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凍てつく先に

ほぼ、まる一日のフライトである。

おんぼろの機体にもかかわらず、驚くほど揺れがない。

滑るように進む機内で、気づけば、意識を保っているのは私だけであった。

アリアもリリィも、すっかり、すやすやとした寝息を立てている。

私たちの旅は、今でいうところのブラジル北部、パラーからはじまった。

そこから、今でいうところのボリビア南部、タリハまで飛んできて、二泊。

南米は3億年間、そこまで地理的な変化がないから、距離感覚もいまとかわらない。

そして今から、ぐんと北上して、またパラーに戻って燃料補給し、そのまま北米、イリノイを目指す。これに関して言えば、北米が時計回りに数十度回転して東海岸が南米北部にくっついてしまっているから、今よりはだいぶ近い。

着けば、いきなり採集だ。

今のうちに寝ておく、というのが最良の判断であることに、疑いはない。

しかし、過去の世界に初めて来て、おめおめ寝ていられるか、と思ってしまうのも、また事実であった。

頭に、つんとした冷たさを感じて身をよじれば、機体の外壁についた水滴が、はらりとガラス玉のように落ちた。触ってみれば、氷である。

外壁にあいた手のひらほどの穴は、二重のガラス板で覆われ、しかしそれでも、手もかじかむ寒さに覆われている。

窓であった。

もはや外界を映すものではなく、ただ白く、やわらかな光を伝えるのみである。

指でなぞれば、シャリッとした感触とともに、スリットみたいに、世界が開く。

息を白くしながら、目を近づける。

その小さな覗き孔も、吐いた息がすぐ結露して、凍って、そしてまた指でなぞった。

そして、また食い入るように、視線を向ける。

氷河が、動かざる津波のように、平原を押し流さんとしていた。

機体の右側には、延々と氷の海。

下から左側には、点々と採掘プラントが煙を立てている。

鉄道網が地平線の先まで伸びて、北へ、北へと貨物列車が駆けていく。

この辺境の惑星の、それも凍てつく、湿地だらけの大地に、よく通したものだ。

湿地の中をゆく列車は、まるで水の上を走る、黒い、ウナギのような船だった。

白い煙を噴き出しながら、走る。――線路の上には、電線がなかった。


あの車窓からは、何が見えるだろう。

おそらくは。

いちめんの原野に生い茂る、柱のような亜木本性小葉植物とトクサ類の群れが、一面に、ただ一面に広がって、その向こうには押し寄せる氷があって、その合間に採掘プラントが点々と稼働しているのだろう。

この夢にまで見た辺境の惑星にきて、まだ四日目であるというのに、望郷の念も少し、湧き始めていたのかもしれない。

もしずっと時間があったなら、ひたすら、ぼんやりと、それを眺めているのも悪くないと思った。

金属の窓枠も、内側は結露し、それが凍っていた。

目下に広がる森が疎らになり、そして砂漠に溶けていく。

水面が涸れ川にかわって、その周囲に緑もなくなるのを視認すると、私の意識は気づけば、すっと落ちていた。


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