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ブランシェの街

「まずはギルドに行って情報を集めよう。Dランクダンジョン『霧の洞窟』についてしっかり把握しておかないとな」


 シロンもその言葉に応じるように吠え、二人は街の中へと進んでいった。ブランシェの街は、エルバードに比べてやや小さめだが、活気があり、特に冒険者たちの姿が目立つ。霧の洞窟を目指す者たちが多いため、装備を整える店や、ダンジョンの情報を提供する場所がたくさん存在している。


「さて、まずはギルドに行こうか」


 シオンはブランシェの冒険者ギルドを目指して歩き始めた。ギルドの建物は街の中心に位置し、周囲には同じようにDランクダンジョンを目指す冒険者たちが集まっていた。


 ギルドの扉を押し開けると、中は活気に満ちていた。シオンは受付に向かい、霧の洞窟の浅い階層で受けられる依頼を探すため、近くのカウンターに並んだ。そこに座っていたのは、優しげな笑みを浮かべた女性だ。


「こんにちは、依頼を探しているんですが、少しお話を伺えますか?」


 女性は穏やかに頷いた。


「もちろんです。何か特定の依頼をお探しですか?」


 シオンはふと女性の名札に目をやった。そこには「リリーナ」という名前が記されていた。


「リリーナさん、霧の洞窟の浅い階層で受けられる依頼について知りたいんです。僕はまだDランクになったばかりなので、あまり難易度が高くないものがいいのですが……」


 シオンが話しかけると、リリーナはにっこりと微笑みながら、いくつかの依頼書を差し出した。


「こちらが現在受けられる依頼になります。浅い階層での討伐や採取が多いですが、ご希望のものはありますか?」


 シオンは依頼書を一つ一つ確認し、比較的簡単なフォグバットの討伐依頼に目を留めた。討伐数も少なく、シロンと一緒なら問題なくこなせそうだ。


「これなら、今の僕でも大丈夫そうだな」


 シオンは依頼書をリリーナに差し出し、受注する意思を伝えた。リリーナは笑顔で頷きながら、手早く受注手続きを進めてくれる。


「では、こちらの依頼書にサインをお願いします。討伐が完了したら、報告書も忘れずに記入してくださいね」


「分かりました。ありがとうございます、リリーナさん」


 シオンは依頼書にサインをし、受注が完了したことを確認した。そしてリリーナから受け取った依頼書を丁寧に折りたたみ、バッグにしまう。シロンがそばで静かに様子を見守っていた。


◇ ◇ ◇ 


 シオンはギルドを後にし、装備の整備をするために鍛冶屋を探すことにした。霧の街ブランシェでは、ダンジョン攻略をする冒険者たちが多く、鍛冶屋も街の至る所に存在しているだろうと考えていた。シオンはシロンと共に、街の通りを歩きながら鍛冶屋の看板を探した。


「鍛冶屋か…エルバードではガルドに世話になったけど、ここにも腕の良い鍛冶師がいるといいな」


 シオンはそんなことを考えながら街を歩く。シロンもその隣で鼻をクンクンと動かし、周囲の匂いを探っているようだ。霧に包まれたブランシェの街並みは、幻想的でありながら、どこか静けさの漂う場所でもあった。


 しばらく歩いていると、通りの先に「ブレイズハート工房」という看板が目に入った。木製の看板には炎をイメージさせるデザインが彫られており、力強さと情熱を感じさせる。シオンはシロンと一緒にその鍛冶屋へ向かい、入口の大きな扉を押して中に入った。


 店内には、所狭しと様々な武具や防具が並べられていた。店の奥では、大柄でたくましい男が鉄を打ち鳴らしており、鍛冶屋特有の音が響いている。男はシオンが入ってくると、手を止め、シオンに目を向けた。


「いらっしゃい。今日はどうした?」


 店主は作業を中断し、カウンターの方へと歩いてきた。シオンは鉄剣を見せながら答える。


「装備の整備をお願いしたいんですが、お願いできますか?」


「もちろんだ。俺はブライアン、この店の鍛冶師だ。剣を見せてくれ」


 店主のブライアンはシオンの剣を手に取り、じっくりと観察した。目を細め、軽く剣を振ってその感触を確かめると、満足げに頷いた。


「なかなか良い剣を持っているな。手入れも悪くない。だが、まだ強化できる余地があるな」


 シオンはブライアンの言葉に耳を傾けながら、彼の腕前が確かだと感じ取った。シロンも警戒心を解いた様子で、静かにブライアンを見つめている。


「この剣をもう少し強化できるなら、お願いしたいです」


「よし、任せておけ。防具も見ておこうか?」


「はい、防具もお願いします」


 シオンは強化革の鎧もブライアンに手渡し、彼は鎧を手に取りながらカウンターの裏で作業を始めた。鉄を打つ音が再び店内に響き渡り、シオンはその音を聞きながら店内で待つことにした。シロンは店の隅に静かに座り、周囲を見回している。


「この店、ブレイズハート工房って言うんだな」


 シオンはふと、店の名前をつぶやいた。力強くも温かみのある名前だ。彼は店内を見渡し、他の冒険者たちが武具を受け取っている様子を目にした。店内には活気があり、鍛冶屋の腕を信頼する冒険者たちが集まっているのがわかる。


 しばらくすると、ブライアンが整備を終えた鉄剣と鎧をシオンに手渡してきた。


「さあ、これで完了だ。剣はさらに鋭くなり、鎧も防御力が上がったはずだ。試してみろ」


 シオンは受け取った鉄剣を手に取り、その重さやバランスを確認した。確かに剣は前よりも軽く、振りやすさが増している。鎧も丈夫で、しっかりとした防御性能が感じられた。


「すごいです、前よりも格段に使いやすくなってます!」


「それはよかった。お前のような若い冒険者がここまで整った装備を持っているとはな。将来が楽しみだ」


 シオンはブライアンに感謝の言葉を述べ、シロンと共にブレイズハート工房を後にした。強化された装備を手に、シオンは街の霧の中を歩きながら、次の冒険に向けた準備が整っていく感覚を味わっていた。

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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