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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
凍てつく地でも、採集を。
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フィールドメモ:“パレオニスクス類“について

タイムトラベラーにとって、便利な語ではある。

なにせ、古くはデボン紀、新しくは三畳紀やジュラ紀、果てには白亜紀に至るまで、釣れる魚はどれも全く同じような形のものばかりなのだから。それらを総称する語がないほうがきわめて不便である。


しかし、パレオニスクス目、という名前自体が、さまざまな意味で問題を孕んでいることについては、やはり、はじめに述べざるを得ないだろう。

Paleonisciformesの和訳は「パレオニスクス目」ないし「パレオニスクス類」が一般的なのだが、「パレオニスクス」という呼称自体がPaleoniscumをPaleoniscusとした誤記に基づいている。そのため現状では、「パレオニスクム目」と呼ぶべきだろうが、そのように呼称する例はいまだ少ない。さらに、「パレオニスクム目」と呼ばれる一群が単系統であることにかんしても、現在では否定的な見解が多く、側系統群として扱われている。「目」という分類階級を与えることにも問題がある。

ただ、原始的な特徴を色濃く残す条鰭魚類が長らく存続していたのは事実であり、デボン紀から白亜紀前期まで、よく似た形態の魚類が見つかっているため、そのような魚類をまとめて扱う呼称としてはなお使われる余地がある。

さて、パレオニスクス類、と呼ばれている魚は大まかに言うと、以下のような魚だ。

まず、概形は紡錘形から細長い紡錘形である。背鰭は一つしかなく、通常は三角形で先端は尖っている。尻びれもまた1つだけで、これも三角形で尖ることが殆どである。胸鰭は扇状の放射骨によって支えられていて、基部はやや長い。

尾はサメのような異尾で、尾部が上側に折れ曲がってほぼ同長の下葉がつくような構造になっている。上葉には鱗が並んでいるのに対し、下側は鰭条で支えられる。鱗は菱形で、互いに関節構造でプレートアーマーのように接続し、エナメル質、象牙質、骨の3層からなるパレオニスクス鱗と呼ばれる原始的なガノイン鱗である。椎体は完全に骨化せず終生残存し、外見上は極めてよく似ている。また外見上は印象的な点として、頭部は前方が発達しないために極端に眼が前にあるように見え、カタクチイワシのような印象を与えるものが多い。

但し、これらPaleonisciformesの特徴とされるものはすべて条鰭魚類の祖先的な形態を示すことに注意が必要であると繰り返し述べておく。

ただ、このような形質を備え、どれもこれも似通った“保守的な”条鰭魚類が長期にわたって存続したことに意味がある。

外見上の違いは通例、神経頭蓋の化骨の程度がわずかに異なる、鱗の配列が異なる、体形や鰭の位置が少し違う、といったレベルにデボン紀から白亜紀まで2億年近くもとどまり続ける。

したがって、骨学と系統解析を専門とする魚類学者でない限り、一般のタイムトラベラーにとってはあたかもパレオニスクス類なる「ほとんど同じような」グループがずっといる、ようにとらえたほうが、遥かに有益であるといえるだろう。

すくなくとも、目の前の“パレオニスクス類“がどの系統のものなのか生かしたまま確かめるすべは極めて難しく、現場判断ではパレオニスクス類というさび付いた不適切な分類名を振り出さざるを得なくなるだろうし、典型的なパレオニスクス類と言われればほとんど、どんな魚なのかは伝わるレベルだ。


そして、そのうえでどのような点が非典型的なものか、という話となる。

たとえば有名なデボン紀のケイロレピスであれば、背鰭が後方よりで鱗が異様に小さく三角形から正方形に近いパレオニスクス類、というのがフィールドでの感想になる。


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