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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
凍てつく地でも、採集を。
108/229

―描写を支える科学的背景― 石炭紀の完全変態昆虫について

解説②

石炭紀といえば巨大な昆虫ですが、小さいほうはどうでしょうか?

少ないながらも、ちゃんと見つかっています。

ただ、それらが大量に産出するわけではない、という点には注意が必要でしょう。

小さい昆虫の化石記録が皆無であったかと言われればそうではありません。

翅長5㎜ほどの完全変態昆虫が幾らか見つかっています(Ilger et al., 2011)。

かつて、石炭紀後期からペルム紀にかけての寒冷化が完全変態昆虫を出現させたと考えられてきました。(Handlirsch A. 1920-21 ; Schwarzbach M 1950.)

しかし、現在では石炭紀の完全変態昆虫の化石記録が幾らか、ごく僅かながらも知られるようになってきました。現在では毛翅目や鱗翅目(つまりトビケラや蛾の仲間)に近縁とされるもの(Nel et al., 2007; Prokop et al., 2023)や、甲虫に近いとされるものをはじめとしてピースが集まりつつあります(Béthoux et al., 2011)。ただしペルム紀から中生代の完全変態昆虫の放散まで、完全変態昆虫はごく小さく、数も少なく、より大型の不完全変態昆虫の陰に隠れた存在であったようです。

復元について、石炭紀の完全変態昆虫の化石記録は小さすぎて発見されにくいこと、また非常に原始的なため分類が難しいといった制約が付きまとう状況です。ペルム紀の昆虫化石はロシアのKoshelevka Formationから素晴らしいものが知られていますが、研究がなかなか追いついていないのが現状です。ただ、この地層からの記録により、ペルム紀前期までに主要な昆虫グループに近縁なステムグループがすでに出現しており、石炭紀末までには完全変態昆虫の放散が起きていたことがわかります。以前も述べましたが、巨大昆虫の減少とは直接的にリンクしません。巨大昆虫はそののちにも見つかっており、大型昆虫が滅んだから小型昆虫が栄えたとは言いにくいのです。さて、残念ながら石炭紀の場合、それに比肩するほど多様な小型昆虫を保存する地層は、私の知る限りありません。中国のTupo formationは石炭紀後期初頭の昆虫化石を極めてよく保存しており、現状では不完全変態昆虫が産出するほとんどを占めるものの、極めて有望な産地と言えるでしょう。たとえば昆虫寄生性のダニなどすら発見されています。今後、ごく初期の完全変態昆虫がどんな昆虫であったのか、わかる日が来ることを願いたいところです。


Handlirsch A. 1920-21. Geschichte, Literatur, Technik, Palaeontologie,

Phylogenie, Systematik, p. 117-306 in: Schröder C. (ed.). Handbuch

der Entomologie, Gustav Fisher, Jena, 3, 8 + 1202 p.

Schwarzbach M 1950. Das Klimat der Vorzeit. Eine Einführung in die Paläoklimatologie. Enke F, Stuttgart, 275 p.

Ilger, J. M., & Brauckmann, C. (2011). The smallest Neoptera (Baryshnyalidae fam. n.) from Hagen-Vorhalle (early Late Carboniferous: Namurian B; Germany). ZooKeys, (130), 91.

Nel, A., Roques, P., Nel, P., Prokop, J., & Steyer, J. S. (2007, January). The earliest holometabolous insect from the Carboniferous: a “crucial” innovation with delayed success (Insecta Protomeropina Protomeropidae). In Annales de la Société entomologique de France (Vol. 43, No. 3, pp. 349-355). Taylor & Francis Group.

Béthoux, O., Cui, Y., Kondratieff, B., Stark, B., & Ren, D. (2011). At last, a Pennsylvanian stem-stonefly (Plecoptera) discovered. BMC evolutionary Biology, 11(1), 248.

Prokop, J., Rosová, K., Leipner, A., & Nel, A. (2023). First caddisfly-like insect from the Pennsylvanian of Piesberg (Mecopterida: stem group Amphiesmenoptera). Historical Biology, 35(8), 1444-1448.


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