その①
王都から戻って数週間。おなかの子への負担を考え……と言うか、半ば強制的に安静を命じられている私は暇を持て余していました。
「……患者さん診たい」
このところ患者さんと接していない私はため息交じりに呟きました。
「往診行きたい……」
おなかがだいぶ大きくなった私を安静に過ごさせるためと患者の対応は往診も含め、すべてサラちゃんが行っています
「ルークの時はまだ往診行ってたのにみんな大袈裟だよ」
身体に負担が掛かるから休めとエドやアリサさんから言われた私は書斎で医術書を読み漁る毎日。なんだか隠居生活を送っているような日々に窮屈に感じつつ今日も朝からずっと書斎に籠っています。
「おまえは患者相手だと無茶するからな。少しは大人しくすることも覚えろ」
背後から聞こえた声に振り返るとルークを連れたエドが呆れ顔で私を見ていました。
「ルークが一緒に遊びたいみたいだぞ」
「おさんぽいこ?」
「お散歩?」
「うん。ママといきたい」
「だとさ。ほら早く準備しろ」
あとは任せたと言わんばかりにルークを私に預けるエドはそそくさと書斎を出て行きます。きっと外に出るのが面倒だから押し付けたのだろうけど、早く散歩に行きたいとせがむ息子の前ではとてもそんなことは口に出来ません。
「ママ、はやくいこうよ」
「そうだね。お散歩行こっか」
「うんっ」
やっぱり愛する息子の笑顔はたまりません。いつもは私の仕事や身体のことを考えてエドがこの子の相手をしてくれているけど、今日は私も思う存分この子と遊ぶことにしようかな。




