Battle 2 (1)
僕はまた、退屈な日々に逆戻りした。
一時はあんなに清々しい気分だったのに、Aのせいで台無しだ。
ようやく僕のこのつまらない人生に終止符を打つことが出来ると思っていたのに。
またどうやって死ぬか考えなければいけないじゃないか。
なんとなく、同じ死に方をしようとするのは僕のプライド的に嫌だと思い始めたからだ。
既に刃物で首をグサッとする方法と溺死は試みた。
あとは、首吊り?薬?飛び降り?煉炭?
あ、風呂場で手首を切ってお湯に浸しとくのもありだな。
あまり手間はかけたくないから、煉炭は無しだ。
あと、死んだ後酷い姿になると言われている首吊りもやめよう。
飛び降り、手首、……薬にしようかな。
睡眠薬を大量に飲んで眠ればあまり苦しまずに逝けそうだと思う。
まぁ、苦しかったらそれはそれで新しい発見だ。
それに、自宅で死ぬのならさすがにAも止められないだろう。
当初僕は自宅で死ぬのは望ましくないと思っていた。
でもそれは発見時にハエが集って、肌がただれ、見るに堪えない姿になってるのが嫌なだけだ。
要は早く発見されればいいということだ。
だから早く発見されるために窓を少しだけ開けて、死臭が外に漏れるようにしておこうと思う。
隣の住人にはたいそう迷惑がかかり申し訳ないとは思うが、僕はどうしても死にたいのだ。
このくらいは許して欲しい。
どうしても、もうAに邪魔をされたくないのだ。
なぜ今、僕はAのことを考えているのか分からないが。
前回も言ったが、僕はそうと決まればすぐに行動に移したい人間だ。
早速、パソコンをたちあげる。
致死率が高そうなものを検索して買おう。
色々調べたのち、僕はとある睡眠薬を購入した。
翌日配達にしたので、これが届くまであと1日。
明日、死ねる。
そう思うと気分が高揚してきた。
今日は外に出て、最後の町を見に行こうと思った。
夕方になり、僕は外に出た。
自然と、大学に行く時に毎日通る河原に足が向かっていた。
最後なのだからもう少し代わり映えのある綺麗な景色を選ぼうとはしたが、あいにくそんな場所は知らなかった。
今まで、全てに無関心でつまらないと思って生きてきたつけが回ってきたことに、少しだけ、後悔がよぎった。
そんな後悔はすぐに脳裏から消えたが。
僕は河原に立って、目を閉じて大きく息を吸い込む。
風の音、鳥の羽ばたく音、カップルたちが話す声、Aの声、小さな子供がはしゃぐ声。
今まで意識して聞いてこなかった全ての音が耳に流れ込んできて、これもまた悪くないなと思う。
……ん??
なんか今の音の中に、変なのいたよな???
そんなはずないと言い聞かせ、ゆっくりと目を開ける。
目を開けた後、僕はしばらく動けなかった。
驚きと、呆気に取られて。
『あれ?おーい。生きてる?』
と、そいつは僕の目の前で手を振っている。
もう、一生会いたくないと思っていたやつだ。
Aが、目の前にいた。
「なんで、お前がいるんだ?」
最悪だ。
死ぬ前日にこいつの顔を見る羽目になるとは。
『たまたまここ通ったらお前がいたから。あれ?なんかまた死にそうじゃん?って思って。近くに寄ってみた』
そう、なんの悪気もなく笑って言う。
「あっそ」
僕は早くこの場から立ち去りたくて、それだけ言い残し後ろに振り返り歩き出した。
しかし、Aもついてくる。
足を速めても、Aはしぶとくついてくる。
最初にAと会った時とデジャブな感じになっている。
うわ、めんどくさ。
でもこいつ、なんか足速そうだし、このまま走ってもまけなさそうだ。
『ねえ、なんでそんなに速く歩いてんの?話そうよ〜。ねえ』
ずっとAが横から話しかけてくる。
ほんとにしんどい。
僕は必死に頭を回転させ、Aをかわす方法を考えていた。
きっとAに何を言っても通じないだろう。
今日はほんとに死なないつもりなのに。
かといって、このまま家に帰ったらAに家の場所を知られてしまう。
それだけは、絶対にいやだ。
だめもとで言ってみることにした。
今回は事実だし。
まあ明日死ぬんだけど。
「死なないよ。だからもういいだろ?もう家に帰るから、お前も帰れ」
『……わかった。じゃあな。また』
そう言い残し、風のようにAが去っていった。
え……?
絶対引き下がらないと思っていたのに。
内心ラッキーと思いながら、僕は足早に家へと帰った。
今回は次回に続きます!
1話完結にしたかったのですが長くなりそうだったので1度切ります。