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逮捕!?

ひかりもすんなり デビューをして 

外見上女の子同士接してくるようになったのだが

レイは油断するなと嫉妬むき出しにして釘を指す

ひかりのエキストラも妙に可愛く まわりのスタッフを萌えさせ・・・ 好々爺監督も一発OK!だった。


その後ユウリとひかりは一緒にリュウに送られてマンションに戻り 遅く戻るレイやリュウのために二人で夕食の材料を買いに行く事にした。


「佐々木さんの演技、本当に新人とは思えないほど自然にやってるね~。」


しみじみ思い返すようにひかりが言う。


「そうかなぁ あたしはいつもレイに迷惑かけないように必死にやってるだけだよ。」


「佐々木さん・・・レイさんのこと好きなんだね。」


「え。」恥ずかしくて顔を上げられず、ほうれん草を手に取る。(実際は小松菜・・・注釈)


「でもレイさんの方が佐々木さんのこと大好き~~って光線ガンガンだしてて 怖いくらい。ちょっと危なくない?あの人・・・」


ひかりがちょっと肩をすくめる。


「ああ なんかレイはひかりちゃんのこと誤解してるだけなんだよ。」


ちょっとひかりに対して、申し訳ない気がしてくるユウリ。


(私の説明が悪かったのだろうか、性同一性障害ってあんまりポピュラーな病気ではないからな~。)

 「お鍋にしようかきりたんぽがあるよ 佐々木さん。」


料理についてはユウリに口を挟む余地はない。


「ユウリでいいよ わたしもひかりちゃんって呼ぶから。」


「本当? 僕 ”ちゃん”づけで呼ばれるのって憧れてたんだ・・・さっきもスタジオでそう呼ばれてて夢見てるみたいだった。もっと早くにリュウさんの元にくればよかったな。」


「おい 井川薫だぞ!」

「へぇ やっちゃったな!」


大型スーパーの大型画面に人だかりが出来ている。


「ユウリちゃん!見て!」


{・・・井川 薫は容疑を認め

マンション自室からは30万円相当の大麻が見つかった。)


「い 井川さん・・・。」


ブブブ・・・ブブ

ひかりの持っている携帯が鳴る。

「はい あ リュウさん? ええ いま知りました・・はいすぐ戻ります。」


「ユウリちゃん 共演者ってことで記者が押しかける可能性あるから とりあえずすぐマンションに戻ってろって!

レイさんも自分のマンションは囲まれてるから先にリュウさんのマンションに戻っているみたい!」

二人があわてて会計を済ませてマンションに戻ると既に黒山の人だかりになっている。


(どうしよう・・・このままじゃあ 帰れないね。)


「ユウリちゃんとりあえず あっちの公園に行こう!」


ひかりがユウリの手をひいてドンドン足早に歩いていく。


(ハァ ハァ・・・ さすがに体は男の子 ついていくのにやっとだわ。)


