7-1 家政婦さんは現役女子高校生
黒目黒髪の青年、大湊進士は、ごくごく普通なサラリーマンである。
祖父母から管理を受け継いだ少し古いが大きな一軒家を下宿屋に改装して、三名の美少女達と住んでいる。
なお、最近もふもふした大きな犬とガチムチのかみさまが増えた。
ある日の夕方。
進士が会社から帰宅すると、玄関付近で聞きなれない女の子の大きな声が聞こえた。
「白上先輩、こんなところで何をしているんですの!?」
進士が覗いてみると、某難関お嬢様学園の制服を着た黒髪ツインテールの女の子と家政婦の白上美春がモメているようだった。
「どうしたの?美春さん」
「あっ、お帰りなさい進士さん。今日もおつかれさまでした」
進士が声をかけると、美春は嬉しそうに微笑んだ。
「白上先輩!こ、この方とどういうご関係なんですの!」
「どういうって、それは……」
美春は恥ずかしそうにチラリと進士を見て目を伏せた。
「なに?この新妻感……あ、あなた、まさか?」
ツインテールの女の子は振り返って進士をキッと睨みつけた。
「俺は、ここの下宿屋の大家で、美春さんは家政婦さんだよ」
「本当ですの?詳しいお話、聞かせてもらえますか?」
下宿屋の居間にて。
進士は、黒髪ツインテールの女の子に犯罪者を見るような目付きで睨みつけられていた。
女の子は、藤麻乃舞子、高校二年生と名乗った。
「美春さんが現役女子高校生だって!?」
進士が驚きの声をあげた。
「白上先輩は、現在高校三年生。学園内でもトップレベルに成績優秀、文武両道な才媛として有名でしたわ。でも、ある日を境にぱったりと姿を見た人がいなくなって学園の皆さんが心配していましたの」
「マジで……美春さん学校行かなくてもいいの?俺、犯罪者になっちゃうの?」
これまでやましいことは一切なかったが、世間の目はそうはみてくれないだろう。
パパ活?未成年淫行?進士は冷や汗をかいた。
「進士さん落ち着いて下さい。私は高校卒業の単位はすべて取得済みなので、学園に通う必要はありません」
「えっ。そうなの?」
実は美春は、高校二年生の時には飛び級制度で大学卒業相当の単位を取得している。
「はい。家政婦のお仕事に専念するために学園を退学しようと相談したところ、学園長がどうしても在学だけはしておいてくれと頭を下げるので仕方なく籍だけはいれてあるのです」
「要するに、現役の女子高校生という事だよね?」
「安心してください。高校生が通学のために、アパートや下宿屋で一人暮らしをすることは珍しいことではありません。それに、学園ではアルバイトの許可を得ていますので家政婦のお仕事で収入を得てもまったく問題ありません」
「それでも、女子高生が家政婦のお仕事に専念するために休学するなんて、聞いたことがありませんわ」
「うふふ。私は自分のやりたいことをしているだけなので、ご心配頂かなくても大丈夫ですよ」
「な、なんだか納得できませんわ……」
舞子が進士をビッと指さした。
「なんなんですかこの方、ずるいですわ!前世でどんな徳を積むと、白上先輩にお世話してもらえるんですの?魔王でもぶっ転がせばいいんですか!?」
「いや、そんなこと言われてもな。少し本音が漏れているし落ち着いてくれ」
なお、進士は覚えていないが前世で魔王を撃退している。
「今日のところは帰りますわ!」
そう言い残して、ツインテールの女子高生、舞子は帰っていった。
「あいつまた来そうだよな」
「悪い子ではないのですが懐かれてしまって。とりあえず、皆を呼んで夕ご飯にしましょう」
そう言って、美春はにっこりと微笑んだ。
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登場人物紹介
藤麻乃舞子
藤麻乃舞子は、異世界転生者である。
某難関お嬢様学園に通う、黒髪ツインテールの高校二年生である。
前世では、大和の国の忍者衆に所属し、大和の国の姫サクヤの警護ならびに影武者を務めていた。
前世の記憶は無いが、ミハルへの尊敬の念だけはなんとなく残っている。
勇者シンシとの交流はほとんど無かったようである。
「わたくしも白上先輩にお世話してもらいたいですわ」
残念な言動が多いが、成績も良く体操部に所属する元気なお嬢様である。