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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
プロローグ 石炭紀の熱帯雨林にメガネウラを追う
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4. 真夜中カヤッキング (1) 柱の森、ワニもどき

午後のスコールが、全てを押し流すような轟音と共に過ぎ去った頃には、もうすっかり、夜だった。

風邪を引いたような冷たさだった。

じっとりと水を含んだ服が、重くのしかかっている。

気温計を見れば、気温21度とある。

昼間の蒸し風呂が嘘のように、肌寒い風が吹き抜けていく。


私たち一行は、村に3隻ある、緊急連絡や急病人の搬送用のモーターボートのうち一隻を借り上げていた。さながら、昔の「早馬」のようなものである。

ほかにもエンジン船の基地はあるのだが、どれも居住空間から遠く隔離された湖の真ん中にあった。

それほどまでに、人々は火を恐れていた。


「もう、ひっどい寝癖!」

アリアが悪態をつきながら、湿った髪をかきむしる。

酸素が多すぎて大気圧が若干増えたこの星では、水は105度あたりでようやく沸騰する。

おかげで洗濯物は乾きにくいし、私のシャツも生乾きの雑巾のような匂いを放っている。


「アリア~大丈夫? エンジン掛けるから、ちょっと待っててね」

案内人のリリィが、操縦席で笑った。

弱冠20歳にして、船から飛行機まで何でも操る彼女だが、教本が湿気で波打っているのを見てげんなりしている。彼女とてこの星の出身なのだが、氷河に面した寒冷な村で育ったのだ。


「私も教本がグズグズになっちゃって、あ~もう勘弁!まぁそれが熱帯の魅力なのよ~。ねぇお二人さん、暑くてジメジメ、暑くてカラカラ、寒くてジメジメ、寒くてカラカラ。どれがいちばん好きかしら?」


「暑くてジメジメ、かな。この星でカラカラは嫌だよ、なんでも燃えそう」

そう、私が答えると、アリアが即座にかぶせる。

「同じく!決まってるじゃない、だって色々いそうだし!」

私の肩をガッとつかみながら。


「ちなみに多数派ってどうなんです?」

「それが街の人に聞くとほとんど、暑くてカラカラなの、ふっしぎでしょ?洗濯物が乾くからなんだって。ジメジメが好きなのはアンダリーリョ(注:さまよう者:狩猟採集化した民のこと)だけだって彼らは言うわ。」

