その⑤
◇ ◇ ◇
「まさかだったな」
「うん。私やリリアさんの上を行ったね」
「いくら食べられるからって普通食べるか?」
「私は食べないね」
夜――みんなが帰り、夫婦の時間を過ごすリビング。私はエドの問い掛けに首を振り、サラちゃんが見せた意外な一面を思い返します。
結論から言えばサラちゃんはリットさんから薬草を仕入れることになりました。値段に関しては少しだけ首を突っ込ませてもらいましたが仕入れる薬草の種類や量は彼女が決めました。
「おまえの後輩だから多少のことじゃ驚かないけどさ、想像してた以上におまえに似てしまったな」
「ねぇ、それ褒めてないよね」
「はいはい。悪かった。それで、おまえとしてはどうなんだ」
「どうって?」
「サラに任せきりだったが良かったのか」
「サラちゃんの店で使う薬草だからね。私が出る幕じゃないよ」
コヤックへ出す店はサラちゃんに全て任せます。なので私はリットさんとの商談に口は出さないと決めました。まぁ、値段交渉だけは意見を出しましたが最終的に決めたのはサラちゃんです。個人的には割高な印象が残りましたがセント・ジョ―ズ・ワートからコヤックへの輸送費を考えれば良識的な額だと思います。
「とりあえず良かったな。薬草の調達先が決まって」
「うん。あとはサラちゃんの実家の改装が終われば準備完了かな」
「そっか」
「最初は私が師匠になるなんて思ってなかったけど、あの子が来てくれて良かったよ」
ウチに来た頃のサラちゃんはオドオドしていて自信なさげな感じでした。複数の患者さんを前に処置の優先順位を決められず感情に任せた結果、私に怒られたこともありました。そんな彼女もいまでは私の代わりが務まるほどに成長しました。あとはあの子が活躍できる場所を作るだけです。
サラちゃんの独り立ち計画はいよいよ最終段階。サラちゃんがいなくなるのは寂しいけど、彼女の夢を叶える為にも一日でも早く独り立ち出来るように準備を進めよう。そう思う私でした。




