6話 1.パンゲア/2.ニナ、カリス 12/21 手直ししました。
「おい!見ろ!」
カイトが学園の奥、その海のさらに奥に広がる大陸を指さした。
「えっ!?何?」
サリアが興味津々に反応して、後ろに振り向く。
「ん?」
アヤメも気になって振り返る。
「なんじゃ?わしにも見せろ」
せがむコアをアヤメが持ち上げた。
「どこ?」
「あそこだ、あそこ!」
アヤメの質問にカイトが大陸の森の一部を指差して答える。
そこには、毒々しい紫色の触手状の何かがうじゃうじゃと蠢めいていた。
「うあ…」
アヤメが顔を青くして前に向き直る。
「どうしたのじゃ?」
「見ない方がいい、」
コアの質問にアヤメが答える。
「そ、そう…か?」
コアが頭に疑問符を浮かべる。
「確かに…やばそうなモンスターね」
サリアは少し引いているもののアヤメほどの精神攻撃は受けていなかった。
「そんなこと言われると俄然気になるのじゃ!」
「ほらあそこ、分かる?」
サリアがコアを持ち上げて外生生物を指さした。
「あ、あー、あれか。ああいう奴らは美味いぞ結構マナを蓄えておるのじゃ」
コアが得意げに話す。
「えっ?戦ったことあるの?」
サリアが目を輝かせて聞いた。
「ん?あるぞ」
「あれって、どんな攻撃とかするの?」
サリアが外生生物の生態に興味を持った。自分の戦いの参考にするためである。
「それはじゃな…」
コアが話し出そうとする時にアヤメが言葉を遮る。
「もう…、その話はやめて、精神が…削れる。ウップ…」
アヤメが口を抑える。
「何もそこまで…」
サリアは外生生物を確認する。
それはうねうねと動いて四足型や、人型の外生生物を絡み取ってドロドロと溶かしている。
「う~ん、確かにちょっと…」
サリアは思っていたよりも凄惨な光景を目にアヤメに同情する。
しばらく見ていると不意に、絡みとられていた外生生物がプチっと弾けた。
「ウッ!アヤ…ごめん、私が無神経だった」
サリアは口を抑える。それと同時に自身の行動を反省した。
リュートとカイトはサリア達とは別にその外生生物を観察していた。
「うーん。どうだリュート分かるか?」
カイトがリュートにその外生生物強さを尋ねた。
「ううん、遠過ぎて分かんない…」
「そうか…でも、すげえのがいるな。さすがパンゲアって感じだ。何なの見た事ないぞ!」
カイトは少し残念そうにしたが、気を取り直して会話を続けた。
「そうね、あんなの都じゃ見たことないわ。ちょっと気分悪くなっちゃったけど、すっごい楽しみ」
「それな」
「そうだね」
「それは、私も、」
三人は「楽しみ」っと言う部分に同調した。
ここで、降下するため衝撃に備えるようにとアナウンスが流れる。そして、飛行船がビルを過ぎた辺りで降下し始める。しかし、特に揺れや騒音を感じることなく着陸した。
着陸して間も無く、降りるようにアナウンスが流れた。
四人は指示通りに飛行船を降りる。降りた先は広い広場であり、そこは一枚の平らな石で出てきていた。受験生はそこで移動のの指示を受けることになる。
広場にはそれぞれ四つの学科が記された立札が立てられておりそれぞれ。
戦闘学科、創造学科、政治学科、商学科である。
四人は、同じ方向に進んだ。具体的に話してはいないものの会話の中で、自分達が同じ学科を受けることを察していた。
「やっぱり、あなた達も同じ所受けるのね。好敵手としてお互い励みましょ」
移動中にサリアが言った。
「どう?受験の点数、競ってみない?」
リュートが提案した。
「いいな、やろうぜ!」
「ん、受けて立つ」
「いいわね、乗ったわ!」
三人が賛同し、勝敗の決め方を決める。
「何した奴が勝ちだ?」
「順当に行けばポイントか、ランクだよね」
「やっぱり、ポイントじゃない?」
「ん、それがいい、」
ポイントとは学園内の仮装通貨である。今回は試験の結果に応じて配布されるため、それを基準に勝敗を決めることとなった。
「いきなりで悪いんじゃが、お主らの名ってそれだけなのか?人間のはもっと長いイメージがあったんじゃが」
コアがふと疑問に思って言った。
「えっとね、ここに来る人は、ニックネームって言う名前を決めるんだよ。それは、学園にいる間はそれが名前になるんだ。ちなみに変えることは出来ない」
リュートが答える。