ひかりはユウリを公園のトイレに押し込むといきなり着ていたクリームイエローのワンピースを脱ぎだした。


「ど どうしたの?ひかりちゃん。」


「ユウリちゃんも脱いで!」



もう既にひかりはブラまで外している。


「え え~~~!」


いくらなんでもこんなとこで脱げない!と思ったが


「いい?!今ユウリちゃんが着ているパンツとシャツは男の子が着ていても不自然じゃないから

僕が男に戻ってそっちを着るよ。 これも・・」


また思い切りよくひかりはユルフワカールのウィッグをはずしユウリの頭にのせた。


「ほらこれでオレプロの大型新人女優のユウリじゃない どこかの女の子と 

萌え系エキストラのひかりじゃない どこかの男の子だよ・・・・。」


「ひかりちゃん。」


あっというまにひかりは元の男子高校生の鮎川 ひかりに戻ってしまった。


「いいの? せっかくかわいかったのに・・・。」


あんまり ひかりが潔くって 痛々しい程だった。


「いいから早く 僕 風邪ひいちゃうよ。」


「ご ごめっ。」


あわてて ひかりに一応 後ろを向いてもらって ユウリもシャツとデニムパンツを脱いだ。


「やっぱり女の子用だから お尻が大きく出来てるな・・・腰パンにしちゃお。」


「・・・」余った胸を見下ろすユウリ。


がしかし


「ユウリちゃんこれ使う?」


と胸パットのついたボリュームブラを恥ずかしそうに差し出すひかりには丁重に辞退を申し上げた。


「裏も結構来てるわね~。でも私達新人でそれほど顔知れ渡ってるわけじゃないから 却って堂々と入った方がいいんじゃない?」


マンションの近くまできて二人は少し様子を見ている。


「それにしても・・・ユウリちゃん かっわいい!なんでリュウさんセレクトの服着ないの?」


「だってなんだかこういうの着慣れなくて・・・恥ずかしいんだもの。」


早く脱ぎたい・・・。


「だってこれユウリちゃんの私服でしょ?普段こんな地味なの着てるんだ・・・せっかくかわいい本物の女の子なのに勿体無いな~。」


心底羨ましげにひかりがぼやく。


たしかに母から着替えをもらってからは撮影以外は私服を着るようにしている。

リュウは特に何も言わないが、かわりにリュウセレクトをひかりが存分に着てくれるので満足しているのだろう。


「じゃ 行こうか。」


二人で腕を組み 普通の高校生としてマンションに入るが周りに集まった記者達はチラチラ疑わしそうに見ている。ひかりがユウリの肩をぐっと抱いて恋人を装い「なんか事件かな?」と呟いたとたんに一般人と判断されたようで すんなり通してもらえた。


「くっそー!こっちに室塚きてるってのはガセかな?」

イライラしたようにカメラをもった男。


(やっぱりレイを追って集まっているんだ。)


「室塚と井川は付き合ってるんじゃないかってのもガセなんじゃないの?」


そんな話し声まで聞こえてくる。


(ユウリちゃん 気にしないで・・・早く通り抜けよう。) 


(うん・・・)


「ただいま。」


「ユウリ!」


玄関を入るとすぐにレイがユウリを待ち構えていたかのように飛びついてきた。


「ごめんよ。大丈夫だったか?」


ギューッと抱きしめたまま離さない。


「レイ・・レイ くるしい」


「レイさん ユウリちゃん苦しがってます。」


呆れて ひかりがレイの肩を叩く。


「あ ごめん・・・おまえその頭と服どうした?」


少し冷静になったのかやっと体を離してユウリのカッコに気がついた。


「レイよくこのカッコで私だって分かったね。

ひかりちゃんのアイデアで服を交換したんだよ。」


「ひかりと?ああ おまえ じゃそれユウリの着てんの?」


眉間にしわを寄せて レイがひかりに詰め寄る。


「ええ そうですけど。その方がばれないかと思って。」


ひかりはすぐ興奮するレイと違って冷ややかに言った。


「すぐ脱げ。」

「言われなくても 脱ぎます。」

どうしてこの二人こうなんだろ・・・


「レイったら ひかりちゃんはせっかく可愛いカッコしてたのに

ウィッグまで貸してくれたんだよ。なに怒ってるの?」


クスクスいきなりひかりが笑い出して


「さっき 公園のトイレで二人っきりで取替えっこしたんですよ。 

ユウリちゃんの肌綺麗だったな~。胸も小ぶりだけど形いいしぃ。」

と言い出した。


「なにを!!」


レイがぶち切れる。


「ひ ひかりちゃん なに言ってるの? 

ちゃんと後ろ向きになって見ないようにしてたでしょ! 変な事言わないで!」


あわてて ユウリがレイを押さえる。


「ごめんね~ ユウリちゃん。

こいつむかつくから白状しちゃうと お手洗いの鏡ごしにばっちり見えてたんだよね。

おかげでパンツの中暴れちゃって困ったよ。腰パンにしようって無理やり押さえて ごまかしたけどね。」


「ひかりちゃん・・・何言ってるの? どういうこと・・・?」


「ドカッ!!」


レイの拳がひかりの顔をめがけて飛び込んでいったがすぐかわされ 脇の壁にぶつかった。

「やっぱりな・・・おまえ リュウとたくらんでユウリをドラマ主演に引き込んだんだろ?

