表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスターコア  作者: ざっくん
何でもありな体育祭
73/93

64話 シルvsコア

 シルとコア、二体の怪物(モンスター)が相対する。力の大半を失い似た状態となっている彼らではあるが、その考えは対照的であった。


 シルは焦りすぐにエネルギーを欲した。レーザーを撃つマナすら残っていない彼は目の前の獲物を糧とするため命を狙った。一目でコアをモンスターと見抜いた彼には躊躇はない。


 一方、コアは何も考えず得た人の体を動かし楽しんでいた。


 互いに魔法を使わない肉弾戦を繰り広げる。実力はシルがやや上であるが差は小さく、戦いはそれなりに拮抗するはずだった。

 だが、殺しと遊びの差は大きい。始めのカウンター以降、コアは反撃もできず一方的に攻撃を受け続けていた。


「うおらぁ!あ、ちょ、まっ!」


 それは、コアが大人の姿を再現した後も続いた。そして、敗色濃厚となった時、コアは呆気なく禁じ手を抜き払った。


ビキッ!ジジジ…


 コアの拳が空中で何かに当たり、正面に漆黒のヒビを発生させた。ヒビは一つ当たり1メートルほど伸びシルの体を掠める。そして、ヒビに触れた部分は削り取られ例外なく消滅した。


「…ッ!」


 防御無視!?


 シルが攻撃を受けた時、抵抗を感じなかった。感覚的に『座標魔法』で身体を直接狙われた時や、『縮地魔法』の移動を失敗した時に近い。

 だが、攻撃の際マナの侵食を受けた感触がなかった。通常、相手の体内への魔法を行使する際、自身のマナで相手のマナを侵食し置き換える。そこでやっと魔法が使えるようになるのだ。

 つまり、まともに攻撃を受けてしまえば終わってしまう。


「オラ!オラ!オラ!オラァ!」


 シルの攻めが緩まった事により、コアの勢いが強まる。ヒビを無数に発生させてシルにを追い詰める。

 ヒビは発生してから一定時間その場に留まる。さらに、コアはそのヒビを瞬時に修復することが出来る。状況はコア有利に傾いていた。


 しかし、


「なっ!」


 突然、コアの腕が霧散した。マナ不足により体の維持ができなくなったのである。

 この体になってからまともに魔法を使わなかったブランクと高揚した気分で自身の限界を見誤った。


「前言撤回!助けるのじゃ!」


 コアは体を幼女に戻し、後方に飛んだ。


逃すか!


 シルがコアの核を抜き取ろうと手を伸ばす。だが、その手は鋼の盾二枚に弾かれた。


 この感覚は!


 シルはすぐに後ろを振り向く。

 本来ならば、あの程度の盾は障害にすらならない。しかし、間に『衝撃魔法』のクッションが入った。彼はこれがルカの魔法だと確信する。となれば、もう一人警戒すべき相手がいる。

 シルはレイの目を見る。彼女は明らかにこちらへ狙いを定めていた。


 させるか!


 彼女の『魔眼魔法』に抵抗するためのマナが残っていないため、土を巻き上げで視界を遮る。

 目の前の盾から核を二つ取り出し、そのまま手から吸収する。


「…ッ!」


 シルの背中を燃える様な痛みが襲った。振り返り確認すると土埃に穴が開けられていた。


 この際、生きて入れさえば良い。めんどくさがらずに海で狩りをしていれば十分力を取り戻せる。逃げるだけのマナは今ちょうど手に入れた。


 地面を思い切り殴り、再び土埃を舞わせる。そして、『闇魔法』の霧を生成する。闇の持つ抵抗を利用して『念力魔動』を防ぐためである。


「じゃあねー、皆んなー」


 これぐらいすれば逃げ切ることが出来るだろう。何より、向こうに命をかけてまで追う理由がない。

 シルは海に向かって一直線に走った。自然公園を超えて牧場を抜ければパンゲア大陸に繋がる海に出れる。


「ん?」


 シルは逃げてすぐサリア達の集団を発見した。


 ちょうどいいからスッて行こう


 カードを気にする必要のないシルは彼女らの全ての攻撃を軽く去なし、サリアの腰から小包を一つ盗った。それが一番多くのマナを含んでいた。


 中を見ると宝石の様に輝く赤い球が入っていた。スイッチも無く、硬くない。軽くマナを注いでみるが特に反応はない。


ーーーまっ、いっか


 それは、リオンが生徒達に持たせた救難信号用の魔道具だが、そんなことを知らない彼は特に気にぜず砕いて吸収した。


 あまり、回復しないなぁ…、…ッ!


 期待していたよりも低いマナの吸収を不思議に思っていると、後頭部に強い衝撃が走った。


「おい、俺の生徒に何した?」


「ちゃんと生きてるから廃棄にしないで…」


 シルは教員リオンによって呆気なく捕縛された。


 捕らえられた生徒はシルの供述を元に捜索し休憩所の小屋に詰め込まれいる所を解放された。所持品のほとんどが盗られていたが身体は特に害された様子は無かった。


 後日、4と5の両クラスには相手クラス全員を拘束したものと同等のポイントが与えられた。さらに、全員に口止め料と迷惑料がかなり支払われた。


 シルは捕縛された後、精神魔法に加えて変化系の魔法を封印され、魔法を使えばすぐに通知が送られる様にされて地下に捕らえられている。

 思考をインターネットに接続して公園での出来事を一人一人に謝罪をしていた。ネット世界は暇らしく、謝罪をした後は一部の生徒達と雑談をする仲にまでなっていた。


ーーーーーー

 体育祭前日

 自然公園での戦闘以降、”一人捕らえられただけでクラスが共倒れになる程に戦うイカれたクラス”と噂が広がったためか、どこからも手を出されることは無く時が流れた。

 そのため、リュートたち1-5の生徒は、残りの準備期間を特訓に充てることができた。


 そして今日、体育祭プログラムの発表された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