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―ESSAY 後期石炭紀における南米の地理と気候についてー

ノートに書きつけられていたエッセイ原稿の、続き。


南米というと、どうしても蒸し暑い、現在のアマゾンを想像してしまう人が多いのではないだろうか。

しかし。現代においてすら、南部に行けばむしろ冷涼ですらあり、乾燥地も多い。

南米のおおよそ4割が温帯、亜寒帯、高山気候に占められるのだ。

そして、熱帯気候とされる地域も半分弱が、サバナ気候である。

熱帯雨林気候と熱帯モンスーン気候を合わせてすら、三分の一にすぎない。

――このように、熱帯というのはどうにも、イメージが強すぎる。

現在の気候を過去に外挿することなど、もってのほかなのだが――

どうしても、石炭紀の南米、というと、どこか温かくて蒸し暑い、そんな固定観念が付きまといがちだろう。石炭紀、という時代ですら、19世紀以来、蒸し暑い湿地の惑星というありもしないイメージを持たれ続けているのだから、さらにたちが悪い。

しかし。

石炭紀の南米は、氷河と砂漠が支配し、緑はといえば、その間にちょろりとあるのみである。

間氷期においては緑が広がることもあった――が、氷期になれば、それも無慈悲に押し流された。

後期石炭紀における南米大陸は、現在に比較的近い緯度と向きで、パンゲアの西端にへばりついている。ゴンドワナが北上した影響でデボン紀から比べればだいぶ低緯度に移動したものの、地球全体の寒冷化の影響でむしろ、寒冷化している。

現在のボリビア南部やアルゼンチン北部、ブラジルのパラナ盆地より南。

そこは、氷河に支配されている。

その合間や前縁には点々と、氷河湖があり、そのまわりにはコケ植物や一部の小葉植物、トクサ類などがうっすらと生育する、くすんだ緑が垣間見える。

このことからわかるように、石炭紀における南米の氷河は、南極のような大陸氷河と比較しうるほど、寒冷なわけではない。当時地続きだった南アフリカやブラジル高原といった高地に発達した氷河が、大地を洗い出しながら伸びていくのである。

この氷河は、南緯40度ほどまで及んでおり、とくにブラジルにおいて、最北端は南緯30度にまで達している。

そして、おおよそ南緯30度ほど、現在のパルナイバ盆地などには、うっすらとした温暖湿潤、ないし、季節性のある温帯気候が線状に分布している。

ただし、この“線“は極めて細く、薄く、あちこちで分断されている。――というのも、南緯30度ともなると、亜熱帯高圧帯による乾燥帯が卓越するからだ。

緯度30度ともなると――現在の日本でいえば、鹿児島の南端と同程度なのだ。

氷河と砂漠の板挟みという状況が、生命にとっていかに危機的であったかは想像するまでもない。

但し、現在のアンデスにあたるパンサラッサ沿岸地域では、少し様子が違っている。氷河と緑と砂漠が近接し、あちこちに火山や温泉が見られる。そして、そうした地熱の高い地域のまわりには、緑のホットスポットができていた。

これは海洋プレートが、現在と同様に南米の西岸に沈み込むためである。その結果、プロト・アンデス山脈の形成と、沈み込み帯における火山活動が活発化するためだろう。とりわけペルー東部アンデスでは、石炭紀の地熱活動により熱水が運んだ金が、現在の金鉱脈をなしている(Pataz–Marañón Valley Au belt)。

アマゾン上流部、とくにペルーアマゾンの砂金資源のうちかなりの量が、こうした古生代の沈み込み帯から流れてきているという。

アマゾンのゴールドラッシュは、石炭紀のたまものだったのだ。

プロト・アンデス山脈はそこから南へと続き、ボリビア、アルゼンチンと数々の熱水鉱床をはぐくんでいる。さきほどまで旅していたボリビア南部は、そんな、現在のアイスランドにも似た、活発な火山地帯であった。

さて、さらに北に目を移そう。

機体は北へ、石炭紀のアマゾン盆地へと向かっている。

この地は現在における、紅海に似ている。

亜熱帯高圧帯による厳しい乾燥にみまわれ、巨大な内海の周囲には石膏などの塩類が析出したサブカが発達し…

――筆跡はここで、途切れていた。


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