なんとなく 胡散くさいと思ってたんだ。なにが性同一性障害だ・・・

お前だって、ユウリの事好きなんだろ?もちろん男として!

お前のユウリを見る目付きでわかるんだよ!!」


「違うよね ひかり・・くん?なんで否定しないの・・・」

(いったい何がどうなってるの?)


「井川さんの件で共演の俺もやばいってんでここに避難しにきただろ?

でもとりあえず皆帰ってくるまで退屈だからさ なんかビデオでも見ようかと思ってたら 

既にデッキに入ってたのがあっていきなり これが流れたんだ。」


リモコンをレイから奪いスィッチを押すと 

50型大画面にユウリが写っていた。


体育の時間に短パン姿でハイジャンプの授業を受けている風景。


教室で授業を受けている風景。


図書館で調べ物をしている風景。


さまざまな場面にユウリが出てくる。

たしかに毎日来ているといってはいたがこんなところまで撮る事はリュウでは難しいかと思われた。


「なんだもうばれちゃったの?リュウさんもうっかりだな~。

俺、芽衣ちゃんのファンでさぁ ずっと携帯や小型ビデオで隠し撮りしてたんだよね。」


「鮎川くん・・・」


「でもさぁ 芽衣ちゃんって顔はかわいいのに普段はいつも地味でさぁ 

もっとアイドルが着るような 可愛いカッコしてほしかったんだよ。


それには芸能界に入ってもらえたら いつでも可愛い姿の芽衣ちゃんが見られるかもって 軽い気持ちでリュウさんに君の写真やVをいっぱい見せたんだ。」


レイが険しい顔でひかりを睨みつけ


「おかしいと思ったよ。 いきなりスカウトされてから 主演に抜擢されるわけないもんな。」


(そうなんだ あたしは芸能界のことなんて何にも知らないから気づかなかった・・・)


「でもはじめ声掛けられたのは本当に僕の方だよ。

芽衣ちゃんがこんな格好してくれたらいいな~と思っている服を買って来て 自分でもこっそり着て歩いているんだ。

リュウさんに会ったのは芽衣ちゃんイメージの浴衣を着ている時なんだよ。

俺もけっこう凝ってるからかなり女装も萌え萌えらしいしね。」


悪びれもせずにひかりが続ける。 


「実際にいろんなポーズをとってビデオ編集したら芽衣ちゃんが可愛い姿でポージングしてるように出来上がるんだぁ 

でもそれは俺の宝物だから誰にも見せてないけどね。」


「ユウリ大丈夫か?」


思わずめまいがしてぐらりとしたのをレイが支える。


(もうだめ 聞いていられない・・・)


ユウリの意識は遠くなっていく。


「キミは見たいだろう? ユウリちゃん命のレイ君。

こないだ一緒に寝たときはいい匂いでやわらかくって 思わずほっぺや首筋を舐めたく・・」 

ドガッ 今度は思いっきりボディに入ったため さすがにひかりの体も沈みこんだ。


「痛っ はは・・・どうせアンタも井川 薫と大麻やってたんだろ?

これで芸能活動もストップかなと思ってね 餞別に真実を教えてあげたんだけどね。

どうしてこう短気なのかね・・・」


「おまえ ユウリが世間知らずで騙され易いのにつけこみやがって・・・。」


レイはもう既に怒りすぎて青黒い顔色になっている。


「本当にね 彼女勉強ひとすじでさ・・・

純粋で全然疑うってこと知らないわけ・・・

ちょっとさ俺も手が出せなかったなぁ 

さっきも公園でチャンスだったんだけどね・・・。 


あんたもそうなんだろ?

