その③
「先に言っておくがアリサより値は張る」
「それは分かっています。問題は薬草の質です。質が良いのであれば多少割高でも仕方ありません」
「質なら問題ない。セント・ジョーズ・ワートで一番の質だと保証しよう」
「それは嬉しいですね。でも、あとはサラちゃんが戻って来てから話しましょうか」
「?」
「リットさんはサラちゃんに会いに来たんですよね。ならば彼女に品定めしてもらうべきだと思います」
少し意地悪な言い方かもしれませんが今回の主役はサラちゃんです。私が決めるべきではありません。
(これは私の仕事じゃない。サラちゃんの仕事だよね)
サラちゃんのことだから私が良いと言えばリットさんと契約を結ぶと思います。でもそれではダメなんです。これから先、私の手を離れたら全て自分一人でしなければなりません。いまはその練習です。
「私はこの件に関してこれ以上の口出しはしません」
「なるほど。これも独り立ちの練習と言うことか」
「はい。なのでサラちゃんがダメと言えばそれまで。申し訳ないですが今回はそう言うことでお願いします」
「構わないよ。僕も押し売りするつもりはない。しっかり見定めて決めてくれれば良いよ」
にこやかに微笑むリットさんは扱う薬草に余程の自信があるみたい。優しい笑顔の裏に「他で買うと後悔する」という圧を感じ、アリサさんの知り合いと言ってもやはり商人なんだなと思いました。




