戦果
金切り音が耳の底に染み付いて、耳鳴りなのか騒音なのか、もうよくわからなかった。アリアはそのウェーブのかかった髪を抑えながら、時々何か唇を動かしたけれど――騒音と、座席に突き上げる振動のせいで、何を言っているのかはよくわからなかった。
「なに!?」と聞いても、また唇を動かした後に、
「いいの!いいから!」
――そのくらいしか聞き取れない。
聞こえないことを前提に、何か思い思いのことを言ってる、ということだったりして。ただ、何かすごく嬉しそうだということは、十分伝わった。
線路の先に、駅が見えてくる。
おどろいたことに、石造りだ。白っぽい石灰岩を組んで作られていて、小さな石蔵のようだ。駅のホームもまた、小さいながらも、それなりによく整備されている。
そんなホームに、大きく手を振る人影があった。
ひまわりのような鮮やかな黄色のスカーフが、海風にはためき、黒髪がオリーブ色の肌に揺れている。
「おかえりなさい!戦果は、どう?」
リリィは満面に笑みを浮かべながら、私とアリアの顔を覗き込む。
背後に広がる海よりも、きらきらした瞳で。
「けっこう、大収穫」
私は大きなコンテナを引っ張り出しながら言うと、アリアは「ケイったら、磯ごと持ち帰りそうな勢いだもの!しまいには駅の足ふきマットだって持ち帰ろうとしだして!」
するとリリィはきょとんとしながら、
「足ふきマット・・・?それって、あの・・・?」
「い、いや、何の植物が使われてるのかなーって気になっただけで、えーっと…」
「ちょっと掛け合ってみるわ。どこの製品だったかしら…あれよね?うろこぎの穂先を開いて干したやつ。」
「えっ、本当にいいの?」
「そりゃもう!どんどん無茶言っちゃって!」
トロッコに野積みされたコンテナは、触るともう、人肌よりは暖かかった。
活かしての輸送は――きびしそうだ。
現場で撮影して、液浸標本にして運ぶという選択は、正解だった。




