28話 リュート、カイト
(今までも無茶な要求たくさんあったけど、でも、まぁこれが許容出来ないなら、戦わない学科に行けばいい…と思う。)
リュートは自身の考えに少し疑問を持ったが、これが自分であると強く思う事にした。
何より、今気を抜けば先生の勘違いで命を落とす。
勝利条件は教員リオンに一発入れること
始めに動いたのは教員のリオンである。自身に向けられた敵意を正確にキャッチし、リュートとカイトを襲う。
リュートは迫り来るリオンを前に盾を形成してカイトの前に出る。
ベチャ、
リュートの盾不可解な音を立てて飛び散った。それにより、本来、盾を通してリュートに伝わるはずだった衝撃は分散された。
「右ッ!」
リュートが『岩魔法』『座標魔法』『固定魔法』『硬化魔法』を発動、左横と頭上に足場となる岩のポールを空中に設置した。
タッ!ズズズズズッ!
カイトが『加速魔法』を発動し、リュートの左側から飛び出した。ポールを掴み、形成した「壁魔法」の足場を『潤滑魔法』で滑った。
「…ッ!」
リオンはリュートの「右ッ!」と言う言葉と生成されたポールに意識を取られ、カイトへの反応が遅れた。
焦ったリオンは右手を薙ぎ払いカイトを吹き飛ばそうとした。しかし、手が動かない。リュートの盾が『硬化魔法』の影響により固まっていた。
(今だ!)
カイトが形成した武器で斬りかかった。
「まだまだ甘いっ!」
リオンがリュートを『固定魔法』が掛けられた盾ごとカイトに投げつけた。
「ンッ!」
「グッ!」
リュートとカイトが飛ばされ地面に激突した。
ドボン!
地面に叩きつけられたと言うには不相応な音がなった。
「あー、クソ!ヤベェな、」
ベチャ、
カイトが軟化した地面から這い上がった。
「うん、」
リュートも同じく這い上がる。
「やめる?」
リュートがカイトに聞く。
「いや、続ける」
「続けるんかい!」
リオンがカイトに急接近、空中でアクロバティックに回転し、カイトの頭を蹴った。
ドン!、バシャ!
カイトの頭が軟化した地面に叩きつけられた。
(あ、危ない…)
リュートはすんでのところで地面を軟化させることに成功していた。
(あれだけ隙を作ってダメって、どうすればいいんだろう、)
リュートは柵に思考を巡らす。
「プハァ、」
カイトが地面から顔を出す。
「何か策はあるか?」
カイトがリュートに聞く。
「サポートしながら同じことやろう。」
リュートが盾を形成した。
「よし、分かった。」
カイトが元々着けていた武器を外し、新たに太刀を形成する。そして、リュートと密着した。
バシャ!
リオンが先程と同じような動きでより大きな力でリュートを殴った。
ベチャ!ズズズズズッ!
リュートは軟化した盾での分散と、カイトの「潤滑魔法」での吸収で衝撃を最小限に抑えた。
そして、衝撃を吸収する際に後ろに下がるリュートを軸にその勢いを利用、カイトが回転して太刀で斬りつけた。
「…ッ!」
リオンはカイトに蹴り繰り出そうとした。しかし、加速する前の勢いの無い蹴りはリュートの魔法によって生み出された岩によって防がれた。
ペチ。
カイトの太刀がリオンの首を正確に攻撃した。しかし、その音はとても刀が首に当たった時になったものとは思えなかった。
「イッタ!」
「ほーぅ、」
リオンの放つ空気が変わった。
リュートは背筋が凍る様な感覚に陥った。
ビュン!
リオンのこめかみに『闇魔法』で形成された矢が直撃した。
「何やってるのよ!リオン!」
教員トウカが現れリオンを叱咤した。
「なんだよ、邪魔すんじゃねえよ、面白くなりそうだったてのに…」
「だ・ま・り・な・さ・い!久しぶりに説教してあげる。こっち来なさい!」
「そんなのはお断り…、あっ…」
リオンは何かに気づき顔が真っ青になって走った。
「ウッ!」
リオンは少し前に放り投げた箱を手に取った所で、服の襟を掴まれた。
「さっ、行くわよ。楽しい楽しいお説教タイム♪」
トウカはリオンを引きずって何処かに行ってしまった。




