I「一億年氷河期」として、石炭紀を再考しよう
本作では、後期石炭紀モスコビアン、おおよそ3億1500万年前の地球を描いています。この時代は、石炭蓄積がピークに達し、熱帯ではリンボク類が繁栄の頂点を極めた、最も石炭紀らしい時代といえるからです。
しかしながら、この時代は同時に、後期古生代氷河期の1つめのピークともいわれます(Kent & Muttoni, 2020)。
後期古生代氷河期というのは、石炭紀からペルム紀前期にかけて続いた氷河期です。LPIA(Late Paleozoic Ice age )と略されることもあります。この氷河期がいつから始まって、いつ終わったかに関しては諸説ありますが、おおよそ、前期石炭紀の後半までには既に始まっていて、おそらく後期ペルム紀初頭まで続いていたと考えられています。おおよそ、3億2000万年前から2億6000万年前まで(Kent & Muttoni, 2020)の少なくとも6000万年と考えられ、もっと長く、後期デボン紀から始まって石炭紀を通じて氷河期が続き、後期ペルム紀初頭まで続いた、つまり「一億年氷河期」とみなす人もいます(Isbell et al., 2021; McGhee, 2018)。
いずれにせよ、恐竜が絶滅してから今に至るまでと同じかそれより長い期間、地球は寒冷な気候に見舞われていたということです。
余談。
さて、後期古生代氷河期が本当にゴンドワナ全体を覆う巨大氷河期だったのか、それとも部分的な複数の氷床が発達と癒合、そして縮退と分離を繰り返していたのかについては、現在では後者の方が優勢です(Montañez & Poulsen, 2013.)。つまり、単一の巨大氷河という印象もまた、本当にどこまで正しいのかという点で疑惑があります。
ペルム紀にピークを迎えたという考え方についても全体的には正しいようではあるものの、地域によって差があり、少なくとも南米に関してはピークが石炭紀にあるとする説も提唱されているのが現状です。(Griffis et al., 2023)
Isbell, J. L., Vesely, F. F., Rosa, E. L., Pauls, K. N., Fedorchuk, N. D., Ives, L. R., ... & Kusick, A. R. (2021). Evaluation of physical and chemical proxies used to interpret past glaciations with a focus on the late Paleozoic Ice Age. Earth-Science Reviews, 221, 103756.
Kent, D. V., & Muttoni, G. (2020). Pangea B and the Late Paleozoic ice age. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 553, 109753.
McGhee Jr, G. R. (2018). Carboniferous giants and mass extinction: the late Paleozoic ice age world. Columbia University Press.
Montañez, I. P., & Poulsen, C. J. (2013). The Late Paleozoic ice age: an evolving paradigm. Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 41(1), 629-656.
Griffis, N., Mundil, R., Montañez, I., Le Heron, D., Dietrich, P., & Iannuzzi, R. (2023). A Carboniferous apex for the late Paleozoic icehouse.




