その①
それはサラちゃんに例の計画を明かしてから半月ほど経った8月のある日のこと。
前略 ソフィア・ローレン様
娘がお世話になっています。この度はサラの夢を叶えるために尽力頂きありがとうございます。
ご相談頂いた件ですが、私たちに出来ることならば喜んでお手伝いします。娘の夢は私たち夫婦だけでなく、村全体が長年願っていたことでもあります。それを叶えようと奔走して下さるソフィアさんには感謝しかありません。
ご相談頂いた件については送って下さった資料を参考に進めています。不明な点はお尋ねするかもしれませんがよろしくお願いいたします。
「――追伸。引き続き、サラのことをよろしくお願い致します、か。おまえ、いつの間に話進めていたんだよ」
サラちゃんのご両親から届いた手紙を手に呆れ顔のエドは困ったように頭を掻いています。
「良い物件が見つからないからって、ほんとにサラの実家を改装するとは思わなかったぞ」
「サラちゃんにも話しちゃったからね。もう後には引けないよ」
「どうするんだよ。これ、それなりに費用が掛かるんだろ」
そっか。エドは改装に掛かるお金の心配をしてるんだ。最低限の設備に抑えたとしても居室を診察兼処置室へ改装するにはそれなりの金額が必要です。それをサラちゃんのご両親に負担してもらう訳にはいきません。
要するに私が負担することになるのですが、費用の心配する必要はありません。ちゃんと資金繰りも目途を付けた上で考えたプランなんです。
「私の預金証書を崩すし、リリアさんも少し出してくれたの」
「ほんとに崩すのかよ……って、リリアさんが⁉」
「うん。半分出してくれるって」
私の貯金を少しでも多く残すためとリリアさんが出資してくれることになったのは先週の話。そう言えばエドにこのことは話していませんでした。初めて聞いたと言う彼の顔は険しく、私は素直に言い忘れていたことを謝りました。




