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モンスターコア  作者: ざっくん
何でもありな体育祭
69/93

60話 カチコミ!隣の1-4

「すぅー…」


ガラガラ…


 教室1-4にリュート達1-5がカチコミに来た。初手はサリアのブレス攻撃である。

 それは一見大雑把な攻撃にも見えるが、『声魔法』『振動魔法』『衝撃魔法』『炎魔法』さらに『伝達魔法』の計五つの魔法を掛け合わせた繊細な技術である。


 彼女は『触媒魔法』で作られた真っ白なメガホンを口に当てる。


「あら、あの子達は…」


 しかし、カチコミは完全に読まれていたのだろう。そこに1-4の生徒の姿は無く。居たのは担当の女性教員だけであった。


 ただ、サリアのブレスはもう既に喉まで出かかっていた。それなのに標敵が見当たらない。

 故に行き場を失ったそれは、必然として教員へと向かった。


「私に…ッ!」


「こんにちはーー!」


「ギャーーー!」


 彼女は血液の盾で衝撃の直撃を防ぐ事には成功した。

 しかし、サリアのブレスが広範囲使用に調整された硬直(スタン)目的の威嚇(ハウル)に近いものであった為、鼓膜に多大なダメージを受けてしまった。


嘘…

 しかしその時、サリアは割れない窓ガラスに驚愕し、落胆していた。似たような状況で割ったことがあるのだろうか?


「あなた達…」


 彼女はリュート達を睨みつける。もし、今が、体育祭準備期間でなければその場で全員がボコボコにされていたであろう。

 ただし、彼女も教員である。分別はしっかりとわきまえている。


「あの子達からの伝言よ。”北の公園で待つ”だって」


 北の公園…

 これは、なんとも意地悪な表現である。


 現在、リュート達のいる場所は、学園の中央に位置するビル群である。

 ここから北に位置し、2クラスが争えるほどの大きさを持つ公園はざっと調べただけで三つもある。


・モール型ショッピングセンター屋上の広場公園


・修練目的で使用される様々な施設がある運動公園


・牧場と繋がっているが、外生生物(モンスター)の居ない自然公園


 そのどれも離れていて、徒歩で移動できる距離では無い。


(仕方ない…か)


 リュートはカードを取り出して誰かに念話をかける。


「ねぇ、それ誰?」


 サリアが声をかけた。実は念話中に話しかけるのはタブーではない。


 『念話魔法』は頭の中に思い浮かべた音や文字を相手に送る魔法である。故に、声が入ってしまう事を心配する必要はない。それに、念話に多少慣れた人間ならば日常生活に支障をきたす事なく連絡を取ることができる。


「情報屋さん、場所聞こうと思って」


学園(ここ)来て数週間で…?怪しいわね。ここ来る前は何してたの?」


「やましいことは無いよ。ただ、お金のゴリ押しただけ。ここ来る前は宿屋の居候だしね」


「へぇ~…」


 サリアは自然にフェイドアウトし、カイトにスッと近づく。


「あいつの資金源ってなんなの?あなた知ってる?」


「知ってるが…教えていいのか!?」


 カイトは教えていいのか戸惑いリュートに話しかける。リュートはそれを隠している訳では無いが彼の手の内を晒す事になってしまう。


「ないしょ」


「だとよ」


「そう、残念ね」


 そうこうしている間にリュートへ(かえ)しの連絡が入った。


「あっ、分かったって」


「早いわね」


「今回は、有名な人だからね。仕事は折り紙付きだよ」


「え~と…」


 リュートは何かを探す様に辺りを見回す。そして、ニナを見つけて声をかけた。


「ニナさん、ちょっと空いてる?」


「はい、なんでしょう?」


「いつものお願い」


 そう言うと、リュートはカードをニナに向けた。

 情報の受け取りの依頼である。


「かしこまりました。」


 ニナはリュートのカードに自身のカードを重ね指定場所の情報を受け取ると教室を出た。


 情報屋との接触には多少の心得が必要になる。第三者に情報が漏れない様にするのはもちろんのこと、互いに弱みを握られない様に細心の注意を払う必要がある。


 リュートにはその心得が無かった。そこで、技術を持ち、金欠気味のニナと利害が一致したのである。


 今の時代、ネットを経して連絡を取ると情報屋に全て筒抜けになると言ってもいい。それどころか割り込まれ間違った情報を吹き込まれる可能性もある。

 そのため、少なくとも情報の受け取り、出来れば依頼も直接接触して行うのが決まりとなっている。


 なお、リュートはめんどくさがってほとんどの依頼をネット経由で済ましている。

 

それから程なくしてニナが帰ってきた。


「ただいま戻りました。」


「ありがと」


 リュートがカードを差し出す。


「フフ、毎度ありがとうございます。それと、依頼を頼まれました。物のついでいいと…、お使いみたいなものだそうです」


 彼女は出されたカードに自身のカードを重ねる。


「わかったよ」


 受け取った情報によると1-4はクラス全員で自然公園に潜伏しているとのこと。


(おかしいな…)


 リュートはこの情報に違和感を覚えた。

 複数回利用した経験からして質と量が低いような気がする。


 だが、その理由は依頼を見てすぐに理解した。


 そこには、前置きもなく文が(つづ)られていた。


 中途半端な情報ですまない。依頼料は一部返金させてもらう。

 どうやら私のドローンを片っ端から破壊して回っている者がいるようだ。調べて欲しい。

 余裕があればで構わない。君も準備期間で忙しいだろう。情報にはそれ相応の報酬を支払う。

 もちろん、君のような将来有望な客にはしっかりと色をつけるつもりだ。これからもどうかご贔屓に。

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