表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
凍てつく地でも、採集を。
109/229

6枚翅の、トンボ 

マレーズトラップのほうはといえば、大収穫のようである。

テントの上を眺めれば、緑色や茶色の「ごきぶり」やより小さな、類縁関係のよくわからない昆虫が、クリスマスツリーの飾りみたいにちりばめられていた。

手のひら大のムカシアミバネムシ類も2、3匹ほどいる。昨日採集された種と同じものもいた。

「これ、持って!」

アリアが手渡したのは、手のひらより大きいくらいの、ひときわ大きな…なんだ、これは。

まぁ、広義で言えば、トンボみたいなものである。

しかし、へたくそな人が何となく書いたかのような、「とんぼ」。

ぽってりと太った、指みたいな胴体に、幅広の翅。そして前胸の“肩”のような部分からは、前向きに2枚の小さな翅が、耳みたいに、斜め前上方にそそり立っている。

昨日見たムカシアミバネムシ類も6枚翅だったが、こちらは前2枚はすっかり退化していて、奇妙な装飾物としての役割しか果たしていなかった。

見た目といえばトンボに似ていないまでもないが、敢えてトンボと言い切れるようなものでもない。

バタバタと羽ばたくたび、前翅に連動して、後翅がばさばさと動いた。

その力強さは確かにトンボを思わせるものがあって、けっしてあのトンボの偽物みたいな、臭いツノトンボのそれではなかった。

トンボとは、似て非なる生き物だ。

全重量も、妙に重たい。どの程度俊敏に飛べるのか確かめてみたかったが、いかんせん一匹しか取れていない。おそらくトンボに近い仲間ではあるのだろう。

標本にして翅脈をあとでじっくり読みつつ、胴部の形態記載を行わねばなるまい…

そう考えこむ私を、アリアはやたら撮るのだった。


ひとしきり昆虫を回収すると、しばらく活かしておく分だけでも大荷物になってしまった。こちらもタイマーをつけた保存液を満たしたボトルに、先端を付け替え。

ギリギリ、終了。ウィーン、という音を立てて、ボトルの口が開口した。

ここから24時間でどれだけの虫が入るか、が今回の調査の肝心どころである。

「ね、マレーズトラップのほうがイケてるでしょ」

そう、アリアはいう。

「ね、って言われても。だってマレーズ1つしか仕掛けてなかったじゃん、FITはあんなにしかけたのに。」

「結局、サイズ!やっぱりデカいほうがよくかかるけど、でかいの沢山ってわけにもいかないじゃない?」

というので、

「セッティングも楽だし、今度はでっかいFITかけようよ」

というと、

「それがねー、前回やったときは案外微妙で。風を受けて倒れやすくて案外そう簡単でもない、生け捕りにするのが難しくなりがち、採集物の処理が面倒って。あと、意外と成果に差がある」

「へぇ、そんな感想なかったけどなあ」

「やっぱり、上に登る性質が強いんじゃない?って思ってるけど。」

アリアがそう言った矢先に、一匹の「ごきぶり」がマレーズトラップの布に着地した。迷わず上にかけ上っていく。

そして――保存液に落ちた。

動きがまんまゴキブリ。

そうこういっているうちに、今度は地面からかけ上っていって、また一匹かかる。

せかせか駆け回りながら保存液に沈んでいって、すぐ動かなくなった。

「飛ぶのが苦手。だから高くまで登って行って、保存液にダイブ!するわけ」

「あー、石炭紀ならではのマレーズ有利…たしかに、ね」


「じゃ、私たちは立ち去らないと」

そう、今日の調査は、昨日調査できなかった、工場と港湾施設を挟んで、町の向こう側である。

トラップの成果に影響を与えないためにも、早々に立ち去ることが望ましかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