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Ex:02 無能な勇者とミハルの関係(前世エピソード)

 異世界、大和の国。

 ここは日本の文化によく似た発展をした、異世界の極東の島国である。



 無能な勇者と呼ばれた青年と妖刀使いのニンジャ=ミハルが初めて出合った頃。

 この頃のミハルは、まだ妖刀を使いこなせない未熟なニンジャであった。



 ある日。

 小柄で色白な和風美少女ミハルは、大きな武家屋敷の庭先で、大和の国の忍者衆を統括する御館様と呼ばれる威厳のある壮年の男性と対面していた。


「例の勇者と接触したそうだな。あの男、どう見る?」


「はっ、聡明で穏やかな性格だと思いますが、あまり強そうには見えませんでした」

 ミハルは頭を下げて答えた。


「無能な勇者と言う者もいるが、あれでも大和の国の勇者だ……ミハル」


「はいっ」


「警戒されないよう、しばらく護衛として行動を共にして動向を掌握しろ」


「承知しました」

 ニンジャは上司の命令を断ることはできない。

 その日からミハルは、大和の国が召喚した勇者と行動を共にすることになった。



 翌日。

 ミハルは、勇者の住む宿舎を訪ねた。


 青年は、シンシと名乗った。

 すらりとした体形の黒目黒髪の優しそうな青年である。


 改めて見るとあまり強そうには見えないし、実際にミハルの方が数段強かった。


 ミハルは、少しがっかりした。

 ミハルは、もっと強そうで頼りがいのある御館様のような渋い男性が好みなのだ。


「でも、護衛の任務は全うします。それが大和の国のニンジャです」

 ミハルは、ふんすと両手を握って言った。


「急にどうしたの?」


「あなたは、余計なことはしないで下さいね!」


「もちろんだ。戦闘は君に任せるよ」


「そのとおりですが、それもどうかと思います!」


(まったく。こんなつまらない任務はさっさと終わらせてしまいましょう)

 この頃のミハルは、そう思っていた。



 翌日。

 魔物の集団が発生し、ミハルとシンシが対応にあたった。

 ミハルが回避型前衛を務め、シンシは後ろで勇者のスキルで「応援」する。


 シンシは、勇者スキルの使い方が的確だったので、戦闘はすぐに片付いた。

「すごいよミハルさん。とってもかっこよかったよ」


「あ、あの程度のことは、大和の国のニンジャなら出来て当然なのです」

 簡単な任務を達成しただけなのに、笑顔でめっちゃ褒めてくれる。

 ミハルの胸の奥がほんのりと暖かくなった。


 なんだこれ?

 ミハルは、自分の気持ちに戸惑った。



 翌日。

 新たな任務を達成した。


「ミハルさんのおかげでこの村の安全が保たれる。みんなが喜んでいたよ」

 その日も、笑顔で褒めてくれた。


 次の日も、その次の日も。

 シンシは、任務を達成したあとは、決まって笑顔で褒めてくれた。



 そして、ひと月も経過した頃。

 ミハルとシンシは、手ごわい大型の魔物と対峙していた。


「ミハルさん。援護するからもう少しだけ頑張って!」


 シンシは、勇者スキルの応援と勇気を発動した。

 ミハルのステータスが上昇した。


「ん……気力充実、覚醒!妖刀髪切り丸っ」

 多少手ごわい魔物であっても、覚醒した妖刀の敵ではなかった。

 ミハルは、危なげなく戦闘に勝利した。



 任務終了後。

「どうでしたかシンシさん!見てましたよね?」


「今回もすっごく、かっこよかったよ」


「うふふ。シンシさんの応援のおかげです」

 初めは、頼りなく感じていたシンシであったが、的確なサポートで十二分に自分の能力を引き出してくれる。

 そして、頑張ったあとは大げさなくらいに褒めて甘やかしてくれる。

 ミハルは、辛く苦しいだけであったニンジャの仕事が、こんなにも楽しいと思える日が来るとは考えたこともなかった。


「この任務、もう少しだけ続けて良いかも知れません」

 ミハルは、シンシの背中に向かって小さな声でつぶやいた。



--

 このエピソード中のミハル

  レベル20程のニンジャ。妖刀をまだ使いこなせていない。


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