26話.初授業.1
直後、3人がノータイムで飛び出した。飛び出したのはカイトと、受験一日目にカイトと戦った、黒と黄色の縞模様の毛を持つクイナ、二日目のバトルロイヤルでカイザによって地面に落とされリタイアしたナックである。立ち位置は左からナック、カイト、クイナ、でカイトが頭ひとつ分だけ先を走っていた。
「悪いな」
カイトは教員との手合わせに心躍り初手だけでも一対一を実現しようと両手の指先に『水魔法』で水を生成した。それを手で弾きクイナとナックの顔に掛けた。
「「…ッ！」」
二人は顔に水をかけられて足を止めた。
カイトは『水魔法』を発動させて手首に腕輪形成し、そこから鎌刃のような湾曲した刃を手の甲側から指先方向に向かって五十センチほど伸ばした。さらに、『加速魔法』を発動させてリオンへ一直線に走った。
「どうしたー来ないのかー？これも一様授業だぞ！参加しないと話が進まねーだろ！」
教員リオンは宣言した後もその場から動かなかった生徒たちに遠くから声をかけた。
そのと言葉を聞いて動いていなかった中の数人が攻撃を仕掛けることが正解であると理解して、それぞれが行動に移した。
タッ！
カイトが教員リオンの目の前に辿り着き大きく踏み込んだ。カイトはリオンの左側に飛び『壁魔法』で作られた弧状の足場を『潤滑魔法』を発動させて滑り背後に回った。
「くらえっ！」
カイトはリオンの背中を切り裂いた。しかし、リオンはまるで切られる場所が分かっていたかのように躱した。この際、カイトを見ることは無くリオンは常に真正面を向いていた。
「嘘だろ…」
カイトは驚きのあまり呟いた。そこに、先程カイトによる妨害を受けて遅れたクイナとナックが到着それぞれ斬撃と爆破で手の間合いの外から攻撃した。
「(よし、作戦通りだな)」
カイトは二人から攻撃を受けたリオンに追撃を仕掛ける。今、カイトたちは三角形の陣形でリオンを囲んでいる。素の作戦では、一対一の対決に持ち込んで戦うだけの作戦であったが、それでは勝てないことは先の一合でわからされた。しかし、今、結果的に都合の良い陣形が組めているのでカイトはそれを利用することにした。誰が何度言おうとこれはカイトの作戦なのだ。
爆発で巻き起こった粉塵の中から手が飛び出しカイトの首を掴んだ。
「試合と言う甘えがあったのかも知れんそこは甘く見る、だが、実戦ではそうもいかない実力差を考えて作戦を立てるくらいはしろ。その挑戦心は身を滅ぼすぞ」
リオンはそう言ってカイトを投げた。カイトはクイナとナックの上を飛び越えて行った。
「はぁ(リュートに頼りすぎだったな…)」
カイトは飛ばされている最中溜め息を吐いた。彼は自分で相手の実力を測ることをしたことが無かった。彼はそれを友人に頼り切っており、その技術のカケラすら持っていなかった。故に今回いつも通りに突っ込んで呆気なく返り討ちにあった。
「カイト殿！大丈夫か！？」
カイトは、空中でカリスが『風魔法』で作った柔らかい空気の膜によってキャッチされた。
「あぁ、大丈夫だ、ありがとな」
カイトはカリスの隣着地した。
「リオン教員の実力は底が知れない、初手の特効はかなり無謀なのではないか？」
カリスが行動の意図を問う。
「…、ほら、教員がどれほど強いか試してみたくなってな、思い切り突っ込んでみたらこのザマだ。つえーよな、教員。」
カイトは神妙な顔で少し沈黙を挟んだ後、元気な声ではあるが元気が無いように感じるそんな声でいった。
「悩みでもあるのか？いや、私の勘違いならいいが、元気が無いように見えたのでな、さて、私も教員殿と一戦交えて来るぞ」
カリスは『風魔法』で肩を押し加速しながら颯爽と教員リオンの元へと駆けた。
「…(顔に出てたな)」
「あんにゃろー舐めやがってー！」
カイトが落ち込む間も無くクイナが真横に降ってきた。
ザザザァァーー！
クイナは地面に長く変形した爪を刺して着地した。
「あっ！」
クイナとカイザの目が合った。
「ん？」
カイトはクイナの反応を疑問に思った。
ドゴン！
カイトが殴られ地面に叩きつけられた。
「な！？」
カイトは#既__すんで__#のところで防御していた。
「これでチャラだぜ！」
クイナはここで妨害の仕返しをした。
「おい、これ割にあってないよな！？」
カイトは地面にあお向きに倒れた状態で言った。
「利子だ。諦めろ」
「そっか、なら仕方ないな」
「納得すんのかよ！？」
クイナが思わずツッコミを入れた。
「こっちにもツケるんだよな～コレがっ！」
ナックも投げ飛ばされたのだろう。カイトに向かって飛んできた。
「おいっ！これは洒落になんねぇぞ！やめろ！はやまるなァァー！」
大きく拳を振りかぶるナックを見てカイトが叫んだ。クイナがスッと横に避ける。
ドゴォォーーーン！！
