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第3首 ザ・チャイルド

ユーリの特殊能力の片鱗が

 放課後、校門の前にいる金髪の見知らぬ生徒から声をかけられた。


「よお、北川祐莉(ユーリ)、いや、リーガン」


「遠野?」


 遠野紗菜(サナ)。小学校時代の元クラスメートで今は隣町の中学校に通っている。


「見違えちゃったよ。みごとな金髪だわ」


 と指摘すると遠野は得意げに金髪をかきあげた。


「だろ?」


「それで? 金髪自慢に来たわけじゃないんでしょ?」


「わりぃけど、ちょっと顔を貸して……家まで来てくんねぇか?」


「理由を教えてくれないと返事できないよ」


「道すがら話すからたのむよ。おまえだけが頼りなんだ」


 そう言って遠野は頭を下げた。『NO』とは言いづらい雰囲気だよね。




「リーガンはアレが見えるんだろ? 黒い霞のようなもんが」


「うん」


 歩きながら遠野はここへ来た理由を話し始めた。


「親父の再婚相手にさ、赤ちゃんができてよ、その赤ちゃんに向かってキースが怒るんだ」


「キースって誰? 彼氏とか?」


「うんまあ、彼氏っちゃ彼氏かな、猫だけど」


「あ、そうなんだ」


 猫を飼っている者同士のシンパシーを感じたせいか、遠野の印象が最低値からやや上昇した。


「キースの怒り方が尋常じゃねぇんだ。まるで悪魔に憑りつかれたみてぇにすげぇ形相で怒るんだ」


「ふーん」


「もしかしたら、おまえが言っていた黒い霞が憑りついているんじゃねぇかって思ってさ」


 遠野がやってきた理由がようやく理解できた。




 小学校時代、黒い霞が見えると言うあたしと嘘つき呼ばわりする遠野の間で殴り合いのケンカになった。


 その時の遠野は黒い霞に憑りつかれていて暴れっぷりもハンパなかった。


 黒い霞を取り除くとやや大人しくなったものの、それ以来一度も口を利いたことはなかったのだ。


 そんな相手にわざわざ頭を下げて頼むなんてよほどの事なのだろう。


 猫に憑りつく黒い霞か……絶対にないとは言いきれないな。


 まあ、百聞は一見に如かず、だ。




 遠野の家に到着すると奥から赤ん坊の泣き声が聞こえた。


 どうやら義母があやしているところのようだ。


「おじゃましますう」


 玄関を上がって左手にある部屋のドアを開ける。

 その部屋にはゲージが置いてあって中で眠っていた黒い猫が目を覚ます。近づいて覗き込むと背中の毛を逆立ててフゥーーッと威嚇してきた。


「キースは警戒心が強い猫みたいだね。ブルーとは正反対だわ」


「ブルー?」


「うちで飼っている猫の名前さ」


「青い毛色の猫なんか? 瞳の色がブルーとか?」


「いんや。キジ白猫だよ。お母さんがかっこいい名前がいいからって『ソルジャーブルー』って名付けたのさ。長いからみんなブルーって呼んでる」


「へーっ」


 初対面の人にも頭をゴツンとぶつけて挨拶をするほどの人懐っこいブルーが怒ったところなんて見たことないな。


 一方ゲージの中の黒猫キースは、すごい形相でフーフー威嚇し続けた。


「親父がさ、赤ん坊に危害が加えられてからでは遅いって言うんだ。さっさと処分してこいって」


 処分なんて言葉を使う父親……どこにでもいるよね、猫を家族と認めない人って。


 初めて見る、今にも泣きだしそうな遠野の悲しげな顔。彼氏と言うほどかわいがっている猫を処分なんて遠野には難しいだろうな。


 父親と義母と赤ん坊……、もしかしたら遠野の心のよりどころはこの猫だけだったのかもしれないなんて余計なことを考えてしまう。


 ゲージの中の猫を観察すると、全身真っ黒だけど黒い霞は見当たらない。


「キース、君は何に対して怒っているんだい?」


 と問いかけても返事の代わりに威嚇が返ってくるだけだった。




 ガラリ。


 玄関の扉が開く音がして大人の男性の声が聞こえた。


「ただいま、芽依(メイ)


(ソウ)さんおかえりなさい」


 父親が帰って来て義母が出迎えているみたいだ。


「聞いて、今日(アオイ)が喋ったのよ?」


「え? 碧はまだ一歳だろうに。本当に喋ったのかい?」


「ええ、はっきりと聞いたわ」


「へえ。一歳で喋れる赤ん坊か。碧は天才児確定だな」


「親バカね。ちょっと早熟なだけかもしれないわよ」


「ははは。それで、碧はなんて言ってたんだい?」


「それがね、『のうおんまい』って言ったのよ」


「『のうおんまい』、なんだそりゃ?」


「さあ、なんなのかしらねぇ」



 * * *



 ああ、そうか。全部わかってしまったよ。


「キース、君は間違ってなかったよ」


 とあたしは黒猫に告げた。


『のうおんまい』っていったい何なのでしょう? わたし、気になりますっ!

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