9-3 サラリーマン大湊進士(3)(ルート分岐有り)
進士は、急な展開に少し戸惑っている。
美人社長さんと美少女家政婦さんは、なにやら真剣な表情で内密の相談をしていた。
やがて話がまとまったのか、美春が振り返って言った。
「とりあえず、夕ご飯にしましょう。私、お手伝いしますよ」
先ほどの、やり取りは進士への歓迎のサプライズということだった。
「私の、魔眼については秘密にしておいてください」
秘書室長の武智の言葉に、進士は頷いた。
「わかってますよ室長。とっておきの宴会芸でしたね」
進士がそう言うと、武智はとても残念そうな表情をした。
それにしてもアレはどういう仕掛けなのだろうか。
あとで教えてもらおうと進士は思った。
しばらく待つと夕食の時間になった。
洋館の食堂では、大きなテーブルに豪華な料理が並んでいた。
「これは素晴らしいな」
美春の料理には、鬼龍院も感心したようすだった。
うちの家政婦さんは有能です。進士も鼻が高かった。
進士、美春、鬼龍院、武智の全員そろって食事が進む。
「ところで、貴様は本当に何も覚えていないのか?」
鬼龍院が進士に問いかけた。
「なんのことでしょうか?やはりお会いした記憶は無いのですが?」
「前世の記憶が無いのか……私の鑑定スキルが文字化けしている。こんなことは初めてだ」
鬼龍院が首を傾げた。
「そういえば、皆さんはどうして社長を魔王と呼ぶんですか?」
「うむ、それはだな……」
鬼龍院が困った顔をしたので、秘書の武智が助け船を出した。
「実は、社長が会社を立ち上げたころ、ちょっとやりすぎて業界のシェアを根こそぎ奪ってしまったことがあったのです」
「あぁ、なるほど。こんなに若くて綺麗な女性にシェアを奪われたら、同業他社さんから見たら魔王とも呼びたくなりますよね」
「同業他社から見たらなんだって?」
「若くて綺麗な女性……ですか?」
「うむ、そうだ!自分では言いづらくてな」
「なるほど、わかります」
進士が頷くと、鬼龍院はとても嬉しそうに笑った。
「よしよし、進士とやら。気に入ったぞ、貴様にうちの会社の半分をやろう」
ルート分岐:鬼龍院社長の申し出
( 受ける ・ 受けない )