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モンスターコア  作者: ざっくん
vs秘密結社クロノス
77/93

68話 牙を剥く秘密結社クロノス

 正面にはミリナリス含む一組の三人、後方には精神系の魔法を受けたサリアが道を塞いでいる。

 さらに、ここは狭い裏路地すり抜けることは出来ない。


「今は準備期間じゃないし、僕の代わりは誰にでも務まるよ」


 リュートは会話で時間を稼ごうとする。少しでもサリアに掛けられた精神魔法の効果時間を少しでも減らすためである。

 彼らが精神魔法を使用した事でマナを消耗したとしても、四人を相手にして勝つことはできない。ただ、耐えることに集中すればはサリアが元に戻るまで十分に時間を稼ぐことができる。


ーーーサリアがあれから攻撃してこない事を考えると指示するタイプ。命令を理解させなければ動くことは無い。


 リュートは抵抗するため『土魔法』で丸盾を二つ形成する。しかし、彼は大きな勘違いをしていた。


 それは、サリアが精神魔法を受けたのは昨日の夜であり、命令で自身に『服従魔法』を掛け続けていることである。

 よって、現在のミリナリスはマナを消耗していない。


 それは、情報が足りず仕方ないことではあるが、致命的な勘違いであることに違いない。このままではでは全く勝機が無い。

 ただ、その後ある出来事によって戦闘が中断される事となる。


 しかし、それは救いでは無い。むしろ最悪、学園規模まで広がる更なる崩壊の始まりであった。

 ミリナリス達とリュートの間に唐突に穴が開く。


「…ッ!」「…ッ!」


 予兆も気配も無かった。全くの無音で彼らは現れた。

 穴から黒装束の人物が五人飛び出してきた。彼らはフードを深くかぶる事で顔を隠し、魔法を使用して音を消し浮遊している。

 装束の機能なのか輪郭がぼやけていて、詳細な体形の判別が付かない。

 ただ、装束では隠しきれない特徴が彼らにはあった。


 3メートルを超える巨大、フードを盛り上げる獣耳、装束からはみ出んばかりの魔道具、フードから飛び出したエルフを超える長さの耳、そして、リュートほどに小さい子供。


 正体などは全く見当もつかない。しかし、リュートの眼が彼らを学園の人間でない明確な敵である事を伝えてきた。装束に隠れ詳細な確認は難しいが、強さは担任の教員に迫る勢いである。


「おい、人いるじゃねえか!あの野郎適当な仕事しやがって!」


「脳筋は黙りなさい。何かの弾みで死んでも知りませんよ」


 リュート達を前にしているにも関わらず集団のうち巨人と長耳の二人が口喧嘩を始めたのだ。彼らの仲はあまり良く無さそうである。

 その後も口論は続き、”クズ””ファザコン””愚鈍””マザコン”などの罵倒が飛び交う。


 長耳の人間は親離れできていないらしい。もしかしたら大した危機ではないのかと思えてきた。

 しかし、次の瞬間、サリアとミリナリスの右後方に居た人間が唐突に動いた。

 サリアはチョーカーを握り潰し、もう一人はミリナリスの肩を掴み後方に放り投げた。


「うっ…!」カラン


 ミリナリスが尻餅をつく。仮面が外れ素顔が露わになる。妖艶な顔に黒く長い髪をしている。整った容姿をしているが左目に眼帯をつけている。


「えっ…?」


 彼女の額から血が流れた。手を当て確認する。


「うそ…」


 全く気がついていなかったのであろう。手にべったりとついた血を見て驚愕している。


「逃げろ!足手まといだ!」


 ミリナリスを投げ出し彼は仮面を外し見覚えのある槍を『水魔法』で形成した。

 彼の正体はカイザであった。バトルロワイアルで戦った時よりも技が鮮麗され強くなっている。


「すぅー…」


 サリアは息を大きく吸い、ブレスの準備する。その最中も彼女は黒装束の集団を警戒し隅々まで観察していた。ただ、今までに見たことのない獣のような形相で彼らを睨みつけている。


 リュートもショーテルを形成して戦闘体制を取った。


ーーーーー

 体育祭開会式直前、

 カイト、アヤメ、コアの三人が観客席でリュート、サリアの二人を待っていた。待ち合わせ場所にこなかったため、先に席に着いている


「リューとリアが来ない」


 アヤメがいつまで経っても現れない二人に対して愚痴をこぼしていた。とても不服そうである。


「リュー?」


「リュート、」


「うーん、まぁ、やられたな」


 カイトは二人がどこかのクラスの強撃を受けた。と予想した。

 二人とも情報、戦力で中核を担う存在である。1日だけでも再起不能に出来ればかなりのリターンが得られる。彼らを狙うのは妥当な選択である。


「ご主人は1-5四天王圏外、居なくなったところで対して不都合はないのじゃ!」


 コアはさしてリュートを心配している様子は無い。開会式を楽しみに待っている。


「あんた達、三人だけなの?」


 彼らの元に教員のトウカが現れた。一年ニ組の担任でコアとは長年の交流がある。


「げっ…ん?トウカ、仕事はどうしたのじゃ!?」


 コアは反射的に逃げ掛けたが、辛うじて踏み止まった。

 トウカは学園長の護衛の仕事がある。

 実は学園最強のチーム全員が集まり護衛をすることになっておりちょっとした騒ぎになっている。公式に発表はないが何かあるのでは無いかと勘繰っている者も多くいた。


「私は分身よ。色々あって荒んだ結果、吸収を拒否られたの。最近、人権を手に入れたわ」


「怒ってないのじゃ?」


「私は本体とは別の人間よ。プライドは有って無い様なものよ」


 彼女はコアを退かしそこに座ると自身の膝に乗せた。


「私は、今ちょうど居ない二人に用があってきたの。あんた達はいつも五人でしょるう?だから一緒にいると思ったのだけど…居ないわね」


ーーー

「これから、開会式が始まります。それでは学園長による開会の言葉です。」


 闘技場の全体に放送が行われる。学園長が緞帳に立った時、事件が起きた。そこを青白い光の巨大な球体が襲ったのだ。


 会場のほとんどの人間が演出の一種だと気に求めていなかった。しかし、少なからず事件の重大さに気づいた者もいた。


「おい…何やってんだアイツはァァーー!!」


 トウカの分身もその一人であった。信じ難いが起きたことは事実。怒りと願望を胸に元凶の元へと走った。

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