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共鳴せよ

 プロローグ


 いわゆる自分は、若者という世代だ。人生の折り返し地点にも立っていないこの時期に、人は死ぬことについて考えるのだろうか。生きている人間が経験できない唯一のことである、死。どんなに抱えきれんばかりの富を得ても、どんなに響き渡る名声を得たとしても、死は、誰にでも刻一刻と近づいており、いずれは背中にベッタリと張り付き、それに飲み込まれる。



 死ぬ時って、怖いのだろうか。心細いのだろうか。寒いのだろうか。辛いのだろうか。そして、どのくらい、痛いのだろうかーー。



 横隔膜を使って大きな深呼吸をしたあと、ゆっくりと俺は顔を上げる。すると、鏡の奥にいる男と目が合う。彼は、俺の方を鋭く睨んでいる。その目は濁っているようにも思えたし、涙で濡れているようにも思えた。


『これから行うことに、躊躇いを淡くでも覚えてはいけない。赤黒く焦げたステーキに一刀入れるような、そんな潔い決意がなくてはいけない。いや必要だ』


 鏡の奥にいる彼はそう言っているようだった。


「わかってる」


 彼から目を逸らす。握った拳が、洗面台の上で震えている。唾をごくりと飲むと、喉仏が大きく縦に動いた。

 わかってる。知っている。どんなことを犠牲にしても、俺が殺すしかないんだ。

 あぁ、頭が熱い。血が上るとはこのことなのか。それとも、奥にあるシャワー室から漂う、シャワーの蒸気のせいなのか。


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