「何か色々と手間でめんどくさそうじゃな」
コアが言った。
「でもね、必要な事なの。例えば…」
サリアが話していると、
「おー!27番ではないか!」
遠くで、ある男子が女性に話しかけていた。
「…いいわ、コアあのバカ見てなさい」
サリアが呆れて言った。
「久しいな。よければ、こ…」
男子は話の途中でタイルが砕けるほどの勢いで飛んできた教員に担がれて連れてかれた。
話しかけられてた女性は慌てた様子で教員のあとを追いかけている。
「あやつどうなるのじゃ?」
その光景を見てコアが言った。
「さぁ?悪気なさそうだったし、厳しめに叱られて終わりってところじゃないかしら」
サリアが言った。
「女の人も慌てて止めに行ってたし、悪いようにはならないと思うよ」
リュートが補足する。
「ここではニックネームとやらで呼ばないとあぁなるってことじゃな…心得ておく」
「それは違うぞ、あれがダメだったのは明らかな奴隷呼びだったからだ。ここじゃみんなが平等だからな。外の身分を持ち込むとああなる」
カイトが間違いを正す。
「ふーん、分かったか?ご主人、わしらは平等らしいのじゃ」
「ねぇ、ちゃんと分かってる?」
「大丈夫じゃ、分かっておる、分かっておる」
コアは堂々と言う。
少し進むと、先頭で先導していた教員がある建物の前に立っていた。
「こちらで、受験の説明を行いますので前から席について待っていてください」
教員は、そう言って建物内部を指し示した。
4人は大量に用意されていた椅子に座った。アヤメの隣に先ほどの女性が座った。藍色の髪を後ろで纏め、藤紫の大人っぽい女性である。
「先程のこと見ておりましたか?おぼっちゃまは普段優しい性格をしているので誤解しないで上げてください。ん?あぁ、私は以前おぼっちゃまのメイドをしておりました。ここでは、ニナと名のっております」
女性が言った。
「ん、私はアヤメ、よろしく、こっちのは、サリア、コア、リュート、カイト」
アヤメが言った。
「よろしくね」
「よろしくなのじゃ」
「よろしく」
「よろしくな」
4人が返事をした。
ニナが体を乗り出して四人の顔を確認しようとした時、
「皆さまおはようございます。まず、今日は……」
ちょうどそこで、受験の説明が始まった。
・配られたカードは得点を刻み込むので常に携帯する事
・受験は2日で行われる。
・午前が筆記、午後が実技となる。
・実技の際は公平のため用意されたコアと装備を使用する。
・一日目の実技は一対一の試合を複数行う。
・二日目はバトルロワイアルを行う。
・日を跨ぐため仮の部屋が用意されている
・カードは鍵、身分証、財布にもなる
・詳しい事は部屋にあるコンピュータ(パソコン)で知ることが出来る。
などなど、
ーーーーーー
説明会が終わり、改めてニナが自己紹介会をする。
「私は、ニナと名乗っております。察してるかもしれませんが、元奴隷で今はメイドをしております。メイドの件は自ら望んで行っていますので気にしないでください。」
ニナが言った。
「すみません、コア、さん?と言う方が見当たらないのですか。席を外されているのですか?」
「わしはここにおるぞー」
コアがリュートの手のひらから話しかけた。
「……え?、」
ニナの動きが止まった。
「おー、そこに居たのか!」
先程の男子が話しかけてきた。細身であり、耳が少し尖っているため種族はエルフである。男にしては少し長い檸檬色の髪をした好青年である。
「皆さま少しばかりおかしな事があっても気にせず協力してください」
ニナが言った。。
「わかった」
アヤメが即返事する。
「おや、そなたたちは?」
先程の男子が言った。
「今さっき友達になったのサリアよ、あなたは?」
サリアが言った。
「私の名はカリスと言う。今後ともよろしく頼む」
男子が言った。皆がそれぞれ自己紹介をした。コアの自己紹介は「世の中、私の知らない事も案外多いのだな」で片付いた。
「そうか、今は、ニナと名乗っておったのか。落ち着いてきいて欲しい。私はそなたを解雇する事にした。その…気のいい話かもしれないかもしれなが、今から友達になってくれないか。」
カリスが思い切り頭を下げた。
「何があったのですか?」
ニナは笑顔であったが何処か恐ろしい顔をしていた。
「その、友達の件は…」
