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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
凍てつく地でも、採集を。
117/234

―描写を支える科学的背景―  ゴンドワナのコルダイテスに似た植物のこと

えぇ、またなんか誰も知らない木を出してきた、と思われていることでしょう…

動植物を出すたびに解説回を設けなければならない事態になっております。

石炭紀に限らず、有名さとフィールドでの出会いやすさは全然関係がないのです。

キャラクターがどういう地形をどう歩いて行ったときに何に遭遇するか、と考えていくと、まったくもって知名度のない動植物に遭遇する可能性が極めて大な場合がありまして、そのような動植物こそ、実際に現地を歩いている感が出るなあと思いながら書いています。


読者にはさぞかし苦痛でしょう!

すみません…

復元図を用意しろ!って?

ないんです。じゃあ自分で描くしか…となると、今度は筆が止まる。


愚痴はさておき、今回の解説を始めます。


Noeggerathiopsisはゴンドワナから知られるコルダイテス類「に似た植物」です。

グロッソプテリス類がゴンドワナを支配するようになるまで、またなった後も、Noeggerathiopsisは代表的なゴンドワナの木本であったようです。

Noeggerathiopsisがいったいなにものなのかということに関しては、正直意見が分かれています。コルダイテス類に少なくとも見た目はよく似ているのですが、グロッソプテリス類などとの関連を指摘する研究者もいます。

主な違いは葉の構造とされます。叉、Noeggerathiopsisのほうが基部に向けてすぼまり、先端が鈍頭のために概形が匙状になる傾向があるようです。共産する種子はSamaropsisおよびCordaicarpusで、コルダイテス類とよく似た風散布を撮っていたものと考えられます。幹に関して、インドや南アフリカなどから10mを越える直線的な幹が見つかっていますが(Seward, 1898)、これに関しては少なくとも一部はグロッソプテリス類の幹であるようです(Pant, 1999)。

作中では主に、Taylor et al., (2009)を参考に描いています。そのためNoeggerathiopsisの葉をコルダイテス類としては小柄として描写しましたが、ときに極端に長い場合も報告されています。極端なものでは80㎝に及ぶ例すらある(Seward, 1898)ため、そこは注意が必要です(一般的というわけではありません)。Noeggerathiopsisがコルダイテス類なのかどうかという点についてしばしば争点になる理由として、典型的なコルダイテスにみられる円盤を積み重ねたような構造の髄化石(アルティシアArtisia)が共産しないということが挙げられます。(Pant, 1999)

鉱化したNoeggerathiopsisは南極から知られています。(McLoughlin & Drinnan, 1996.)興味深いことに北半球の極地であったアンガラ植物群(シベリア大陸)のRufloriaとの共通点がいくつか指摘されます。どちらもコルダイテスなのか、そもそもコルダイテス類ですらないのか、と議論が続く、謎の多いグループです。

創作メモ

石炭紀の(グロッソプテリス類が出現する前の)南米において、Noeggerathiopsisは頻繁に産出する植物であり、主に間氷期の森林を構成する要素だったようです。種子としてはSamaropsisおよびCordaicarpusがともに産出しがちで、おそらく種子と葉の対応関係にあります。おそらく葉から知られる以上の多様性があったのでしょう。(コルダイテス類という存在自体が、恐ろしく多様なグループを乱暴にまとめてしまっている面があります…コルダイテスといっても灌木なのか高木なのか、葉が5㎝なのか1mなのかすら描写できないのです…泣)

時代および環境の考証的に、モスコビアン初期のゴンドワナ植物群がどのような構成であったのかと考えるのはなかなか難しい作業です。これがしっかり乾燥した、やや丘陵地などであれば初期の謎めいた針葉樹(Buriadiaなど)や謎の裸子植物(“Ginkgophyllum”)などが出せるのですが、これらは乾燥地を示唆する、しかも新しいグループであり、湿地をちょっと歩いて出てくるという展開にはしにくいです。

そして、湿地植生しか出すことが難しい、となると大型木本はNoeggerathiopsisが出せる候補として残るかな、というところです。コルダイテスである!と言い切るのはリスキーなのでやめました。あと、葉をじっくり見て、これはNoeggerathiopsisと言われてたものに相当するよ、と観察する展開のほうが、キャラらしいな、と。

ところで、石炭紀におけるアンガラ植物群とゴンドワナ植物群の類似性は様々な分類群でたびたび指摘されており、一方で詳しく見てみると大きな違いがみられるケースも多々報告されています。これはもしかすると、同時期のユーラメリカの植物群より古風な特徴を残していることに由来するかもしれません。

Taylor, E. L., Taylor, T. N., & Krings, M. (2009). Paleobotany: the biology and evolution of fossil plants. Academic press.

Seward, A. C. (1898). Fossil plants; a text-book for students of botany and geology. Cambridge University Press.

Pant, D. D. (1999). Dominant gymnosperms of the Glossopteris flora. Journal of Palaeosciences, 48(1-3)), 111-125.

McLoughlin, S., & Drinnan, A. N. (1996). Anatomically preserved Permian Noeggerathiopsis leaves from east Antarctica. Review of Palaeobotany and Palynology, 92(3-4), 207-227.

Césari, S. N. (2023). The late Serpukhovian-earliest Moscovian flora from westernmost Gondwana. Review of Palaeobotany and Palynology, 317, 104969.


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