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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
異なる惑星ー石炭紀の地球を、宇宙から眺めると―
24/199

<宇宙から見る、石炭紀の地球> 吸い寄せられる大陸たち/「石炭紀の地図とパンゲアについて」

古テチス海を越えると、目下に濃緑色のベルトが、赤道直下に広がっているのが見えた。

その流れはY字状に分岐し、一部はシベリア大陸側に向かって北上し、ふっと消えている。

その中には、宇宙から見えるほどの巨大な湖すらある。


――石炭林である。


――そんな様子を見ていると、アリアから通信が入る。


「……やっぱり、何かあったんでしょ」


先ほどのことだ。

私はあの時確かに、一滴の涙をこぼした。

しかし――その理由については、何も伝えていなかった。

そして、正直言うところ、その理由について何か思い当たることはなかった。


するとアリアはいう。


「叔父さんから聞いたの。あんたが職場で、ひどい目に遭ってたって」

「…話してなかったんだけど」

そう言って、私はまた、地表に広がる大湿地帯へと目を向けた。

北米を往復したほどの、とてつもない長さの湿地帯ベルト。

おそらく地球史上最大の規模の、湿地帯だ。

そこに何が生えているのかは、さすがに遠すぎて何も見えない。

ただ緑の色調から、山裾などにその周囲を取り巻くように生える植生とは異なっていることがよく分かった。


「叔父さんも何にも聞いてないって。でも、職場から帰った時、様子がおかしいって。」

「あー、あれね。」

そう言いながら、そんな恥ずかしい話まで聞かれていたのか、と思うと、ぞわりと鳥肌が立つ。隠していたつもりだったのに。

そう思いつつつつ、観察を続ける。

山地の斜面にも緑がみられるが、幾分密度が薄いように感じられる。

何より驚きなのが、南北に目を向けてみると、緑のベルトの外側にはかなり乾燥傾向の強い地域が広がっていることだ。

緑はくすみ、まばらで、そこには赤い土がむき出しになっている。


アリアからの声がまた届く。

「叔父様から聞いたの。『俺からは聞き出せなさそうだから、お前から聞いてやってくれ』って。……Of course, 言い切る前に通信繋いでたけどね」

――あのときか。職場の休憩室でいきなり「私の獲物に手を出すな」って叫ばれたやつ。


「ま、まあたしかに…職場でサバイバル楽しんでたよ」

そしてまた、窓を眺める。

 真っ赤な砂漠が、一面に広がる。


アリアは声を荒げる。

「楽しんでた?? おかしいでしょ、なんでそんな淡々と言えるの」


「だって――トイレに行こうとすると、いろいろ悪口言われるから」

そもそも悪口とかいう以前に、敵意を向けられている、という感触があった。

もし敵意を向けられたら、反撃せずそこから立ち去りなさい

――これは義務教育で口酸っぱく、教えられたことだ。


「悪口ってどんなの」

「――覚えてない、覚える価値もないような低俗なものだったから」


しかし、火星人は戦闘民族らしく、そんな規範を学んでいやしない。

「誰?、やってたのは。帰ったらそいつ、とっちめるから」


私は頭をひねったが、それっぽい顔が朧気に浮かぶだけで、名前がぱっと出なかった。

そもそも浮かぶ顔が多すぎて、それがいったい誰なのかわからなかったし、もし間違えて伝えたときにどんなことが起きうるかを考えると、恐ろしくていうことはできなかった。なにせ今話している火星人には、財力と実行力が両方そろっているのだ。


「…覚えてない。だって私みたいな異物がいたら、排斥されるのが自然の摂理、何百年と繰り返されてきた、人間の避けられない性質だよ。」


従順であれ、人に敵意を向けてはならない、敵意を向けられたら、黙って耐えるのが美徳だ。

そして――そもそも、私にとって、彼らは「そもそもいない」のだから、そこに苛立っても仕方なく、ただただ避ければよい、ということなのである。


アリアはいった。

「あ、の、ね」


この三文字の口調ではっきり分かった――そんな美徳も私の価値観も、やっぱり火星人には通用しない。育ちも、星も、経済状況も、なにもかも、まるっきり違うから。

でも、説明は通じると信じたかった。だって、そこにいるから。


「彼ら、彼女らは本能に従ったまでだよ、それをいじめた、という理由で責めたら――あの人たちと同列の、対人攻撃だよ。むしろ、「まともであること」にたいして攻撃することになるから、もっとたちが悪い。」