カリスが腰を抜かしながらも、勇気を振り絞って言った。
「あ…、すいません、想定外の発言に少々取り乱してしまいました。詳しく聞かせてもらってもよろしいですか?」
ニナが普段の様相を取り戻した。そして、屈みカリスと目線を合わせ言った。
「その…だな、先の失態でかなり叱られてな、ここでのルールでさえ知らない世間知らず。だと痛感させられてしまった。ニナ殿は知らないだろうが、ここに来る前の身分ここでは意味を無さない様なのだ。だから、私にはそなたと今までの様に接することができないのだ。」
カリスが肩落として言った。ニナがカリスの頭を撫でた。
「そんな事、私も知っています。そもそも学園で知らない人はいません。ぼっちゃまがダメなだけなのです。部屋の掃除もできない。買い物も儘ならない。今回なんて、学園のルールすらまともに把握できない。この27番が居なければ生きていくことすら出来ないでしょう。ぼっちゃまは出来ると言い切れますか?」
ニナがカイトの頭を撫でる。
「そうか…私はそんなにも…うぅ…」
カリスは肩をさらに落として行った。
「でも、安心してください」
そう言ってニナはカリスの頭を胸に押しつけた。
「そんなダメなぼっちゃまでも安心してください。27番改め、このニナがずっと一緒に居てあげます。ニナが居る限りぼっちゃま不安日々が起こることはありません。ニナが癒して差し上げます。ニナだけを感じてください。さあ、リラックスしていきましょう。目をつぶって深呼吸をしてください。吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー、そのまま続けていてください。」
ニナが手招きをした。
「長くなりそうなので、皆様長くなりそうなので気にせず、テスト前の復習でもしていてください」
ニナが小さな声で言った。
「何やってんのよ?」
呆れ気味に聞いた。
「主人を癒しているだけですよ。不安になったので、少し強めに…。」
「そうなの?でも、ここ人通りからあの辺りにした方がいいわ。邪魔入るわよ」
そう言うとサリアは、階段下のスペースを指差した。
「あら、悪い癖ですね。ぼっちゃまの事になると周りが見えなくなってしまいます」
ニナが言った。
「いいのか!?それで!?」
カイトがサリアにコソコソ話しで聞いた。
「なんかよく分からないけど、主人のメンタルケアしてるだけじゃないの?」
「もっとやばいことやってる気がするんだが、俺がおかしいのか?なぁ、手伝っていいのか?」
カイトは、リュートに聞いた。しかし、そこには誰も居なかった。
「は?」
カイトがそう言って周りを見渡すとアヤメとリュートがさっきの階段下のスペースを箒で履いていた。
「何でそんな事やってるんだ?」
カイトがリュート達に聞いた。
「入学まで魔法使えないから。すごく不便。」
アヤメが答えた。
「カイトも手伝って、埃が飛ばないようにゆっくりやってね」
リュートが言った。
「えぇ、あぁー、分かった」
カイトは流されるまま掃除に加わった。
「なぁ、この後どうすればいい?」
階段下スペースの掃除が終わりカイトが聞いた。
「そうだね、ここ出来るだけリラックスできる空間に近づけよう」
リュートが言った。
「ん、寝る前みたいな感じ。」
アヤメが言った。
「これでいいか?」
カイトとがそう言って、アロマスティックとアイマスクを置いた。
「ないす。」
アヤメが言った。
「そろそろ来そうだから、行こうか」
リュートがそう言うと、3人はその場から離れた。その後、サリアが合流した。
「あれは、何をしておったのじゃ?」
コアが言った。
「うーん、分からないけど普通じゃなかったわよね」
サリアが言った。
「そうだよな⁉︎絶対やばいやつやってたよな⁉︎」
「大丈夫だよ安心して、ニナさんのスキンシップが特殊なだけだよ」
リュートが言った。
「いや、安心できそうに無い…」
「ねぇ、教育と洗脳ってやってること同じなんだよ」
リュートが唐突に言った。
「おい!今のどう言うことだ!」
カイトがリュートに言った。
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午前の筆記テストが終わり実技試験の時間がやってきた。