「えぇ…。ちなみに、リリィさんは?」

「え~、私? 寒くてジメジメかなぁ。雪景色を見ながら入る温泉とか、川が凍ったからって全部お休みになって、読書に夢を馳せるときとか。」

リリィはそう流れるように言いながら、手慣れた様子でエンジンを始動させた。

ガコン、バルルルル。

排気音が夜の静寂を破り、滑らかにくるりとボートを反転させた。

見れば、見物人が何人も桟橋に来ていた。

エンジン音を聞きつけて集まってきたのだろう。

彼らにとってこの音は、外の世界への扉のようなものなのかもしれない。


「お手数おかけしまーす!行ってきます!!」

私たち3人は、異口同音に彼らに手を振った。

村はすっかり闇に沈んで、明かりといえば、この船と、もうひとつしかない。

他から隔離された村はずれで、もくもくと煙をあげる発電艀はしけだ。

バイオマス発電の排煙に、下から緑がかった強力なスポットランプを当てている。


少し離れると、遠くに見えるひとすじの柱に過ぎなくなったが、たしかにそこに誰かがいるという、力強い証に思えた。

この広大な泥炭の森で、人はあまりに孤独だ。あの光は、互いの存在を確認し合う狼煙なのだろう。


ぐぉぉぉおお・・・

除湿器のたてる音が、船内にこだましていた。

船内灯が落とされても、私はなかなか、寝付けなかった。

アリアのほうをみれば、早くもすやすやと寝息を立てている。

それは、私には全くない才能だった。


私は一人、外の世界に見惚れていた。

妙に明るいようにすら思える月。その白く冷徹な光が世界を刷りだして、版画にしたみたいだった。

白く光る波のひとつひとつや、湿気すらもが、えも言われぬ美しさを醸し出していた。


暗闇の中、モーターボートは無人の浮き桟橋についた。

小さなカヤックが2隻、係留されている。

森を行き交うアンダリーリョーさまよう者、この森の狩猟採集民たちを呼ぶーによって、まるで駅伝のようにいたるところに、緊急避難先として整備されていた。


あの艀で出会った人たちも、そうした人々のひとつだ。

未開の植民惑星にはああいう村が、あちこちに点在している。

多くは大火から逃れた、旧首都の民なのだという。


この森には、動力船では入れない細い水路が無数にある。

だから、モーターボートで行ける限界地点にこうした浮き桟橋を作り、そこから先は手漕ぎのカヤックで移動するのだ。

これらは、この森の狩猟採集民たち(アンダリーリョ)が互いに整備し、維持している。村ひとつでは、資源も物資も完結しない。だから彼らは森を彷徨い、こうした結節点を介して、巨大な物々交換ネットワークを築き上げているのである。


そこにあったカヤックは、ほとんど丸木舟といったほうが近いしろものだった。

幅はといえば、手のひらを目いっぱい張れば両端に届いてしまうのでは、というくらい。

座ったとたん、ヒヤッとした感触が尻に広がった。

「うぅわ。水漏ってるよ、これ」

「ま、沈んでも最低、ライフジャケットで着衣泳ね。沈んでも溺れなければ帰れるって。ジュラ紀や白亜紀じゃないんだしさ!」

そう言って、アリアはこともなさげに、頼りない舟にどかっと乗り込んだ。

船というより寝袋に近い大きさで、水で冷えた肌越しに、アリアの足の温かさを感じる。

とともに重心がぐいと後ろにずれたので、私の方がじりじりと前によせるほかなかった。用意した荷物をみんな積み込むと、カヤックはもう、船というより、木に荷物と人を詰めたもの、といったありさまだった。


さいわい、水は増えてくる気配がない。喫水もまだ、余裕があった。

「気にしない、気にしない!さっきのスコールのせいだって。」

そうアリアは言うが、やっぱり不安はぬぐえなかった。


「あたしが漕ぐから、ケイは見張ってて。光るやつがいたら、すぐ教えてよね。

アリアはそう言って、オールを軽々と振った。軽く打ったひと漕ぎで、すっと船が前進する。たった数漕ぎで魚のように水面を滑ると、くるりとターンして船をとめ、声一杯に叫んだ。

「じゃ、明日朝ここに集合ね!」


こうして、私とアリアは、ここまで案内してくれたリリィに手を振ったのだった。

「行ってきます」

リリィは目いっぱいに手を振りながら、

「行ってらっしゃい!よい夜を!」

と叫ぶのだった。


振り返ると、桟橋に係留されたモーターボートに、ぼんやりとした暖色の常夜灯が灯るのがみえた。

きっと、除湿器の音をBGMに、ふやけた計器飛行マニュアルでも広げて、勉強に励んでいるのだろう。


木々の根元には、点々と進路を示す蓄光塗料が、ヒカリコメツキくらいの強さの光を発していた。それを辿れば夜闇のなかでも迷わない、というアンダリーリョたちの知恵であるらしい。

まさか、鬼火の正体ってあれの見間違いじゃ…という気が、早くもしてきたのだった。


リンボク類、おもにレピドフロイオスLepidophloiosの作る柱の森は、夜でも月の光がよく差して、幹を白く切り抜いている。

その根元には水が満ちていて、ざわめきながら、月明かりをちょうど映し出している。まるで、光の柱を崇める怪しげな宗教施設かのように思えた。


さて、そんな木々――柱々という語を新設したほうが的確かもしれない――の間に、少しだけ広い、幅がおおよそ、大人二人が腕を目一杯広げたくらいの水路があいている。

水路の縁にあたる木々には蓄光塗料のしるしが点々とつけられて、あたかも、夜闇にうかぶ滑走路のように進路を指し示していた。

それがなければ危険で仕方ないのだが、それでもちょっと興ざめである、という感想はやはり、否めなかった。ここはもう、ひとの手が入った誰かの居住圏であって、手つかずの自然などではないのである。