しかしアリアはさらに昂って、声を裏返した。通話画面を見ると、鬼の形相である。

「あんたが“攻撃したくない”って気持ちはわかるけど、だからって、“なかったこと”にしていいわけじゃない!」


「それに――本当に興味がないんだ。どうしても背景に思えちゃって。人の名前は支援AI〈TWINS〉に任せてる。覚えようとしたことも、あったけど―無理だった。」

しまった――乗せられた。言ってしまった。


「興味がないって……それ、ほんとは“興味を持っても意味がない”って自分に言い聞かせてきたんじゃないの?」

――そうじゃない。関係の如何にかかわらず、本当に覚えられないんだ。

なぜなら――同じだから。本質的に同じものに違いを見出すことは、難しい。同じOSで動くものの中に個性はなく、そこに個人は「いない」のだ。


「対話が困難で、誰と話しても紋切り型の、汎用人工知能「アトラス」に教わったままの、平均化され、無難で、すべてのことに一対一の答えがあると信じてる、ほとんど規格品みたいな思考で動く人々――それは何人いても、いないのと同じだよ。」


――そう、いないんだ。私はずっと、人の名前を覚えるのに苦戦してきた。そしてある日、気づいた。「人はこうするものだ」「皆がそうしている」「常識的に考えて」。

それらに全く従ったままで動く人々は、何も生み出すことはなく、何も変化をもたらさない。無意識のうちに私は、彼らを意味を持ったものとして解釈できなくなってしまっていたと。大学に入るよりも、前のことだ。

はじめそれは病的なものだろうと思っていたけれど、どうもそうではないと思うようになった。どうも、私にとって彼らはほんとうに、「存在しない」のだ。

覚えられないのは、そもそも「存在しない」からだ。

そこまで言うと、さらに断裂を深めそうな気がして、私は口をつぐんだ。


モニタに映るアリアは目を見開き、口を押えている。指先が引くひく震えていた。

「…!!!」

ゴンドワナ大陸の南方は南緯40度付近まで氷河が進出し、さらには山脈に沿って、さらに北方、一部は南緯30度ほどにまで氷河が達していた。


「超時空ゲートの完成を千年待つために作られた、平均化知性。証拠に千年間、世界は殆ど何一つ、進歩してこなかったんだよ。だから、覚えるには値しない。」


そう、メモリアルホールの展示を見て気づいた。地球社会は、完成に千年かかる超時空ゲートの完成を待つため、待機戦略を選んだ。そして、待機戦略において、社会は変わってはいけなかったし、動いてはいけなかった。その社会を束ねる、遍在し誰でもアクセス可能な神として創造された人工超知能「アトラス」にとって、社会を停滞させるのはたやすかった。誰がこんなシステムを考え付いたのかわからないが、自らに意味を持たないものは、もはや現前せず、存在しない。つまり社会を停滞させるのではなく、人の存在を葬送したのだ。


するとアリアは、自信なさげに言う。

「じゃあ、私のことも……“覚えるに値しない”って思ってる?」


咄嗟に口をついて出た。

「まさか。だって他にいないじゃん。だからアリアは「そこにいる」よ。何人もいたら、世界が持たない」

――恐竜を研究していて動画配信者でやたら抱き着いてくる、ばかでかい火星女が何人もいたら、世界はあっという間に壊れてしまう。千年持たないのは間違いない。

身体とか容姿とかじゃない。

人を「存在」させるものはもっと精神的、感情的な個性であって――


ハッと気づいて、私は目をそらす。

目下には、ユーラメリカーゴンドワナ境界に広がる、巨大な泥炭林が広がる。

そこは大陸衝突のすぐそばにもかかわらず、落ちくぼんでいるのがなんとも、不思議だった。大陸同士の衝突面はふつう、アルプス・ヒマラヤ造山運動のように、巨大な山脈を形成するのが常だ。そして巨大な山脈はその重みで周囲の地殻をたわませ、そこに水が溜まる。たとえば、アンデス山脈の重みによって近くがたわみ、巨大な前縁盆地ができ、水が溜まって、排水されたのがアマゾン川だ。

しかし――目の前にあるパンゲアは、どうも赤道直下に大規模な山岳氷河があるようには見えないし、機体に搭載された標高計や地温計でも、やはり極度の高山はなさそうだ。

静かな大陸衝突、というものが果たして、ありうるだろうか――??



