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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
凍てつく地でも、採集を。
136/225

「古代魚を食す」

「これ、もらってきちゃった!寒いしひもじいだろぅ、って」

温かい、少し麦にも似た香り。

ランプの替え球とともにアリアが持ってきたのは、蒸されたパレオニスクス類の魚が目いっぱいに入ったパウチ袋であった。今日、港で釣りに興じていた人たちがあげたものだろう。

「素朴な料理でしょ?はらわた出して、塩まぶして、袋に入れて湯せんするだけ。」

大きさは、ワカサギを一回り大きくしたくらいである。

北海道に行くとチカという魚がいるが、大きさと香りは、それを思わせた。

生臭さなど全くない。香ばしさと少しの甘みが、薫り高い。

一口含もうとしたとき。

「ケイ、それだめ」

そう言って、アリアは小さなハサミを手渡した。

あぁ、そうだった。

この魚は――鎖帷子のような、菱形の鱗がびっしりと体を埋め尽くしているのである。鱗は互いに関節し、まさに鎧として機能する。中には骨、外側には象牙質とエナメル質。まさに歯と同じ構造で、もしぱくついたら――私の歯のほうが欠けていたかもしれない。

「昔の魚の鱗、なめちゃだめよ!恐竜の胃酸にも耐えるんだから」

アリアは魚を指さして、いう。

――そういえば、レピドテスの鱗らしき化石がバリオニクスの胃に相当する部位から産出したという話がある。レピドテスかどうかは、いまいち怪しいにしても。

ガノイン鱗が恐竜の胃酸にも耐えるレベルであることは、化石でしか恐竜を知らない私にも知られた事実だった。

ー中略ー

ハサミで、皮を切りひらく。

腹を出してあるから、そこを起点に尻びれにかけて切っていって、“剥いて”食べる。

そして驚いたことに、ほとんどといっていいほど中骨を感じないのである。

「なんか、エビかなにかを食べてるみたいだ」

甘味のある身に舌鼓を打ちながら、ふとそんなことが、口をついて出た。

見れば袋に虫がダイブしそうになったので、あわてて封を閉じる。


夜闇に、一つの煌々とした灯が灯っている。

ライトトラップを囲んで食す古代魚は、どこか、キャンプファイヤーみたいで。

「いいね、こういうの。」

「でしょ?あとこの魚、冷めるとあっという間に味落ちるから。」

アリアはさっそく食べ終わっていた。

そして、私が食ベる様子を、その大きな瞳でじーっと眺めていた。

私の鼓動が、速くなった。

どうしても、なにか狙われているというか、そんな感じがして。

虎視眈々、とはこういうことである。

――単純に頭2つほどの体格差があるからかもしれない、が、それを言うのは憚られた。

そして最後の一匹を食べ終えて、ウェットティッシュで手をぬぐうと、アリアはごそごそとバッグから一つの、黒い箱を出した。

「ねぇケイ…ちょっと渡しておきたかったものがあるの」


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