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第1話 絶望と婚約破棄

「フィセル、本当にすまないが……婚約破棄する」

「……将軍! ウィリアム将軍! 何故ですか。何故……! わたくしは、大聖女としてこのプロセルピナ共和国に貢献(こうけん)してるではありませんか。こんなのあんまりです」



 ウィリアムは不敵に笑い、口元を歪ませた。



「黙れ、大魔女(・・・)

「ま、魔女……?」

「そうだ、フィセル。お前は魔女なんだ。危うく俺は騙される所だった……」

「い、意味が分かりません!」

「お前が美しく、他に類を見ない魔力を持っているのも知っている。だが、異常すぎる(・・・・・)んだ。こんな人外な能力……大魔女としかいいようがない」



 かつてこの共和国には『魔女狩り』があった。でもそれは三百年前の話。今では風化しつつあると聞いていたのに。



「そんな、理不尽です」

「では、フィセル。俺との婚約破棄はしないと?」

「だって、わたくしは将軍様を愛していますもの!」


「そうか。なら、嫌でも破棄させてやろう」



 指を鳴らす将軍様。衛兵が現れ、高齢の男性と女性を連れてきた。……って、嘘でしょ。この二人はわたくしの両親。



「しょ、将軍様! 二人は父と母ですよ! なぜこんな縛り上げて……」

「言ったろう。お前は『大魔女』だと。なら親も同罪なのだよ」

「解放してください!」


 懇願すると、将軍は笑い――衛兵に指示を出した。


「衛兵、その二人は大魔女を生み出した大罪人。即刻、処刑しろ。この銀髪の女の前でな」



「はっ……直ちに斬首刑に処します」



 鋭い剣を手に持つ衛兵。

 不気味に輝き、それをわたくしの父の首元に向ける。



「やめて……! やめて!!」


「……フィセル。我が子よ……」


「父様……わたくし……ごめんなさい」


「お前は悪くない。お前は潔白だ……私の自慢の娘だ。お前は生きるんだぞ……」



 ザンッと鈍い音がして――首が転がった。



「………………」



「あはははははは……!! フィセル、お前のその顔が見たかった!! どうだ、目の前で父親を殺される気持ち! ぜひご教授願いたい!!!」



「……この人でなし!!」



「ははははは……あはははははは!! 実に小気味よい。さあ、次だ。母親も同様に斬首せよ」


「分かりました、将軍様」



 衛兵は同じように剣を向ける。

 もう、やめて……見たくない。



「母様……」

「フィセル、いいのよ。わたしとお父さんは先に逝く……。向こうで見守っているわ……だからきっと幸せになってね」



 その直後、母も同じように――。

 こんなの酷過ぎる。



「……フィセル、今の気持ちを聞かせてくれ」


「…………」


「さあ、一言くらい言ってみたらどうだ」



 なにが共和国よ。

 なにが将軍よ。


 この国は腐ってるわ。

 こんな国を守る価値なんてなかった。


 だから、わたしはせめてもの抵抗で将軍に言い放った。



「……このクズ野郎」

「そうか、それが“答え”か。実につまらん女だ。さすが魔女だよ」


「もういいでしょ。わたくしも殺しなさい」

「はぁ~? 殺しなさい~? フィセル、お前は殺さない」

「え……」


「お前には生き地獄を見せてやる。共和国の外は辛いぞ。獰猛なモンスターがそこら中に歩き回っている。一歩先を出れば半時と持たず殺されるだろうな……くくっ、あははははは……!!」



 ――こうして、わたくしは生きたまま共和国から追い出された。



 ……どうして、こんな事に。

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