「こういうの、配信のときどうするの?」

「こういうのを含めて、過去への旅でしょ!だって、植民者の生活があったほうが、もっと身近に感じられるし、ロマンもわいてこない?えっ、こんな近くにいるの?って」


そう言いながら、アリアはあっ、と水面を指さした。

「ちょっとライトライト」


照らしてみると、レピドフロイオスの森の中、一番手前の木の根元で2つの目玉が、きらりと緑色の光を放っているではないか。

水面から突き出した、扁平な頭部。

ワニだ。


冷汗が背筋を伝う。

かつてオーストラリアで死にかけたトラウマが蘇り、指先が冷たくなる。

夜に光るワニの目は大概安全だという知識はあるが、心拍数は嘘をつけない。


「でかいよね」

私は小声で囁く。

「うん、2mは軽くありそ。仕留められるかな…」

アリアは完全に乗り気だ。

そして問題なのだが――2mの「ワニ」とこのボート、ひっくり返るのはどちらが先なのか。


「わくわくするよねっ。こうなんというか、心臓が飛び出しそうな感じ・・・」

「…いや、ぞくぞく、かな」

アリアはオールの動きを止めると、首から下げたカメラを繰り出した。

銛かなにかで仕留めて、カヤックごと転覆、というパターンをおそれていた私としては、カメラを見るなり、ほっと一息をついた。


カヤックが慣性で近づいていく。

いよいよ、ワニのような頭に肉薄している。

ワニの目が赤く光るのと違って、そいつの目の光は、緑だった。

ワニにしては目が丸く、出っ張りすぎている。

そして何より、皮膚の質感は、濡れたゴムと魚の中間だ。

ワニじゃない、あれはカイマンっぽい”何か”だ。


そう思うと、ちょっと気持ちが楽になった。

アマゾンに行ったときのこと、夜にカイマンを見るなり飛び込んでつかまえてしまう現地人がいた――まだオーストラリアで死にかける前だったし、見るたびにケラケラと笑っていたものだ。

