表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先輩薬師の後輩育成日記  作者: 織姫
第3話 良いコンビ?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/91

その③

                 ◇ ◇ ◇


「凄いな。麻酔薬って難しんだろ?」

 いつもの夜のティータイム。エドがクッキーを齧りながら訊ねてきました。ちなみに今夜のお菓子はセント・ジョーズ・ワートに行っていたバートさんからの差し入れです。

「精密薬の中で難しい方だね。一発で成功するとは思ってなかったよ」

「おまえより腕が良いかもな」

「なによそれ」

 いつものことだけどエドの売り言葉を買ってしまう私は「そんなことないもん!」と言い返します。

「経験値は私の方が上だからね!」

「わかってるよ。いちいち噛みつくなよ」

「嗾けておいてよく言うわね――って言うか!」

「なんだよ」

「最近、ルークとお散歩に行くかお昼寝するかのどっちかじゃない⁉」

「そーだな」

 またそれかと言わんばかりに適当な相槌しか打たないエド。それでも私が言いたいことはちゃんと分かってるみたい。明日はちゃんと店番すると約束してくれました。

「明日はソフィーが一緒に散歩行けよ。ったく、ルークと遊びたいならそう言えよ」

「そうだけどこの村の薬師は私しかいないでしょ」

「サラもいるから大丈夫だろ」

「まだ新米薬師だよ」

「おまえがそれ言うか?」

「言えないね」

「ま、薬師が二人いるっていうのは安心だよな」

「なに村長みたいなこと言ってるのよ」

「村長、俺なんだけど」

 たまにやってしまうこのやり取り。エドが村長になったのは私と結婚してしばらくしてのこと。彼のお爺さんである前村長さんが体調を崩してすぐでした。

「もう2年だっけ」

「そうだな。おまえと結婚した時もだけど、ルークが生まれた時はすごく喜んでたよな」

「そうだね。初孫ってそういうものなんじゃないかな」

「かもな。けど、もう一人くらい見せたかったな」

「え、ちょっと急になに言うのよ⁉」

 夫の思わぬ発言に顔が熱くなるのが分かります。けれど、そんなつもりで言った訳ではないらしく、すぐに「ちげぇよ」と反論してきました。

「爺ちゃんがさ、死ぬ前に『女の子も見たかった』って言ってたんだ」

「そうなの?」

「おまえのことを孫娘みたいに思ってたからな。生まれたらおまえに似た可愛い娘なんだろうなって」

「そ、そっか」

 師匠の思い付きでやって来た私をそんな風に思ってくれていたんだ。私って本当に幸せ者なんだ。

「どうした?」

「ううん。なんでもない」

「そろそろ寝るか?」

「そうだね。ねぇ、エド?」

「なんだよ」

「今度“仲良く”しよっか?」

「ちょっ、なに言ってんだよ」

「エドが言ってきたんだよ?」

「だからそういう意味じゃねぇって」

 なんでそこまで否定するかな。夫婦なんだし当然のことだと思うんだけどなぁ。

「コウノトリがどうとか言ってたやつがよく言うよな」

「いい加減忘れてくれないかなっ」

「はいはい。ソフィー?」

「なによ」

「今度時間作ろうな」

「……もう。仕方ないなぁ」

 自分から言い出したことなのにエドの誘いで簡単に機嫌が直ってしまうあたり、喧嘩することもあるけどやっぱり私は彼のことが好きみたいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