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Ex:01 前世のミハル(前世エピソード)

 異世界、大和の国。

 ここは日本の文化によく似た発展をした、異世界の極東の島国である。


 ある日突然、普通の人間が闇に浸食されて理性を失う原因不明の事件が発生した。

 闇に浸食されて性格と容貌が変質した人間は、通称「変質者」と呼ばれていた。


 なお、普通の人間は、変質者に近寄ることすらできない。


 変質者と接触した瞬間に闇に浸食され、新たな変質者となってしまうためである。

 これに対抗できるのは、上級神官職か一部の高レベル戦闘職などに限られていた。



 その夜。

 小柄で色白な和風美少女のミハルは、変質者の救助・討伐の任務のため、大和の国の市街地を駆けていた。


 背には陽炎めいた燐光を発する日本刀を背負っている。

 ミハルは、こう見えて怪異を祓う妖刀を扱うニンジャであった。


 やがて、ミハルは大柄で黒い装甲を身に着けている変質者を発見した。


「妖刀髪切り丸、抜刀!」

 ミハルは素早く駆け寄って、大柄な変質者を斬撃した。

 しかし、二度三度と斬りつけても、闇の浸食度合いが高過ぎて、祓う先から闇が回復した。


 大柄な変質者は、闇の浸食度合いが高く、この頃のミハルにとっては強敵であった。

 ミハルの顔色は白を通り越して青白くなってゆく。


 妖刀の制御には細心の注意を要する。

 気を抜くと一気に気力体力を吸い取られて、動けなくなってしまうためである。


 時間とともに、妖刀がミハルの気力体力を削ってゆく。

「未熟……ここは一度退却して体制を立て直すか?」


 ミハルの気力体力が尽きそうになったとき、暖かい光が降り注いだ。

 ミハルが振り返ると、すらりとした体形の黒目黒髪の青年が駆け寄ってきた。

「あ……あなたは?」


「大和の国に召喚された勇者だ。応援するからもう少しだけ頑張ってくれないか」


 勇者スキルの「応援」によって、ミハルのステータスが一時的に上昇した。

 息をするのもやっとだったミハルの体力が少し回復した。


 そう言えば、ミハルは噂話に聞いたことがあった。

 最近、大和の国に召喚された勇者のことを。


 その勇者は、戦闘スキルを一切持たずに召喚されたため、無能と呼ばれていたはずだった。


「ちょっとだけくすぐったいぞ」

 青年がミハルの背に手を当てると、なにか暖かいものが流れ込んできた。

 その勇者は、「勇気」を他人に分け与えることができる優しい勇者だった。


「あっ、この力が……勇気?」

 ミハルの気力体力が上限を超えて回復した。


「すごい、今ならできる……覚醒!妖刀髪切り丸っ!!」

 ミハルは、妖刀の真の力を解き放った。


 覚醒した妖刀の消費気力は桁違いだが、それ以上の勇気を勇者から分け与えられた。

 妖刀の刀身からは,倍以上の長さの蒼い光の刀身が発生した。


「闇を……斬り裂け! 神斬り丸っ!!」

 ミハルは、叫ぶ!

 変質者を斬撃すると闇の切断面から、激しく黒い粒子が噴き出した。


 ミハルが刀身を鞘に納めると、同時に変質者は、ばったりと地面に倒れ元の姿を取り戻した。


 なお、元変質者の身体には傷ひとつ無かった。

 闇を斬り、怪異を斬る妖刀の特殊能力であった。



 戦闘終了後。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」

 ミハルは、頭を下げた。


「とんでもない、よく一人で頑張ったな。これは、すべて君の修行の成果だよ」

 そう言って、青年はミハルに微笑んだ。


 ミハルは、地道なニンジャの仕事を認められたような気持ちになって、こころの中が少しだけ暖かくなった。

「このご恩。必ず返します」


 頬を赤くしたミハルは、ごまかすように青年に背を向けた。



 異世界で、無能な勇者と呼ばれた青年と妖刀使いのニンジャ=ミハルが初めて出合った日の話である。



--

 このエピソード中のミハル

  レベル20程のニンジャ。妖刀をまだ使いこなせていない。

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 無能の勇者のスキル

  意志疎通:特定の対象と意志を疎通する(異世界の知的生物と会話ができる)

  応 援 :ステータス値の一時的な上昇

  勇 気 :一時的に最大値を超えて気力体力を回復する

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