その②
「ごめんなさい。言うのを忘れてた」
「だろうな。あのさ、サラを独り立ちさせるって決めたのはおまえだろ」
「……うん」
「リリアさんも最初からそのつもりだったんだと思うけどさ、俺くらいには教えろよ」
「……ごめんなさい」
今回は私が悪いです。エドの言う通り、最初から改装費用を出してくれるつもりだったとしてもちゃんと話しておくべきでした。
「ま、出来るだけ予算は抑えるべきだろうな。その辺は大丈夫なんだろ」
「うん。空き物件を買ったり、一から建てるよりずいぶん抑えられるよ」
「最初からこうすれば良かったんじゃないのか」
「そうなんだけどね、やっぱり先輩として見栄を張りたいって言うか、師匠にしてもらったことをしてあげたいんだよね」
何度も言いますが師匠のお陰でいまの私があります。私が薬師試験に合格することを見越して師匠はこの店を買いました。あの人の弟子として、やっぱりサラちゃんにも同じことをしてあげたい気持ちがあります。
「それに、サラちゃんならきっと腕の良い薬師になるから。だから早く独り立ちさせてあげたいんだと思うの」
「たしかにおまえの弟子ならそこら辺の薬師より腕は良いかもな」
「もしかして褒めてる?」
「調子に乗るな。で、どのくらいで完成するんだ」
「必要な設備は手紙で伝えてはいるけど、部屋の広さに合わせて設計が必要だから――早くて今月末くらいかな」
あとは調薬道具や薬草の仕入れがあるけど、薬草によっては収穫の時期を過ぎている物もあるのでこっちは少し時間が掛かりそう。王都の薬草商なら乾燥させたものを扱ってると思うけど、王都価格で割高になるからウチの在庫を分けようかな。
「それにしても本当に独り立ちさせるなんてなぁ」
「まだそれ言うの。サラちゃんだっていつかは自分の店を持つことになるんだよ。少し早まっただけだよ」
「そうかもしれないけどさ。すごい度胸だよな。おまえもサラも。ほんとすげぇよ」
「このくらいの度胸がないと薬師は務まらないよ」
いつものことだけどエドは仕事のことに関しては私に一目置いてくれています。それ以外のことは持ちつ持たれつと言うべきか、お互い言いたいことを言って喧嘩することもあるけど薬師の名を貶すようなことはしません。別に驕るつもりはないけど、エドの態度を見れば小さな村に薬師がいる。それが如何に珍しいことなのかよくわかります。




