34話 リュートvsレン
「我が死兵の軍に恐れ#慄__おのの__#くがいい!(キリッ!」
先に動いたのはレンである。手始めに加工済みのコアを一つ取り出し『融合魔法』を発動、大楯にコアを埋め込んだ。
リュートはレンの片手の塞がったその瞬間、攻撃を仕掛けるべく走った。
ガキン!
「…ッ!」
リュートのショーテルが割って入った大楯によって受けめられた。
リュートは驚き先程大楯のあった場所を確認する。案の定そこに大楯の姿は無かった。
「百聞は一見にしかずってやつだ。魔法の紹介にはもう十分だが、せっかくだ、俺様の足元からに跪いておけ」
コアを取り出して、それを取り込むように『鋼魔法』で剣を形成、大楯の後ろでこっそり形成した斧と共にリュートに向かって投げた。
「…ッ!」
カンッ!カンッ
リュートは斧を振りかぶるレンを見て咄嗟に形成した丸盾で攻撃を弾き返した。
(危なかった…)
しかし、安心したのも束の間レンの足元に落ちた剣と斧が一人でに浮かび上がって攻撃を仕掛けてきた。
(念力魔法っ!)
剣と斧どちらも向かってくるだけではなく攻撃に関しての技術を持っている。だが、
(#拙__つたな__#い、どっちも素人みたい)
剣と斧の隙間を縫うように通り抜ける。
ギギィーーン!
そして、片手に持ったショーテルでレンと反対方向に吹き飛ばした。
(軽い?)
リュートは抵抗の低さに違和感を覚えた。しかし、特に気にすることもなく一気に距離を詰めた。
「大丈夫かそんな不用意に俺様に近づ…うぉ!」
リュートの魔法によりレンの足元の地面が軟化、軟化した土の沼に落ちてしまった。
「チッ、カッコつかねぇ。まぁ、いいさ、俺様の仕掛けはもう完成している。俺様の勝ちだ!」
レンが穴から上半身を這い出して言った。
「…」
リュートは辺りを見回し警戒した。が、仕掛けを見破ることは出来なかった。
(ハッタリかな?)
念のため、『軟化魔法』の落とし穴で大盾の動きを封じショーテルを二本構える。
その時、半分沈んだ大楯の後ろから三本の剣が飛び出した。
ガキン!カキン!カキン!
「ハァ!?」
レンは驚き驚愕した様子で声を上げた。
「どう?」
リュートはレンの首元に剣を突きつける。
「解除!クソ!引き分けだ」
ボト、ボト、
「?」
リュートが振り返るとレンの形成した剣と斧から落ちていた。
「引き分けだ、引き分け、あー、恥ずかしい」
「傷口に塩を塗るようで心苦しいでありんすが、剣三つの攻撃、あれで勝ちを宣言するのは早とちりが過ぎるのでありんせん?」
顔を背けて恥じらうレンにコユメが言った。
「まっ、そう見えるはずよな」
レンは納得のいかない様子で言った。
「何のことでありんす?」
「コイツが俺様のブラフや仕掛けを全部見抜いて来たんだよ。」
レンは答える。
「何故分かった?」
レンがリュートを問い詰める。
「僕は分かって無かったよ。だから、最後引き分けになったんだし、」
「いや、あれは全員分かってるやつの動きだ。じゃ無きゃ、俺様の剣は弾かれなかった」
「???、どう言うことなのです?訳わかんないのです!説明を求むのです」
リョウカが割って入り説明を求めた。
「まぁ、説明してやる。見た通り俺様は簡易ゴーレムを作り出し戦う。知ってるだろうが、コアには容量がある。一般的な加工だと一つの魔法に特化させて他は消し去るところだが、俺様がゴーレムに使ったコアは、視力、聴力、を残し、命令用の容量を確保している。だから、その分弱体化してる。当然力も弱い。それに慣れた頃にこうする訳だ。」
レンは転がっている剣を『念力魔法』で浮かび上がらせて地面を切りつけた。
「俺様の必勝パターンだってのに、それをコイツは…」
「…ッ!確かに一つだけ音が違って聞こえたのです!」
「何で分かった?それは俺様にとって死活問題だ」
レンはリュートをさらに問い詰める。
「…うーん、見たら分かるとしか、それに合った対応をしただけで分かってた訳じゃ無いよ」
「ほーぅ、俺様の演技が下手だと言いたいのか」
「ちがうよ、これは、生まれつき…いや、物心付いた時からで、僕自身もそれをどうやって見抜いているのかわからないんだ」
「あー、そのパターンか」
レンはリュートの言葉に納得しした様子で言った。
「?」
「#偶__また__#にいるだろ?凡人どもと違って特別な才能を持ってる奴ら、反射速度が異様に早かったり、とんでもねぇ怪力だったり、いるだろ?お前の周りに、ここ来る前はいたら珍しい程度だったが、ここはそう言う奴らがゴロゴロいる。そこまで考えておかないといけないのかと思うと、本当やになる」
「ふーん、」
リョウカは興味津々に聞いていた。
「なんだか羨ましいでありんすね、わちきには思い当たる節がありんせん…」
「そうでも無さそうだぞ、俺様調べによると魔族として生まれた時に入れ替わった器官は、人間のそれよりも優秀な事が多い。希望はある」
「お気遣いどうもござりんす」
「そろそろ牧場のほう行かない?あまり時間かけすぎると間に合わなくなるよ」
「簡単な依頼だが、時間がなくなっても困る、行くぞ、お前たち!」
「行くのです!」
リュート達はカードを#翳__かざ__#し、改札を抜けて牧場内に足を踏み入れた。
牧場内に入りすぐに教員リオンにあった。どうやら待っていたようだ。
「おっ、来たか。これ持っておけ」
リオンは先頭を歩いていたレンに小包を投げた。
「お?」
レンは小包を受け取り中を確認した。中には赤い球が一つ入っていた。
「危なくなったら地面に叩きつけろ。俺が秒で駆けつけてやる」
「…そうか、まっ、俺様達には必要ないがな」
レンは小包を腰に括り付けた。
「そうか?ここのモンスターは舐めてかからないほうがいい。怪我じゃ済まなくなる、死ぬぞ」
ゾクッ…
リュート達はリオンの言葉の重圧に簡単な依頼との考えを改めることとなる。そして、その時感じた予感は正しかったと思い知らされることとなる。




