. (1899). The Tides and Kindred Phenomena in the Solar System: The Substance of Lectures Delivered in 1897 at the Lowell Institute, Boston, Mass. Houghton, Mifflin & Company.

Wells, J. W. (1963). Coral growth and geochronometry. Nature, 197(4871), 948-950.

Mitchell, R. N., & Kirscher, U. (2023). Mid-Proterozoic day length stalled by tidal resonance. Nature Geoscience, 16(7), 567-569.


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