そして、そのおかげでいまでもカイマンにはちょっとだけ、耐性があるのだった。


ヘッドランプの照度を上げる。

紅茶を煮詰めたようなブラックウォーターに浮かぶのは、滑らかな皮膚に覆われた、カエルがワニのふりをしたような生き物だった。

明らかに、ワニではない。もちろんカイマンでもない。

形だけは割といい線をいっている。

三角形の大きな頭には、ややカエルにも似た大きな目が、ぎょろりと出ている。

そして、巨大な眼窩から目の前側にむけて、皮膚に裏打ちされた、少し落ちくぼんだ広い区画があるのがわかった。

体には、魚のようにぬめぬめとした、うっすらとした鱗の輪郭が浮かぶ。

頭を走る、縫い痕みたいな線は――側線か。

そして、顎の後ろには鰓孔があって、それが水をひゅう、ひゅうと吹き出していた。


「バフェテス(Baphetes)の仲間……!」

アリアの声が弾んだ。

「すごい、石炭紀の四足動物でもとりわけ原始的なグループね」

そう囁きながら、撫でまわすようにシャッターを切る。


「捕まえなくていいの、だってこの前、捕まえられなかったってものすごく悔しがってたじゃん」

するとアリアは

「せっかく我慢しようと思ってたのに…!」

アリアがぐいっと身を乗り出した瞬間、船が大きく傾いた。

そして身の危険を感じたらしく、そいつはどさっ、バシャバシャ、と、子供が水に落ちたかのような音を立てて水に滑り込んだのだった。


「あーあ」

アリアは悪びれもせず、体勢を戻した。

「じゃ、行こっか。目的地はまだまだ先だし」


月夜の下、静かな水面を滑るように、ゆく。

虫の声ひとつ、ない。

「本当にヘッドランプ、つけなくていい?せめてサーチライトくらいの仕事はしたいんだけど」

アリアはこの人工光のまったくない夜闇のなか、月明かりだけを頼りにカヤックを漕いでいるのだった。

「うん、夜目は効くもの。このくらい月が出てれば、余裕よ」

そう、櫂を軽く回しながら、アリアが涼しい顔で言った。

「それに、もし「鬼火」がほんとうに光ってるんだったら、ライトがついてたら気づけないでしょ?」


もう、何百メートル進んだだろうか。

テペによれば、例の森は、この水路を3キロメートルほど進んだところにあるという。


このおんぼろカヤックで3キロ。気が遠くなる距離だ。

しかしそれが、隣の流域の村へのいちばんの近道だという。


もっと太いルートは、曲がりくねっていて片道7キロもあるのだとか。

その単位を聞くたび、この森の規模には驚かされるばかりであった。

それだけの旅路を、このおんぼろで足もろくに動かせないような舟で、こぎ続けなければならなかった。流れも風もまるでないことが、せめてもの救いである。


「それに、もし……だけど」

「もし?」

「この星に、恐竜なりなんなり……何か人を襲うようなものがいたとするじゃん?」

「うん」

「そういう時を考えると、あんまりライトつけたくなくなるのよね。それで死んだタイムトラベラー、結構いるし」

「地球では気にしたことなかった。気を付ける」


「石炭紀は安心だけど、またいつかどこかに行くときは…そういう時代のほうがふつう、ってこと」

「…わかった」

――そう聞きながら、果たして「次」は来ることはあるのだろうか、と私は思う。

一生に一度の時空旅行、という考えできたものだから、軽々しく「またいつか」と言われても、いまひとつ実感がわかないのだった。


「現代の動物で、ヘッドランプが危ないなんてあんまり聞かないけど」

「そう、そう! だから危ないのよ。ガチャガチャ音をたてたり、鈴を鳴らしたり、懐中電灯をつけたり……そういうのがみんな裏目に出るの」

アリアの声が少し低くなった。

「人間を怖い生き物だと刷り込まれてない生き物にとって、人間は『なんか面白いルアー』になっちゃうのよね」


「……ルアー」

「なんかわからないものがあるから、とりあえず食いついてみるかー、的な」

「……」

「とくに恐竜は、そういうやつら。初めて見る目立って変なものは、大抵おもちゃにされる。犬型ロボットを何時間も執拗に襲い続けたり、とか」

「食べられると思ってる?」

「うーん、違うみたい。満腹でもやるし。あの、目の周りがピカピカ光ったり、蹴るとライトの色が変わったりするじゃん? そうなると、食欲とか満腹とか関係なくおびき寄せられる。」

「……ブラックバス以下だね、何時間も追うなんて」

「「ドッグロボット・メソッド」っていって、調査に使うくらいよ。見慣れないものがある限り――いなくなるまで殺戮を楽しむの」

「……いなくなるまで」


「彼らを見てると、今の生き物が好奇心を持たないように見えるのって結構人間のせいかも、って思ったり。釣りで言うところの、すごくスレてる――、みたいな」


アリアは楽しげに語る。

タルボサウルスに襲われて全滅した調査隊の話。

救急車両の赤灯が食いちぎられるまで執拗に追ってくる獣脚類の話。

犠牲者に残った歯型と歯1本、あとはピンボケの襲撃時に撮られた写真しか残っていない謎の獣脚類。

家まで上がりこんで一家を惨殺した狂える角竜。

この世のものとは思われないほど凄惨な事件たちだった。


「どう? 私の怪談。今回追っかけてるのって妖怪みたいなものだし、雰囲気出るかな、って!」


「……妖怪は奥ゆかしいから」

私は苦笑交じりに返した。

「『鬼火』だってさ、湿地帯のガスに火がついたものというじゃん? だけど本当に炎上したり火傷したという話がそんなにない。となると、科学的な発火や民俗的な観点より、『見えてしまった』って感じで――見えたり聞こえたりしても、実害をくわえたりすることはないよ、たぶん」


そう言いかけたときだった。

闇の底から、ジャリ……ジャリ……と、何かが擦れ合うような音が聞こえてきた。

まるで、川原で小豆を研いでいるような、湿った音。


「……実害をくわえるなら、それは姿のない――」

私の言葉は、その音にかき消された。





湿気

赤道直下だから暑いのは当然と思いきや、実は気温は赤道直下でも大したことがない。そして石炭紀の赤道の海水温は過去5億年でも有数に低く、現在より寧ろ涼しいくらいだ。スコールのあとに冷えてしまったというのはあり得るだろう。


