安らぎ
ガシャン、という衝撃とともに、轟轟と音が轟いて、目が覚めた。
直前まで聞いていた叔父の声と、機体の金属が軋む音が、一瞬、混ざり合った。
いつしか機内は温かく――いや。
アリアの太ももが発する、たしかな温もりだった。
気づかないうちに、膝に頭を預けていて――
肩には、かけた覚えのない毛布が、ふわりとかかっていた。
もう、何時間寝ていただろう。
あたりはもう、真っ暗で――緑色の灯がホタルみたいに、滑走路に灯されていた。
「皆さま、本機はただいまパラー第一空港に着陸いたしました。このあと、燃料補給ならびにクルー交代のため、約1時間ほど地上でお待ちいただきます。イリノイ海上基地までご搭乗のお客様は、このまま同じお席でおくつろぎください。シートベルトは外していただいて結構ですが、安全のため、機外には出られません。ご協力、ありがとうございます。」
そんなアナウンスは、リリィの声だった。
「よく寝た?」
「――うん。ひ…膝が温かくて」
「ん?あぁ、もたれかかってきてたし、寒いかなって」
彼女はそう言って、かかっていた毛布をぱたぱたと折りたたんだ。
「…ありがとう」
私はすぐに顔を逸らした。
――なに、意識しちゃってるんだ。
膝枕なるものが特別な意味をもつ…なんて、全然グローバルスタンダードでもないのに。
そして、ごと、ごとと音を立てて、5人ほどの客が乗り込んできた。
暗くて、男か女か、表情すらよくわからなかった。
そして、リリィが機体の前のほうから戻ってきた。
「お待たせ!パラーからは計器航法研修があるから、しばらく席を空けるわ」
「さっきのアナウンスも?」
「そう!いろんなことができたほうがいいものね。それに噛まないようにするにはやっぱり慣れないと、だし…ふぅ、緊張したわ」
「聞いてるの私たち2人だけだし、そんな緊張しなくても」
「ま、それもそうなんだけど、すぐ隣で採点されてるのよ」
「あー…なるほど」
再び、エンジンが回り始める。
上空から見たパラーの夜景は、美しかった。
星空のもと、暖色の明かりと行き交う船の灯が、海面に星座を描いていた。
水面に揺れて、そんな地上の星々は、瞬いていた。
そんな様子を、ひとしきりカメラに収めた。
ほかの乗客は、だれひとりとして、その美しさを気にはしていない。
早くも首をうなだれて、眠りにつこうとするものばかりであった。