レイ君 あんまり純粋すぎると却って手が出せないよね?」


「リュウはどこまで知ってるんだ?」


「あの人? ああ 最初は俺にこのドラマの主演に応募しないかって誘ってきたんだけど 

さすがに無理だから、俺は女じゃないって白状してさ 

その後 あの有名なオレプロのスカウトだって聞いたもんだから 

すぐ芽衣ちゃんを俺の理想のアイドルに仕立て上げてくれるのはこの人かもしれないって思いついたんだ。


なかなか普段は声掛けづらくって(俺これでも結構オクテなの:笑)

リュウさんが芽衣ちゃんのお母さんの方から、まず話をつけて契約したんだ。」


「おばさんもグルだったのか?」


さすがにびっくりするレイ。


「ああ あのおばさん元々自分が女優になりたかったらしくってリュウさんのファンでもあったらしい。


芽衣ちゃんが進学校に入ってからますます勉強ばかりでボーイフレンドも作らない。せっかく女の子で年頃なのにつまらないって思ってたらしい。

本人その気は全然ないのに、面白いよね。

でもそんなおばさんのおかげで早くから親の承諾書は取れてたんだ。

彼女がプロダクションと契約するのには親の承諾が必要だからね 未成年だし。」


「後は本人の契約サインのみだったんだ。」


初めて明かされた事実に驚きを隠せないレイ。


「そうそう そのⅤ萌え萌えだろ? 

それでドラマのオーディションも通ったんだ。

でもテストもあったし 当たり前に話しても絶対そんなの興味ない子だっていうし 

これは一芝居打つしかないだろってことになったんだよ。」


楽しそうにひかりが思い返しながらつぶやく。


「まあね 特待生の芸能活動期間も少ないし ぎりぎりに話持ち込まないと撮影の日数取れないから・・・ 

僕とリュウさんの連携プレーでまんまと ユウリちゃんは自分が盗ってもいない参考書を万引きしたってことにされて無理やり契約書を書かされたんだ。」


「鬼畜だな・・・ おまいら。」


レイは汚らわしそうにひかりに一瞥をくれるともう興味はないとばかりにユウリを抱き上げて寝室に連れて行く。

「でもさ 計算外だったのはあんただよレイ君。

あんたさぁ 半年前にこのマンション出てって プロダクションも変わってるんでしょ?

なんでリュウさんとこに入り浸るわけ?

リュウさんを見限って出てったんじゃないの?

・・・邪魔なんだよね。

せっかく 芽衣ちゃん芸能界いりして 

たくさん萌え画像拝めると思ってたのに変な虫ついて妊娠でもされちゃ困るし。

リュウさんから聞いてあわてたよ。」


「うるせえ もう大体わかったから黙ってろ。ユウリがせっかく眠ったんだから お前らの汚い話は聞かせたくないんだ。」


レイは振り向きもせずにそう言い ユウリの髪を撫でている。


「あれ?いつまでも芽衣ちゃんの側に居られないよ。 あんた。

俺さっき集まっていた記者にメモを渡してるんで 今頃警察にも室塚がここに居るって知られてますから。

どうせ井川と付き合ってたんでしょ。どうにもならないよ。」


「!」


ピンポーン


{室塚さん いますか? ちょっとお話をうかがいたんですが}


「もう警察きちゃったみたいですね~。ハハハハハ 

絶好のシャッターチャンス狙って、外もカメラマン勢ぞろいだよ!

ご心配なく 君のユウリちゃんは僕がちゃんと面倒みますから。あんたは大人しく消えて・・・」


「あの ちょっと!どいてください! 俺がここの住人です。」


「あなたは 刈谷さん?」


「はい! おい レイ開けろ!

おれいま福田にカードキー渡したから持ってないんだよ!」


「リュウ・・・」


ドアを開けると刑事らしきものや警官数人とリュウが入ってきた。

「室塚 レイさんですね。」


「はい・・・」


「井川 薫さんの供述で・・・あなたのバッグに黙って大麻を隠してしまったというんで持ち物を調べたいんですが?」


「え?」


きつねにつままれた顔で固まるレイ 一瞬なにを言われたか理解できない。


「いつのことですか?そんなの気づかなかった。」

呆然とするレイ。


「ちょっと失礼します。」


刑事達がマンションの中に入っていく。


レイのバックパックを受け取ると中身を全てアラタめられた。


「ありました。おそらくこれでしょう。」


検察官のひとりがお守り袋を開いて中から小さなビニール袋を取り出した。


「へぇ レイさん本当に知らなかったの?

