ピンクブロンドの男爵令嬢が紅茶カップにソーサーを添えて悪役令嬢に突っ込んでくる話
「キャアー!イザベラ様ぁ~」
1人ガゼボで佇んでいたら、雰囲気を台無しにする空気を切り裂く声が耳を刺激したわ。
声の主は・・あの特徴的なピンクブロンドは男爵令嬢のサリー様よね。
カップにソーサーを携えて私に向かって来るわ。
何をするのかしら。その後ろには、大勢の学園生、男子、女子もいるわね。
「キャー!キャー!」
今にも転びそうだわ。もしかして、彼女が転んでお茶が彼女自身にかかったら私のせいになるのかしら・・・
「キャア!」
転んだわ。えっ、一回転をして、中のお茶は平気なの?
両足を踏ん張り着地して私に言い放ったわ。
「遠心力なのだからねっ!」
「サリー様、・・・一体、何をしたいの?」
「コラ、サリー、オーランド公爵令嬢に失礼だろう!」
「そうですわ。気軽に話しかけて良い方ではないですわ」
「あの、皆様、如何されたのですか?」
「それが・・・」
いきなり、サリー様が私に遠心力を見せたいとお茶の入ったカップをソーサーごと持って飛び出した?
皆は止めようと必死に追いかけた。
意味不明だわ。
更に。
今度は廊下でカップにソーサーを添えて、バタバタと走ってきたわ。
「キャー!キャー!イザベラ様!見て見て~」
「キャア、何ですの?」
いきなり止って、ズズズズーと勢いで滑って私の前で止ったわ。
「摩擦力なのだからねっ!」
「だから、何ですの?」
更に、サリー様は、カップの下にソーサーを添えて、
私の前で池に飛び込んだわ。
ドボン!と水しぶきが飛ぶ。
「サリー様!」
そしたら、上半身を水面から完全に出し。お茶を飲んでいる。
「見て見て~!浮力なんだからねっ!」
「サリー様・・・・」
さすがに怒ったわ。
【心配しましたわ!いったい・・・あなたっていう人は!何を考えているの!】
「今日の夕飯なのだからねっ!」
池からあがったサリー様にバチン!と頬に、ビンタをしましたわ。
はっ、しまったわ。
すると、サリー様はニッコリ笑って。
親指を立てたわ。
その姿が、まあ、腹が立つこと、立つこと。
それから、サリー様の奇行を注意をする毎日が始まったわ。
「サリー様!今日は紅茶を飲みながら玉乗りですか?カップとソーサー縛りでもございますの?!カップ職人に謝罪しなさい!」
「何となく何だからねっ!」
「あのイザベラ様・・」
「オーランド公爵令嬢」
注意をしていたら、私の周りに人が集まるようになったわ。
「まあ、皆様、どうしたのかしら」
「読書会に参加しませんか?」
「慈善活動があります。もし、宜しければ・・」
何故かしら?
「いつもは厳しい方かと思いましたが、サリー様に注意している姿に親しみを覚えたというか・・」
「そうですよ。サリー嬢は、あれで成績が良いから退学にならないのです。あのパワーに対抗できるのはさすがだと」
「まあ・・・」
何でよ。
私は見た目は黒髪の釣り目で厳しい印象を与えるわ。だから、友人作りも上手く行かなかったわ。
いいえ、それは言い訳だったわ。今は向こうから手を出してくれているわ。手を取るわ。
まさか、サリー様が・・
「キャー、猫ちゃんが集会を開いているのだからねっ!だから授業を休むのだからね!」
猫の集会に混じっているサリー様を見ると、その考えは自信がない。
サリー様が私の寂しさを見抜いて友人を作る協力をしてくれたなんて・・・・
今では。
「オ~ホホホホ、ザクソン侯爵家のザーム様!私、オーランド公爵家のイザベラでしてよ!」
「オホホホホ、まあ、私のお茶会に来たのね。宜しくってよ!!」
とあまり仲の良くない派閥の令嬢と交流するまでになったわ。
そして、今でもサリー様は、寂しい令嬢に突撃しておりますの。
大空にサリー様の顔が浮かびますわ。大空の青と髪の弩ピンクで目がチカチカする毎日ですの。
最後までお読み頂き有難うございました。