その⑤
「とりあえず、これでサラちゃんの独り立ち出来る訳だけど――」
「ソフィーさん?」
「私やリリアさん。みんながサラちゃんの味方だよ。でも最後は自分で解決しないといけない。独り立ちするってそう言うことだからね」
「はい」
「でもこれだけは約束して。もう無理って思ったら必ず私に言うこと」
「……ソフィーさん」
「サラちゃんは私の一番弟子。私の大切な後輩なんだからね」
「ソフィーさん……はいっ」
うん。良い笑顔。ちょっと湿っぽくなったけどサラちゃんのお祝いはまだ始まったばかり。いまは私の可愛い後輩の頑張りをこれでもかって言うくらい称える時です。
「それじゃ、もう一回、乾杯しよっか?」
「そうだな。乾杯の音頭は……エド、おまえがやれ」
「俺ですか⁉ ここはソフィーじゃ――」
「私はさっきやったよ?」
「そういう問題じゃないだろ――ったく、わかりましたよ」
ブツブツ文句を言いながらもお酒の入ったグラスを手に立ち上がるエド。それに合わせて私たちも手にグラスを持ち立ち上がります。滅多に飲まないお酒に少し酔っている私はとても気分が高揚しています。それはお酒のせいではなく、大好きな後輩の晴れ舞台に同席できた嬉しさから来た感情です。
「えぇ~。それじゃ、サラの独り立ち……」
「エド固いよ~」
「あーハイハイ。それじゃ――」
「「「「乾杯っ」」」」
軽くグラスを打ち付け合う私たちは歓喜し、これまでのサラちゃんの努力を称えます。
思ってたよりだいぶ早くこの時を迎えたけどそれはこの子がそれだけ優秀な薬師だと言うこと。師匠としてはなによりも嬉しいことです。
(ほんと、よく頑張ったね)
きっと私が薬師試験に合格した時の師匠もこんな気持ちだったのかな。
私はルークさんと違ってダメダメな師匠です。それでもサラちゃんは私を師と慕い、拙い私の指導を自分の物にしました。
サラちゃんが来て2年目の秋。初めての後輩育成は無事ゴールを迎えよう落としていました。




