その③
◇ ◇ ◇
その日の夜。ルークを寝かし付けた私はリビングでエドと久しぶりに真剣な話し合いをしました。議題はサラちゃんのこと――というより、彼女の故郷であるコヤックに店を出すかどうかという、いまの私たちにとってすごく難しい問題。一応は私の考えに耳を傾けてくれるエドだけその顔は厳しく、とてもいい返事が聞けそうにはありません。
「なぁ、ソフィー?」
「なに?」
「仮にだ。コヤックに薬局を作るとして、当てはあるのか」
「正直無いよ。運転資金も確保するのが難しいと思う」
ここで嘘を付いても意味が無いので正直に話す私。なんの当てもなくコヤックに店を出したいと言う妻を旦那様はどう思うでしょうか。少なくともエドは良い返事を出しそうになく、今回ばかりは反対だと言わんばかりの表情をしています。
「サラちゃんは村に薬局を作りたいから薬師になった。あの子の師匠としてそれは叶えてあげたいの」
「…………」
「無茶苦茶なことを言ってるのはわかってる。ごめんなさい」
「リリアさんはなんて言ってるんだ」
「エドが良いって言うまで相談には乗らないって。これは二人で決めることだろうって」
「そっか」
エドは嫌な役押し付けられたなと愚痴をこぼし、厳しい表情で腕組みをします。こんな姿のエドは初めてです。
「なぁ、ソフィー」
「うん」
「サラは本当に独り立ち出来るレベルなのか」
「一般的な薬は作れるし、診察も出来てる。私は問題ないと思ってる」
「どのくらい掛かるんだ」
「え?」
「店だよ。薬局作るのにどのくらい必要なんだ」
「それって……」




