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モンスターコア  作者: ざっくん
何でもありな体育祭
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58話 紛れ込んだスパイ

 万軍が襲来してから数日後、学園の被害は意外にも少なく被害調査のための一日を置いて授業が再開された。


 リュートはコアを持ち出かけ、カイトと待ち合わせをし、途中でサリアとアヤメに出会う。

 学園での日常が形成され始めていた。


 教室に入った時、クラス内の人間に違和感を感じた。


(…あれ?)


 だが、さほど気にすることなく朝の会話を楽しむ。

 今日はアヤメが新しく解明された精霊(スピリットモンスター)の発生メカニズムについて熱く語ってくれた。

 

 そんなに好きなのに創造学科にしなかったのかを尋ねたら。「趣味だから、続く」なのだそうだ。


 ホームルームの時間になり教員リオンが教卓の前に転移してくる。初めのうちはいきなり現れる先生にクラスがざわめいていたが、数回続けば日常となる。


「よし、今日はこっちに定着した外生生物(モンスター)と変異した源生生物(アニマル)の生態について予定だ…」


 リオンは今日に行う講義についての説明を始める。彼は実践主義であり、何をするにもまず先に現場に行き技術を学ばせていた。

 しかし、今日は様子が違った。通常ならばこの後に詳しく説明が入るのだが、彼の口は途中で止まった。


「……。」


 リオンは一頻りクラスを見回して手元のパネルを操作する。日付を確認した後、視界いっぱいにホログラムを開き生徒名簿を確認する。


「あ~、今の無し」


 彼は何かに納得した様に声を出した後、講義内容の変更を宣言した。


 ただ、それ自体は珍しいことではない。学園では、担任がそのクラスの講義の全てを受け持つ。よって、担任の気まぐれによる変更はよくあることである。


 しかし、今回は様子が少し違った。


「あ"~、すまん」


 リオンは何やら悶えた後、何故か合掌をした。


「お前ら、今日から準備期間だったわ」


 リオンの言葉に教室内がざわつく。


 『準備期間』それは学園三大イベントの一つである体育祭の一ヶ月前を指す。


 その結果、大ブーイングが巻き起こった。何せ体育祭は戦闘学科が主役であり、皆が死力を尽くすイベントの一日目から出遅れたのである。当然の怒りである。


 その後、様々な罵倒や責任追及を耐え切ったリオンが口を開く。


「本っ当に、すまんかった!」


 ガチ謝罪であった。

 罵倒が収まり始めたころリオンは学園祭の説明を開始した。


 教員は直接的な助言や支援を禁止されており、あくまで主体は生徒でなければならないこと。


 今年の体育祭にはアクティブポイントとが存在する。準備期間中の行動で増減し、体育祭当日に様々な特典や物品と交換できるようになること。


 『捕縛』と言う、捉えた人間を一定時間拘束できる制度が導入されていること。


 リオンはこの二つについて口頭で伝えた後、細かい規則は共有ファイルにある事を示し後で読み取る(・・・・)様にと指示をする。そして、講義の説明に移った。


「じゃ、これから、変装の見破り方についての講義を始める!」


 ガタッ!


 メガネが立ち上がると同時に『触媒魔法』で白い煙の煙幕を生成し、逃走を図った。


 その後、遅れてリュートとリョッカが立ち上り臨戦体制を取る。二人は彼の異変に気づいていたのである。


「グッ、」


「ウワッ!」


 しかし、二人は視界の悪さと素早い身のこなしに翻弄されてしまい、健闘も虚しく相手を逃してしまった。


 しばらくして、煙が霧散し視界が晴れてきた。


「えー、本日三回目の講義説明に入…おい、一人足りなくねぇか?」


 教卓に立ちクラスを見回したリオンが気づく。入れ替わっていたメガネは元より、もう一人減っていたのである。

 だが、居なくなった人間はすぐに判明した。いや、判明したと言うよりはその場の全員が気づいた。


 いなくなった人間は新入生の中で名の知れた男であった。彼は受験時に最も多くの(ポイント)を獲得したのである。

 

「またか、まっ、すぐ戻って来んだろ」


 リオンはカードの機能でメールを送った。



 そして、数十分が経ち休憩時間、見計らったかの様にクラスの郵便アカウントにメールが一通届いた。


ーーーーーー


5組の皆様へ


背景、貴様らの様な馬鹿に時候の挨拶は必要ない。


 メガネと馬鹿(・・)はこちらで預かった。資金かポイントを選べ取引に応じる構えはある。

 降伏しろ


 戦闘学科 対外界生物(モンスター)学部 1年4組

ーーーーーー

 めちゃくちゃに自分達を煽る文章が綴られていた。

 この時、クラス全員の心が一つに纏る。罠があろうと後々損することになっても4組を潰す!


((戦争だ!))

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