モーターボート

火を恐れつつも馬力と速さには文明から逃れられない。人はいちど得た快楽を簡単には手放せないのか、あるいは…そうしないと生きていけない事情があるのか。燃料費などの調達も重大な問題であり、これが運用されるということは収入源を野生から持ち出す必要があるということである。つまり、その存在自体が熱帯雨林からの収奪を意味するのかもしれない。


大気圧

窒素の量は、地質時代を通じてあまり変わらないようだ。

窒素を比較的短期間のあいだに大気から大量に除去するメカニズムは知られていないからだ。(石炭紀にハーバーボッシュ法が大ブームだったら別かもだが。)石炭紀にかぎらず酸素濃度上昇は、酸素濃度が上昇するのではなく、酸素分圧が上がることより総大気圧が上がるほうが本質である。

光合成の反応式では二酸化炭素と水から酸素が副産物として生じる。

6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2

これだとガス分子の総量はかわらないので、大気圧は増えない。

C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O

分解が生じてもやはりモル数はかわらない。

つまり分解されずに埋没しても、分解されても、モル数自体は同じ。

ただ、分解されずに埋没した場合、CO2をO2に交換する反応と見て取れる。ここまでは閉鎖されたボックスでの話だ。

ここで、地球では大気の総量、特にCO2の総量は一定ではない。

CO2は火山などによって地中から供給される、大気の中でも数少ない「勝手に増えるガス」である。しかしケイ酸塩風化、水中への溶解および炭酸塩埋没など急速な反応で取り除かれやすい。つまり、火山ガスでCO2が増えてもすぐ解消され、総圧は上がらないようになっている。

しかし、光合成産物が埋没することは、そのぶんのモル数が有機物の埋没によってO2に置換されることを意味する。すると話は別だ。有機物の燃焼や鉄の酸化、硫黄の酸化などで大気中からO2を除去しきれなくなり次第溜まり始めて、大気圧を上昇させ始める。

つまり酸素濃度が上昇するということを言ったとき、それは大気圧が上昇しているという意味を含意している。

酸素濃度30%という数字を出すには、大気圧は1.13気圧。

35%の上限値を出すには、大気圧は1.22気圧。

すごいね!


水の沸点

大気圧が1.1~1.2気圧くらいまで上昇する。

飛行機の機内や富士山の頂上では気圧が低いので、沸点が少し低くなる。機内用や登山用のカップ麺が少しぬるい温度でもできるように作られているのはこのためだ。

さて、大気圧がやや高くなる石炭紀大気では、水の沸点は少し上昇する。

たとえば水が103~105度で沸騰することに!


洗濯物の乾き①

飽和水蒸気圧は一定なので、実はこれは大気圧にそこまで影響されない。だが、拡散と境界層の影響で若干伸びる。1割くらい干す時間がのびるのは、地味につらい。


洗濯物の乾き②

そもそも、熱帯収束帯に湿地林がべったりと張り付いて、そこで活発な蒸散が行われているのが石炭紀の問題である。蒸散された水蒸気は降雨のもとになって、湿地林を持続させるポジティブフィードバックが起きる。

現在の地球でもよく似た熱帯雨林の維持が行われているが、このような現象が生じているのは石炭紀~ペルム紀前期および、後期白亜紀~新生代である。


暑くてカラカラ、寒くてジメジメ、寒くてカラカラ

石炭紀は熱帯の時代などではなく、熱帯に降雨が集中している時代である。熱帯を少し外れれば、そこは砂漠と氷河が支配する世界であり、そのはざまに湿潤な温帯気候が分布していた。


除湿器

湿度の高い環境では、乗組員の不快感も増す。石炭紀の気候は熱帯ですら比較的涼しいので、エアコンでもとくに暖房と除湿が重要になる。


バイオマス発電

有機物を可燃ガスに変換して発電する方法。前回用語集参照。


狼煙

かつては煙で自らの存在位置や信号を示した人類だが、通信インフラの維持すら怪しいこの植民惑星では復活することになってしまった。ただ、スポットランプの色を変えることでより効果的な意思疎通ができるようである。


村ひとつでは完結しない巨大な物々交換ネットワーク

日本においては、縄文人がちょうどこのような広域ネットワークを築いていた。アマゾン先住民などもそれなりに交流しながら生活に必要なものを調達している。人は孤立しては生きていけない。


