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異世界転移される側  作者: 上野結月
1/1

終わりまでの始まり方。

はじめまして。

今回の小説は、僕が行ってみたい異世界への憧れであり、妄想です。

この世界はこうで、こんな仕組みがあって、こんな人達がいて。

そんななんでもない妄想冒険譚を書き連ねて行こうと思ってます。


ちなみにもう終わり方は決めてますので、それまでを目標にして物語を考えてます。

なんてことの無い朝だった。


「ぁあ〜…」

ガラスの外の小さな空。

カーテンで仕切った外界から、早起きな小鳥たちが近くの木で鳴き始める。


それで起こされるのも慣れ、今ではお金と気力のかからない音鳴き時計(サウンドクロック)の代用としている。

雨の日なんかは起きれないことも多々あるけど。


布団を押しのけ、バランスの取れない身体を無理やり立たせた。

丸太に刺さっているナイフの柄から革の上着をとり、重い瞼を乗せたまま自室のドアを押す。


師匠は朝に弱いから、洗濯も朝ご飯の準備も全て私の仕事だった。

バスケットに溜まった衣服を近くの川で洗い、帰り道ついでに食べれそうな肉茸(ニクダケ)や山菜を採って、朝ご飯を作る。


朝の仕事は別にやりたいわけでは無いが、自主的に選んだ。

その訳には師匠の存在があった。

彼曰く「この土地を調べに来た研究者」らしく、起きてから寝るまでのほとんどの時間を、私には分からない研究に費やしている。


寝ている時以外に休んでいるところを見たことがないが、よく気分転換だ、と言って私に弓と体術の稽古をつけてくれる。

研究に入り浸る前は冒険者だったらしい。

その頃の話も聞こうとしたことがあったが、何故かとても悲しそうな顔をしてやんわりと断られる、私もいつからか気にならなくなった。


「おはよう。」

しばらくしたら、翠玉色(エメラルドグリーン)の目を擦りながら亡霊のような師匠が現れた。

船を漕ぐボサボサの頭が、何度も壁にぶつかる度に笑ってしまう。


寝惚けた彼と同じ食卓を囲み、皿洗いを済ませたら「いってらっしゃい。」とまだ眠そうな緩い声を背中に受け、弓と本とペンを持って森へ行く。


心地のいい空気で肺を浄化する度に口角が少し上がる。

目的地までの少しの散歩道。

いつもより歩幅を広くして歩き、木の隙間をぐんぐんと抜けていく。


師匠にはいつも「修行もいいけど、魔物が居るから気をつけなさい。」と口酸っぱく言われているけど。

すぐ近くのキノコ熊(マッシュベアー)だってお腹を出して、大きな体を上下させながら鼻ちょうちんを膨らましてる。

私の好きな、平和な時間だ。


それに、師匠との特訓以外で強くなれる手段があるなら、片っ端から実践してみたい。

私にとって強くなればなるほど、外の世界をもっと知ることが出来ると思ってるのだ。

いつか旅ができると、そう信じているからだ。


そんな考え事をしてるうちに、目的地のすぐ前まで来た

いつもよりなんだか騒々しいが、特に気にしない。熊のキノコを狙ってる小魔物でも多いのだろう。


さて、今日も修行の時間だ。

鼻歌交じりに歩みを早める。

勢い良く扉を蹴飛ばすように、私はその場所へ飛んだ。






「やっとついた──────────

「い"あ"あ"あ"あ"あ"あ"は"あ"あ"っうぇ"っう"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!」

『フッ、グァフ』






開けた場所、真ん中の大きな切り株、それの上で喉を枯らすほど泣き叫ぶ奇抜な服の男の人、玩具を貰った犬のように男の人を甘噛みしてるマッシュベアー。


いつも通りとかけ離れた目の前の景色に、脳が一瞬だけ思考を止めてしまう。


『ベロベロベロベロベロ』

「う"う"う"う"う"う"う"う"ごほッう"う"う"う"ぅ"ぅ"う"う"!!!!!!!」

「な、あ、なん、え?」

─────なに、これは。


マッシュベアーの気性は温厚で、むしろ他の動物に対しても友好的だ。

子供の頃から誰もが知っている知識のはず。

…流石に、じゃれて遊んでいるだけだったかな?


「はあっ、はあっ、待って!?待てって!?ま"っっって"!!!!!」

『………(両前足を男の脚に置いて"待て"の姿勢。)』

「は"な"し"て"よ"!!!!!!!!!!」


本気(ガチ)だ。

本気で叫んでる。

めちゃくちゃ、嫌がってる。

見るに耐えなくなり、近くに生えていたキノコを3つ採り、マッシュベアーを誘導する。

すると、私の手の平にあるご馳走に気が付いたのか、あっさりと拘束を解いて近づいてきた。

涎を垂らしながらキノコを平らげ、満足したのかどこかへ行ってしまった。


「あの、大丈夫ですか…?」

「__ありがどお"お"お"ぉ!!」

「うわっ!?」


平穏を取り戻したはずの空間。

いつも通りを壊したイレギュラーな存在。

まだ泣き叫ぶ彼に何をすれば良いのかも分からないまま、

ただ、変わり始めた日常を感じる。


少年と少女の出会いは、唐突で不可思議なことだらけだった。




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