自分でも使ってたんじゃないの?」


ひかりの目が笑っている。


「それは・・・ドラマの顔合わせの時に視聴率上がるようにってもらったものです。

でもそんなものが入っていたなんて知りませんでした・・・」


ブルブル肩を震わせてレイが答える。


「レイ大丈夫か?お前は何も知らなかったんだろ。しっかりしろ!」


リュウがレイの肩を抱いて落ち着かせようと何度も背中をさすっている。

「とにかく 話を伺いたいんでご同行願えますか?」


「リュウ・・・ユウリが奥で気を失って眠っているんだ。頼むよ。そいつを近づけさせないで・・・。」


「レイ! 待ってるからな!」


レイが刑事達と共に連れ去られていった。


「リュウさん あいつ見限った方が良くない?

絶対やってるよ。ユウリちゃんの側に置いておくような奴じゃないと思う。」


「レイはそんな奴じゃない!」


思わずきつい口調でそう怒鳴ってしまって、あわててまた気づいたように顔を和らげた。


「ごめん 大きな声をだして悪かったよ。

ん?ユウリ目を覚ましたか?」


「リュウ・・・レイは?」


「ああ 大丈夫だ。ちょっと警察に話を聞かれるだけですぐ戻ってくるよ・・・」


リュウが優しくユウリの頬を包んでいつのまにかこぼれた涙を拭ってくれた。


「いいから無理せず休んでいろ。ちょっと熱もでてきたじゃないか・・・

紀子さんがあまり丈夫な子じゃないからって言われてたのに・・・ すまない。」


「ユウリちゃん!大丈夫?」


ひかりがすぐに冷やしたタオルを持って近づく・・・


「やめて!」


バシッとタオルを持ったひかりの手を思わず振り払うユウリ。


「ユウリちゃん・・・」


寂しそうにタオルを拾うひかり。


「どうした?お前ら・・・さっきまであんなに仲良かったのに 喧嘩でもしたのか?」


「バラシちゃいました。俺・・・あんまりレイ君がユウリちゃんにべたべたして腹立ったんで・・・

あいつ井川 薫と付き合ってたくせにユウリちゃんを・・・」

リュウも呆然として ユウリを振り返る。


「そうか・・・すまなかったな。ユウリ

こういっちゃあ 言い訳になるかもしれないけど 紀子さんに先に話をもちかけたら すっごく乗り気になってくれて・・・

ついひかり君まで巻き込んで契約させちゃったけど・・・ 

絶対お前は才能があるんだ。


あの井川なんて目じゃないよ!

お前がもっと本気でこの仕事取り組むようになったら正直に話そうと思ってたんだ。」


「ユウリちゃん やり方はひどかったかもしれないけど 女優の君は本当に光ってると僕も思う。

だって僕は入学した当時から君の大ファンなんだ。

さっきはレイ君がユウリちゃんを図々しく抱きしめて嫌がってるのに離さないから、頭にきて大袈裟に言ったけど。


君の事好きで大事に思ってる気持ち あいつには負けてないよ。

あんな奴にかかわったら綺麗で純粋な君が汚れちゃう。」


「やめてよ・・・もう 聞きたくない!」


うっうっ涙が止まらない。


「ひかり君 送るよ。今日は帰りな・・・」


リュウがひかりの肩をたたく。


「ユウリちゃんをひとりにして帰るなんて出来ません。

今日から僕も此処に泊まるって 朝リュウさんも賛成してくれたでしょ!」

リュウは「はぁっ」と深い溜息をついて


「俺達はこんなに熱が出るほどユウリを傷つけてしまったんだ・・・ 

この傷はあいつが戻ってこないと癒せないんだよ。」

とひかりを諭した。


「ユウリちゃん 僕はどこで間違っちゃったんだろう・・・

普通の高校生として君に告白していたら 

もっと違う結末になったのかな?」


ひかりがリュウに促されながらも振り向いてつぶやいたが


ユウリは無言でうつむき見送る事はしなかった。


(あたしって世間しらずだったんだな・・・勉強ばかりして子供で 料理もできなくて、だまされやすくって・・・最低。)


