その①
夏も終わりに近づくある日のことです。往診を終えて店に戻ると見知らぬ男性が私の帰りを待っていました。
「やぁ、はじめまして」
「えっと……」
大きな旅行鞄を携えた40代半ばくらいの男性。心当たりはありませんが、留守談を頼んでおいたエドが招き入れたってことは私かアリサさん、もしくはサラちゃんに用があると言うことかな。
「君は――ソフィアさんだね」
「は、はい。あの、あなたは……」
「リットだ。リット・ドーヴェン。セント・ジョーズ・ワートで薬草商をしている」
「薬草商……もしかしてアリサさんの?」
「そうらしい。サラに会いに来たんだってさ」
「あ、エド! 留守番サボってなにしてたのよ」
「ルークを寝かせてた。つか、お客さんの前だぞ」
リットさんの背後、診察室の中から出てきたエドは呆れ顔。けれどリットさんは気にすることなく、笑顔で「聞いていた通りだ」と言いました。
「アリサから聞いてはいたが、その通りのようだ。2人は仲が良いんだな。ところでサラと言う薬師は何処だい?」
「サラちゃんならアリサさんと薬草を採りに行っています。そろそろ帰って来ると思いますよ」
「そうか。アリサは元気にしているかい?」
「はい。アリサさんが戻って来てくれて助かってます」
「それは良かった。セント・ジョーズ・ワートにいる間、ずっと君たちの話をしていたよ」
よほど村で過ごした日々が楽しかったのだろうと言うリットさんは改めて私を見つめ、それはまるで薬師としての素質を見定めているようでした。




