出航
「ちょっとリリィ、聞いてなかったんだけど!ここにきて一週間も足止め、ポイントも立ち入り禁止。どういうこと!」
リリィが来た途端、この剣幕である。
きっと、私たちが泥礫(?)を投げつけられたと聞いて、心配になって飛び出してきたのだろうというのに。
しかし、私もだいぶ、煮詰まっていたとここで白状せねばならない。
「さすがに、こちらからも説明がほしいかな。いや…説明というより、さすがに…それはないでしょ。多分私にとって、これが最初で最後の時空旅行だと思う。はるばる一か月近くもかけてここまで来て・・・これはないでしょ。」
言いたいことが山ほどあったのだが、いざ言おうとするとほとんど言葉にならなかった。
いや、ひとつだけ。
「ここから先、生け簀くらいしかみるものないんだけど」
それでは、水族館の方がマシかもしれない。
「誘った方も面目が立たないわ。ね、ケイ?」
ズン、と音がした。
アリアが仁王立ちになって、見下ろす様に睨みつけていたので、思わず一歩引いてしまう。
「で、どうする気?」
いつになく低い声だった。
しかし、リリィは全くとして動じる様子はない。
「だから、ここまでかかったってわけ。こっちにだって、策はあるんだから」
きっぱりと言い放ったものだから、見ているこちらの方がヒヤヒヤする。
「じゃ、いまここで言いなさいよ!」
やはり。
「話はつけてあったの。ここで受け入れられたら、他の村にも出入りしていいって。」
「つまり…」
そう私がいいかけたとたん、アリアの声にかき消された。
「そう?じゃ、明日の朝、出航ね」
「明日?あなたならいますぐ、って言いだすと思ったのに」
「だって、あれ!」
指さした先は、今日も水蒸気を上げ続ける発電艀である。
「あれ?」
「発電艀の灯台!夜になったら、絶対何か集まるはずよ!前回のポイントにも近いし」
――アリアがそういったとたん、今度は村の人々の表情が一気に硬くなった。
「もういいから、行こ」
丸木舟を船に引きずり上げ、抵抗するアリアを船に押し込んで、旅がはじまる。
最後に、リリィがやたら大きな荷物…というか、簀巻きにされた何かを受け取って、小脇に抱えていくつも積み込んでいた。きっと返礼品か何かなのだろう、と思いつつ、触れないでおく。
いろいろあったが、最後は村の皆で手を振っての別れとなった。
私にとっては、悪い旅ではなかったと思う。
まぁ。。。不満な人もひとり、いるようだけれど。
「せっかくここまで来たのに!」
船に入っていきなり、これである。
いい加減分かれよ、と思ったのだが、仕方ない。
「ならぬものはならぬ、っていうでしょ」
「何それ、A=Aみたいなもの?」
「じゃなくてさ、抜け道を見つけてもダメなものは、ダメなんだよ、きっと。」
「そう?」
「たぶんね。」
――粘れば粘るほど状況が悪くなるよ、と言いたかったのだが、吞み込んでおいた。
すくなくとも、旅は続きそうである。