あとからあとから涙が出てくる。熱でうなされながらもまた深く寝入ってしまった。


翌朝になって午前中のうちにレイはリュウに伴われてマンションに戻ってこれた。


井川 薫が勝手にレイに持たせただけだという供述が大麻の入っていたビニールからも井川の指紋しか取れず、

間違いないということで割と短時間で開放されたのである。


「ただいま。」


「おかえり。」


さすがに疲れた顔のレイだったがユウリの顔を見てほっとしたように微笑んだ。


「ん?なんだかいい匂いがするぞ?」


「ふふっ ちょっと頑張ってお鍋作ってみたの 食べてみる?」


「「ええ!ユウリが作ったの?」」


リュウとレイがハモって叫ぶ。


「なに?あたしが鍋作ったら変なの!?」


「いや でも熱は大丈夫なのか?無理して頑張っちゃったんじゃないか?」


「ううん大丈夫 熱は下がったよ。ほら暖めなおすから食べよう。

おなかすいてるでしょ?大丈夫だったら・・・ちゃんとネットで調べて作ったから食べられるよ。」


ダイニングに入った二人はまた驚く・・・


「おまえ何回作り直したわけ?」


こげた鍋が二つ 野菜の砕けたのがゴロゴロ 一応片付けられてはいるものの 相当ユウリが奮闘したと思われた。


冷蔵庫をあけたレイが


「あ~あ何にも無いよ どんだけ?」


とリュウと目を見交わす。


「もう!とりあえず食べてみなさいよ!」


寝不足と熱が下がったばかりで慣れない事をしたものだから もうそれだけ言うとユウリもペタンと床に座り込んでしまった。


「ん?」とレイ。


「う うん。」とリュウ。


「見た目は不思議だが うまくないか?」


「そうだな なんでだろ?」


そういうと二人はガツガツ鍋をつつき出した。


「でしょう!絶対レイは戻ってくるって朝から色々作ってみたんだけど結局お鍋になっちゃった。

今度はもっとちゃんとした料理も作って食べさせてあげるね。

時々コツを教えてね レイ。」


「・・・おう。」


何故だかレイは顔を赤くして返事をした。


その後

マスコミ関係にも井川の事務所サイドから室塚サイドの方へ正式に迷惑をかけたと謝罪した事を発表したため レイ自身に非はなかったこととして報道された。


また関係者の口から井川が一方的に室塚に普段から付きまとっていたため 

室塚サイドはかなり迷惑がっていたとか、

新人いじめで有名だったということまで流れて 

逆に若い新鋭俳優に対して同情が集まったのである。


ドラマは井川の出演する部分を大幅に差し替えて、放映することと発表され 

今回の騒動が思わぬ話題を呼んでドラマはかなりの高視聴率となった。


すでに自宅からスタジオに通うようになって 学校へも普通に行くようになっている。


「佐々木さん 戻ってからのテストもトップだったね。すごいな!」


ひかりが呆れたように褒め称えた。


「ひかり君のノートのおかげだよ。」


あの後課外活動期間が終わって初登校した時に、ひかりが本当に芽衣を好きだと真摯に伝え、正々堂々とレイと張り合うと明言した。


また ユウリからレイを引き離そうとレイをマスコミや警察に売るような真似をしたことも正直にユウリに話してくれた。


それまで欺かれたことで傷ついていたユウリも

自分の母親も一緒になって企んだという事実もあったので 特にそれ以上は攻め立てず

自分が世間知らずだったのだと許す気持ちにもなったのである。


こうして校内でひかりとしゃべるようになると

他の男子もいままで高嶺の花と近寄りがたく思っていたのか 

気軽に話しかけるようになってきた。


男子ばかりでなく 女の子たちも女優をやっていることについてやはり憧れがあるのだろう色々裏話などを聞きたがる。


これまで人付き合いが苦手と思っていた芽衣も 