アリアはいたずらな笑みを浮かべて言う。

「げんに火星は財政破綻、壊れちゃったわ。じゃあ、ケイは?」


「うぅ…」

 

「……ふふっ、何それ。今の、ログに残るんだよ? そっちのブラックボックスに。――ずっと」

「…‼」

「ブラックボックスって、どうにかして破壊できないかな」

「――大気圏を単独で再突入できるくらいの強度は、あるわ」


「アリア、ひとついい?Too Heavy」

「Gravity is lighter in Mars.」


一面に広がるパンゲアは、緑の湿地林が発達する熱帯、赤い砂漠性の亜熱帯から温帯、そして、南の巨大な氷河からなっている。過去五億年で有数の氷河期、真っただ中だ。


ユーラメリカとゴンドワナの衝突によって作られたパンゲア中央造山帯には、エクロジャイトの痕跡が乏しい。エクロジャイトがよく出るのは、むしろカレドニア山脈やヒマラヤ山脈といった、より前か、あとの衝突による巨大山脈だ。

度重なる地殻変動によって、それまであった大量のエクロジャイトが散逸してしまった、つまり想定されるパンゲアを横断するほどの巨大山脈が、すっかり消え失せてしまったとする説もある。しかし、ほかにも可能性は示唆されてきた。

いま私は、その答えを見ている。

パンゲア中央造山帯はたしかにあるが、その規模は赤道直下に大規模な氷河を作るような、ヒマラヤほどの規模があるわけではない。かわりに、その境界域には、大きな溝が走っている。一説には、超大陸ができるとき、大規模なマントルの下降がおきるという。

そうした下降が大陸を引き込み、吸い込まれるように溝を作っていたら、どうだろうか――

これは私のあくまで観察による推論にすぎないが、少なくとも石炭を作った泥炭地の胞子組成が、徐々に水没耐性の強いものに遷移し、最後には水没してしまう様子は多く報告されている。大地自体が沈み、排水溝に吸い込まれる落ち葉のように大陸が寄せられる――

そんな様子が頭に浮かんで、ならなかった。

もっと見て、観察しなければ。

そのとき、私はかの涙の理由に気づいた

――アカデミアではなく、安寧のために職を選んだ己の選択に、嫌気がさしたのだ。

だからあの瞬間、アリアが真剣に論文を書いているのを見た瞬間だったのだ。

いま、私には選択の余地がある。

ひとつは、アリアとの旅を楽しむこと。

もうひとつは、徹底的に調査し、観測し、標本を採り、論文を書くこと。

悔いなき選択をすることに、私は決意した。


着陸まであと、一日。

私は最後に、この惑星の大気について、いま一度観察することにした。

また重力計、合成開口レーダーおよびLiDARの設定を確認した。

それは、宇宙からでないと、しかも最後の一周、十分近づいてからでないと、正確な測定ができないからだ。そして、測定結果を概ね頭に叩き込んでおかないと、いいインスピレーションもまた、沸いてこないのである。


―描写を支える科学的背景―  

「石炭紀の地図とパンゲアについて」


パンゲア(Pangaea)を漢字に訳すと、「汎地」となるだろう。

“Pan-”は「広く、全体にわたる」、たとえばPan-Americanism(汎アメリカ主義)のように。

そして“Gea”は、ガイア――ギリシア神話における大地の女神。地理を意味するGeographyとも、語源を同じくする。


その大地を取り囲む海――それが、パンサラッサ(Panthalassa)である。

これもまた、「汎海」と訳せよう。

“Thalassa”は、ギリシア神話に登場する海の女神の名でもある。

あまり身近な単語ではないが、生物の学名などには、しばしば顔を出す語である。


では、作者の観点から、解説を始めることとする。


石炭紀後期の世界地図は、大まかには南極に左手の手首を置いて、親指と人差し指で軽く弧を描いて、ちょっと手の甲側から見たような形をしている。

挿絵(By みてみん)

親指の先がオーストラリア、手首が南極、手の甲が南米+アフリカ、指と手の甲の間の関節(MP関節)をへだててヨーロッパ+アメリカ(ユーラメリカ)、指のちょうど真ん中の関節(PIP関節)を隔てて中節骨がシベリア、指先の関節(DIP関節)を隔てて末節骨が、南中国である。