カヤック

上の大部分が閉じた細長い小舟。


バフェテス 

後期デボン紀から三畳紀にかけては、メートル級の、オオサンショウウオより大きな「両生類」が入れ代わり立ち代わり現れては、消えていった。こうした巨大な「両生類」は石炭紀の陸水生態系における最上位捕食者の一つであり、同時代の節足動物と比べると、アースロプレウラおよびヒベルトプテルスという例外をのぞけば、より大型だった。この生物は乾燥化が進んだカシモビアン以降からは産出しない。このグループは典型的には、前方に突出した鍵穴状の部分を持つ大型の眼窩が特徴的で、頭の概形はややカイマンに似ている。側線の痕跡を残すことや鰓弓の痕跡からは、バフェテス類が水生傾向の強い、魚のような特徴を多く残していたことが推測される。バフェテス類の位置づけには議論があるものの、後期石炭紀の四足動物の中でもコロステウス類と並んで原始的なグループと考えられる。原始的な四足動物の例にたがわず、細かな、単純化された鱗を持っていた。

復元メモ

こうした鱗は真皮内に深く埋没していたとの考えもあるが、筆者は初期四足動物の鱗はある程度外側からある程度輪郭の見えるものであったと考えており、その上に同様の輪郭を持った角層が覆っていた(そのため、外側から見ても鱗の輪郭が見えた)のではないかと考えている。

これが「魚の鱗のような」と描いた理由である。


ドッグロボット・メソッド

犬型ロボットをルアーとして使う架空の方法。


コラム

石炭紀の巨大「両生類」

現在において、両生類というとカエルやイモリのような、手のひらに乗るような生き物である。

しかしながら、後期デボン紀から三畳紀にかけては、メートル級の、オオサンショウウオより大きな「両生類」が入れ代わり立ち代わり現れては、消えていった。

こうした巨大な「両生類」は石炭紀の陸水生態系における最上位捕食者の一つであり、同時代の節足動物と比べると、アースロプレウラおよびヒベルトプテルスという例外をのぞけば、より大型だった。


今回紹介したバフェテス類Baphetidはリンボク類を中心とした湿地林を代表する生き物といえるだろう。

石炭紀の熱帯雨林崩壊、というイベントがどれほどのものであったのかはさておき、この生物は乾燥化が進んだカシモビアン以降からは産出しない。このグループは典型的には、前方に突出した鍵穴状の部分を持つ大型の眼窩が特徴的で、頭の概形はややカイマンに似ている。側線の痕跡を残すことや鰓弓の痕跡からは、バフェテス類が水生傾向の強い、魚のような特徴を多く残していたことが推測される。バフェテス類の位置づけには議論があるものの、後期石炭紀の四足動物の中でもコロステウス類と並んで原始的なグループと考えられる。原始的な四足動物の例にたがわず、細かな、単純化された鱗を持っていた。


ちなみにこうした鱗は真皮内に深く埋没していたとの考えもあるが、筆者は初期四足動物の鱗はある程度外側からある程度輪郭の見えるものであったと考えており、その上に同様の輪郭を持った角層が覆っていた(そのため、外側から見ても鱗の輪郭が見えた)のではないかと考えている。

これが「魚の鱗のような」と描いた理由なのだが、このことに関しては、いずれ書こうと思っている。


ところで、そもそも「両生類」とは何だろう?

私たちが知る、現生の両生類は平滑両生類に属している。このグループはおそらく中生代に出現したもので、私たちの知る両生類のレパートリーはその中に限られているし、カエルやサンショウウオから爬虫類や哺乳類が生じてきたわけではない。

しかし、古生物に関していえば、慣習的に両生類と呼んだ際に、爬虫類や哺乳類などの有羊膜類ではない四足動物(無羊膜類)を指すことになりがちである。

それらは現在生きている両生類とは直接の類縁関係がないことが多く、ただ「原始的」な四足動物であるということになる。

そして、現在生きている平滑両生類が「原始的」な特徴を多く残しているというわけでもない。

古生物におけるいわゆる「両生類」がどんな生物であったのか、現生の両生類はそこまで参考になるわけでもないし、「巨大な両生類」という表現がどの程度的を射ているのかに関してはかなり疑問がある。それは、私たちの知る両生類とは似ても似つかないものだったかもしれない。



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