傷つけられる事もあるけれど いろんな人と触れ合う事は楽しい事もうれしい事もいっぱいあるのだということに 気づいたのである。


「あ また鮎川くん 芽衣とこに行ってるよ。あからさまだな~。」


「そ 諦めないの 懲りずに攻めまくるんでよろしく。」


そうはいってもひかりは結局芽衣に対してさほど手荒な真似をした事はなかった。


いたって紳士でなにかと忙しい芽衣を影からサポートしてくれる。

それは同性同士の友情のようであり 性的な意味合いで見られたり 接してきたりはしてこないのであった。


たしかに長い事こっそり芽衣を隠し撮りしていた事実はあるのだが それも芽衣に対する憧れから生じたものじゃないかと 

あのⅤの爽やかな一番女の子としてかわいらしいシーンばかりを写していたことを思い出して 複雑なひかりの胸中を推し量っているユウリだった。


(レイくんの私に対する目付きとは明らかに違う・・・と思う。)  <ちょっと赤面


職場に行かないとレイにはなかなか会えなくなったし、事務所の意向でおおっぴらに恋人としては振舞えない。


「はぁ・・・もうすぐドラマも撮影も終わっちゃうな。

レイもますます忙しくなってなかなか二人っきりで会えないよね。」


撮影の合間にお茶を飲みながらユウリが溜息をつき、(あれ?今あたしすごく大胆なこと言っちゃったような・・・赤面)気づいて固まる。


そっと目を上げるとレイがにやっと笑って


「監督から聞いてないの?パート2の企画があるらしいよ。

今度はひかりがけっこう絡んでくる場面も多いらしいけどね。」



その辺はちょっと面白くないらしい・・・


「本当!知らなかったぁ。」

リュウったら全然そういうこと教えてくれないんだから・・・


「それよりお前大丈夫?」

レイが心配そうに顔を覗きこむ。


「何が?」


「明日は俺達ベッドシーンあるんですけど 心の準備は出来てるかってこと!」


「あ・・・」


「・・・そうだった。」


思わず全身赤くなるユウリ。


「まあこんなのたいしたことないよ 他の奴が相手なら緊張するだろうけど 俺が相手だろ。

しっかし兄が妹をって設定は結構ハードだよなぁ。」


たしかにストーリーは佳境にさしかかり、兄の恭介は妹のひばりに対する特別な感情を隠す事はしなくなっていた。


それはひばりが実は本当の妹ではなく お互い連れ子の再婚で義理の兄妹になっていたということを兄が明らかにしたからである。


「ひばりはまだ恭介のことお兄さんとしか見てないから その温度差を演じるのが難しいよな。」


「うん あたしに出来るかな・・・ 

どういう気持ちでひばりが兄に体を任せるのか、まだいまひとつわかってないんだよね。」


「そうだな このシーンがうまくいくかどうかでパート2の企画にもかかってくるからな。」


「馬~鹿! そんな余計な事言ったら、益々ユウリのプレッシャーになるだろ。」


いつのまにか地獄耳のリュウがレイの頭をポカッと叩く。


「ユウリ 今日から明日の撮影までは体に線のつかないゆったりした服装でいなきゃならないからな。

今日はうちに泊まりだ。

エステで柴ちゃんにも来てもらうから。」


「え~~~!そこまでするの?」


ますます赤くなったり 青くなったりするユウリ。



「プロなら これくらい当たり前だ。

紀子さんにも承諾してもらってるからな。」


(いつのまに・・・)


紀子は昔から芽衣のことを芸能界にと夢見ていたらしく 

小さい頃はちょっとしたCMや広告モデルなどをさせていたそうだ。


全然芽衣自身は覚えてないがそれなりに、こういう世界に抵抗がないようなのだった。


「じゃあな 柴ちゃんたのむぞ! 俺は明日の朝迎えにくるから。」


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