プロローグ
「……ここは……どこだ?」
目を覚ました瞬間、史恩は自分がどこにいるのか全く理解できなかった。周りは白い光に包まれ、何もない空間が広がっている。そして、ただ一人の老人が目の前に立っていた。
「やっと目が覚めたか。お前が史恩だな」
老人の声は静かで落ち着いていたが、どこか重みを感じる。史恩は困惑しながら、状況を把握しようと必死になった。
「あなたは誰ですか? ここは……一体?」
「私は神だ。この場所は、お前が亡くなった後の世界だ」
「死後の世界……?」
史恩は頭を抱えた。記憶を辿ろうとするが、ぼんやりとしていて、何が現実だったのか、何が夢だったのか曖昧になっていた。だが、確かに覚えている。自分は30歳で過労死したはずだ。長時間働き、家族も友達もおらず、孤独な毎日……気づいた時には、机の上に突っ伏していた。それが最後だった。
「そうだ、お前は過労死した。だが、私はお前の生涯を哀れに思い、新たなチャンスを与えようと思っている」
「新たなチャンス?」
史恩は思わず神の顔を見つめた。どういうことだ?死んでしまったのに、これ以上何があるというのか?
「お前を異世界に転生させてやる。その世界は、こことは違い、魔法やスキルが存在する。そして、もう一度新たな人生を歩むことができる」
「……転生……異世界?」
史恩は驚きつつも、心の中で興味が湧いてきた。異世界? そんなファンタジーのような世界に自分が行けるのか?
「ただし、お前には一つ選択肢を与える。異世界で生き抜くためにはスキルが必要だ。お前は一つだけスキルを選ぶことができる。そのスキルを使い、お前は新しい人生を築いていくのだ」
「スキル……か」
史恩は考え込んだ。自分に合うスキルとは何だろうか? 前世では特に際立った能力があったわけではない。働き詰めで、趣味らしい趣味もなかった。だが……ひとつ、思い出したことがあった。
「動物……俺、昔犬を飼ってたんです。あの犬、すごく懐いてくれて……」
「なるほど、動物が好きか。では、『テイム』というスキルはどうだ? 動物や魔物を手懐け、共に戦うことができるスキルだ」
「テイム……? それなら、いいかもしれない」
史恩は少し迷ったが、動物が好きだった自分には最も適していると感じた。犬を飼っていた頃の懐かしさと、再び動物と一緒に生きていける喜びが胸に広がる。
「よし、テイムのスキルを選びます」
神はゆっくりと頷いた。
「では決まりだ。お前はこれから、異世界に10歳の孤児として転生することになる。新たな人生だ、存分に楽しむといい。」
「10歳……孤児?」
史恩は驚いた。再び孤児からやり直すのか……。だが、今回はスキルがある。きっと前世とは違う生き方ができるはずだ。自分の道を、自分で切り開くことができる。
「心配することはない。お前にはスキルがあるし、強くなれるチャンスもある。ただし、どんな人生を歩むかはお前次第だ。一月分ほどの生活費を与えるので後ほど確認するといい」
「分かりました。やってみます」
史恩は決意を固め、神に向かって深く頭を下げた。神は微笑み、手をかざすと、史恩の体が軽くなり、視界がぼやけ始めた。
気が付くと、史恩は異世界の片隅に立っていた。目の前には見慣れない建物や風景が広がっており、自分が本当に10歳の少年の体になっていることを実感した。体は軽く、すべてが新しい。
「ここが……俺の新しい世界か」
シオンは目の前の現実をゆっくりと受け入れつつあった。そして、今の自分がどういう状況にあるのかを確認するため、懐に手を入れた。すると、指先に硬貨の感触が伝わってきた。
「これ……銀貨か?」
手を開くと、そこには輝く銀貨が20枚ほど入っていた。神が言っていた「一月分の生活費」というのはこの銀貨のことだろう。見た目からして、質素な生活には十分すぎる額だと感じた。
「とりあえず、しばらくはこれで生活できるな……まずは、冒険者ギルドに行ってみようか」
史恩はゆっくりと周りを見渡した。異世界の空気は澄んでいて、まるで冒険が始まる予感がする。まずは、生活の糧を得なければならない。冒険者としての生活が、最も現実的な選択だろう。
「そうだ、ステータス確認とかできるんじゃないか?」
試しに心の中で「ステータス」と唱えてみる。すると、目の前に透明なパネルのようなものが現れた。そこには、自分の状態やスキルが詳しく書かれていた。
名前: シオン
年齢: 10歳
職業: テイマー(初心者)
レベル: 1
HP: 50/50
MP: 30/30
力: 10
敏捷: 12
知力: 14
スキル: テイムスキル(初級)
「これが……俺のステータスか。名前はこの世界に合わせたものになっているのか。『テイムスキル』がちゃんとあるな……でも、やっぱりレベル1なんだよな」
まだ力も弱く、テイマーとしての実力もこれからだということが一目で分かった。だが、この世界での新たな冒険が始まることを考えると、シオンの胸は少しだけ高鳴った。
「よし、まずは冒険者ギルドに行って、登録しよう」
シオンは自分が置かれた状況を考えながら、冒険者ギルドの建物に向かった。冒険者としての第一歩を踏み出すことが、新たな人生を切り開くための最初の一歩だと信じていた。
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