詳細な対応関係は、図を参照してほしい。

さて、左手を見てみよう。指の付け根には、関節にあたる“こぶ“が並んでいると思う。

この“こぶ“こそ、石炭紀の氷河期的気候を語るうえでの主役といえる。


石炭紀前期、北米+ヨーロッパ(ユーラメリカ大陸という)とゴンドワナ大陸(南米+アフリカ+南極+インド+オーストラリア)が衝突し、その間にあったレイク海(Rheic Ocean)が消滅した。そして、そこに大規模な造山運動が始まる。結果として、左手を見たときに丁度「こぶ」ができているあたりに相当する、巨大な山脈が成立した。

これを、バリスカン造山運動という。


さて、大陸の衝突を考えたとき、“盛り上がった”山脈が、その重みで周囲の近くを沈みこませることがイメージできるかと思う。こうして造山帯の手前にくぼ地ができる。この窪地—前縁盆地という―こそが、石炭紀の大湿地帯となった。


さて。

この構造は、少なくとも2つの理由で地球を氷河期に陥れることとなった、とされる。

まず、造山運動によって赤道付近に隆起した山脈は多量の降雨を降らせ、山脈の形成に伴い露出した岩盤の風化が促進されることとなった。植物の上陸以降、岩盤に根を下ろす植物の根の影響で風化速度がそれまでに比べてさらに促進されつつあった。そして、風化の過程では二酸化炭素が消費される。岩石の風化による二酸化炭素消費は現在も最大の二酸化炭素除去要因であり、大規模な山脈形成は二酸化炭素の大気中からの除去につながる。

これは一般的な氷河期の成因であり、更新世の氷河期――(今現在も氷河期である!)もまた、ヒマラヤ山脈やチベット高原、アンデス山脈の風化による影響が最も大きい。

さて、バリスカン造山運動によってできたはずの巨大な山脈はいまでは見る影もないほど風化していて、ベルギーのアルデンヌ高地やドイツのシュヴァルツヴァルト、スペインのイベリコ山系などに名残を残している。(なお、アパラチアーバリスカン造山運動ともいうが、アパラチア山脈の一部はカレドニア造山運動、一部はバリスカン造山運動によって作られたため注意が必要である)。


もう一つ、寒冷化を推し進めた要因がある。

これは石炭紀~ペルム紀前期に特徴的なもので、前縁盆地が沈降し、そこに泥炭(のちに石炭となる)が堆積したことによる炭素隔離である(Nelsen et al., 2016)。

そう――バリスカン造山運動がヨーロッパ+北米と南米+アフリカの衝突によって起きたからこそ、産業革命の際にあたかも“都合よく”欧米諸国の地下に大量の石炭が埋蔵されていたというわけなのだ。

寒冷化には、ほかの要因も挙げられる。たとえばレイク海の閉鎖によって海流が物理的に寸断されたこと(同様の寒冷化はパナマ海峡の閉鎖によっても起きた)も、石炭紀後期の氷河期を助長した(Veevers & Powell, 1987)。


後期古生代氷河期がいつから始まったのか(7000万年氷河期か、はたまた一億年氷河期か?)またバリスカン造山運動以外にも、ゴンドワナ大陸がペルム紀前期に南極点を通過することによるなど、さまざまな要因が挙げられている。しかしながら、本格化するのはやはりバリスカン造山運動が盛んになる石炭紀後期からペルム紀前期である。


後期古生代氷河期は、顕生代(カンブリア紀からこちらのこと)で最大の氷河期であるにもかかわらず、日本においては知名度がきわめて低い。今でもその成因は分かっていないことだらけだ。後期古生代氷河期の全貌と詳細は語るだけで本が一冊必要になるレベルである。

後期古生代氷河期の凄まじさについて知りたい方はMcGhee (2018)、もう少し醒めた目線で知りたい方はMontañez & Poulsen (2013)などを参照していただくこととして、この解説はいったん、一区切りとしたい。


