その④
「だからヘビに噛まれたなんて余計な文言を入れたのか」
「解毒薬を処方無しで飲むきっかけは必要でしょ?」
「なるほど。確かにヘビなら道端で噛まれる可能性が十分あるな」
「私も無理矢理感があるなってのはわかってたんですけどね」
苦笑いする私はもっと簡単な試験にすることも出来たと言いますがそれでは意味がありません。少し無茶な設定にしてでも容易に答えを導き出せる課題にしたくはありませんでした。
「あの、ソフィーさん?」
「なに?」
「その……もし、わたしが正しい選択を出来ていなかったら、その時はどうしたんですか」
「うーん。それは考えていなかったかな」
「ええっ⁉」
「だってサラちゃんは私の弟子でしょ?」
「で、ですけど……」
「私は信じてたよ。絶対、正しい答えを出してくれるって」
それにもし間違った選択をしたとしても薬師試験とは違い、私が見捨てない限り何度でも挑戦できるんです。
「さすが私の弟子だね。もう教えることはなにも無いよ」
「ソフィーさん……」
「これまでよく頑張ったね」
「……はいっ。ありがとうございます!」
「それは良いけどさ?」
「どうしたの?」
感動的な雰囲気を壊すようなエドのつまらなそうな表情。なにが不満なのか分からないけど旦那様はジト目で私を見つめています。
「おまえ、サラになにか教えてたっけ?」
「教えてたよっ⁉」
「そ、そうですよ! ソフィーさんは色んなことを教えてくれました!」
「お、おう」
「ソフィーさんはわたしの大切な師匠です。悪く言わないで下さいっ」
「わ、悪かった。まさかサラが言い返すとは思わなかったな」
予想外の展開に苦笑いで誤魔化すエドは珍しく私に助け舟を求めます。このまま突き放しても良いけど、それでは少し可哀そうな気もするから助けてあげようかな。