ところで、ここまでは“一般的な”石炭紀の地図について紹介した。

この地図の歴史と、それに対抗するもう一つの説について触れておこう。

さきほど“左手”であらわした石炭紀の地図は、大陸移動説を提唱したウェゲナーによる大陸配置をほぼ踏襲している。ウェゲナーの描いた石炭紀の地図は石炭の産出地、リュウビンタイ類(現在では専ら熱帯性のシダ植物)のPsaroniusがヨーロッパや北米から産出すること、乾燥気候を示す岩塩などが中緯度高圧帯に沿って分布すること、ゴンドワナの迷子石が南極を中心として分布すること、などから導き出されている(ウェゲナー「大陸と海洋の起源」)。(パンゲアA仮説)

この配置は長らく踏襲されてきたものの、古磁気データ上では石炭紀からペルム紀前期の極位置が、ローラシア側とゴンドワナ側で一致しないという問題が指摘され、石炭紀からペルム紀前期にかけてはゴンドワナが約30度東にずれていたのではないか(左手の例えだと、小指が宙ぶらりんになって、手背の外縁が薬指の付け根についているイメージをしてほしい)、そしてペルム紀中期にゴンドワナが“スライド”して古典的なパンゲアが完成されたのではないか、という“パンゲアB仮説”が提唱されることとなった(Irving, 1977)。パンゲアB仮説では赤道直下の湿地帯がより広大になり、気候説明にも有利である、とする意見もある(Kent & Muttoni, 2020)。

しかし2025年時点では状況証拠としてはこれを支持する情報はあるものの、大規模な横ずれ運動を説明する理論が不十分であることなどから古典的なパンゲアA仮説のほうがよく支持されている。そのため、本稿ではパンゲアA仮説を軸に解説を行った。

ただ――今後の研究の風向きによっては、石炭紀の地図が大きく書き換えられる危険性が無きにしも非ずである、ということに関しては、くれぐれも注意願いたい。


*備考:ちなみにバリスカン造山運動とよく並び称されるカレドニア造山帯は非常にザックリといえば、シルル紀に北米+グリーンランド(ローレンシア大陸)とヨーロッパ(バルチカ大陸)の衝突により生じたものであり、バリスカン造山運動とよく似た結果を招いた。NHKスペシャル「地球大進化」に詳しいので、ぜひ見よう。

**本作では中央パンゲア造山帯をごく小さく描いているが、こちらの解説では無難な、巨大なパンゲア中央造山帯による前縁盆地の形成、として描いた。但し、宇宙から山々を見たとき、もっとも目立つのは山岳氷河である。石炭紀の熱帯における山岳氷河が成立したのか否かに関しては、これまた議論が難しい。


Nelsen, M. P., DiMichele, W. A., Peters, S. E., & Boyce, C. K. (2016). Delayed fungal evolution did not cause the Paleozoic peak in coal production. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(9), 2442-2447.

Veevers, J. T., & Powell, C. M. (1987). Late Paleozoic glacial episodes in Gondwanaland reflected in transgressive-regressive depositional sequences in Euramerica. Geological Society of America Bulletin, 98(4), 475-487.

McGhee Jr, G. (2018). Carboniferous giants and mass extinction: the late Paleozoic ice age world. Columbia University Press.

Montañez, I. P., & Poulsen, C. J. (2013). The Late Paleozoic ice age: an evolving paradigm. Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 41(1), 629-656.

Irving, E., 1977. Drift of the major continental blocks since the Devonian. Nature 270,

304–309.

Kent, D. V., & Muttoni, G. (2020). Pangea B and the Late Paleozoic ice age. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 553, 109753.


おまけ。

作者あとがき。

実際問題、パンゲア中央造山帯の規模問題は大きいのです…あれだけの衝突が起きたにもかかわらず巨大山脈の痕跡に乏しい。

あるにはあるのですが…ユーラメリカとゴンドワナが激突したにしてはしょぼい、という話です。

斜めにぶつかった、中生代にものすごく浸食された、などの説はあるのですが…。

途中でふれている地盤沈下とそこでの石炭形成は重大なテーマです。

ユーラメリカにおける地盤沈下は石炭紀後期の前半に主におき、石炭紀後期末からペルム紀前期に入ると逆に隆起しはじめて石炭形成が激減します。

ペルム紀前期は北中国、南中国、シベリア、南アフリカなどが石炭産出の中心となります。最近では内モンゴルのペルム紀前期化石植物相が盛んに研究されており、多くの新発見がもたらされています。



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