Ex:06 大和の国の姫サクヤ(前世エピソード)
異世界、大和の国。
ここは日本の文化によく似た発展をした、異世界の極東の島国である。
ある日。
勇者シンシは大和の国のお姫様サクヤにお城に呼び出された。
サクヤは、黒目黒髪で仙女のように美しいと言われている二十代前半に見える女性である。
今回の勇者召喚の責任者であり、また上級神官職の聖女でもある優秀な人物であった。
「あなたの活躍の様子は城内でも噂になっていますよ。 付近の魔物の討伐を精力的に実施してるとか。私も勇者の召喚者として鼻が高いです」
「ありがとうざいます。すべて自分の仲間たちの協力のおかげです」
「聞けば、いずれも若くて美しい娘ばかりとか……どういうことですか?」
「えっ?」
「どうして、わたくしにお声をかけてくれないのです?」
「いやいや、姫さまのお手を煩わせるほどのことは……」
「勇者として活動するときには、呼ぶように言いましたよね?」
「そ、そうでしたか?」
「言いました!わたくしも勇者と一緒に戦って、後世に名を残したいのです!」
「えぇーと、わかりました。この件は持ち帰って弊社で検討いたします。申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください」
「弊社……まぁ良いです。頼みましたからね」
「ところで、姫さまにお願いがあります。携帯電話のような魔道具があればお借りしたいのですが」
「なんだ携帯電話とは?」
シンシは、携帯電話について詳しく説明した。
「なるほど。その魔道具を使って、わたくしに連絡をいただけるというわけですね」
話題を逸らしたと思ったら、また戻ってきた。
シンシは増えた仲間の連絡に携帯電話があれば便利だよねと思って聞いてみただけである。
「魔道具に詳しい者を紹介しましょう。ふふ、楽しみですわ」
そう言って、サクヤ姫は嬉しそうに笑った。
数日後。
シンシの宿舎に、いつもの三人の美少女が集合していた。
ニンジャのミハル、戦巫女ユキナ、魔法騎士アンネロッテである。
「これが魔石の共振現象を利用した無線通信機だ。離れた場所に音声を届けることができる」
携帯電話のような魔道具は無かったが、代わりに無線通信機のような魔道具を開発してもらうことができた。
耳部に装着して使えるように小型化している。
開発者は大賢者フロイ。北の森に隠棲する仙人のような老人だった。
『皆さん聞こえますか? これ、とっても便利ですね』
アンネロッテの声が、無線通信機から聞こえてきた。
シンシが、無線通信機の親機を持つと、なぜか意思疎通のスキルが働いて子機をもつ全員に通訳機能が働く嬉しい機能まであった。
その後、アンネロッテは、飛行の才能を活かして町の巡視・巡回に協力して、教会騎士団や町の人々と仲良くなった。
また、この日を境に、シンシたちはさらに魔物の討伐記録を伸ばすことになったがそれはまた別の話である。
一方、大和の国の城内では、無線通信機を前に上層部が話し合っていた。
「サクヤ姫からお借りしたこの魔道具。これは素晴らしい発明ですよ」
「これがあれば、戦争の常識が変わります」
「どうやらあの勇者の発案らしいですぞ」
「誰だ無能の勇者とか言っていたやつは!この魔道具は我が国の最高機密とする」
「しかし、あの勇者の元には、西国の魔法騎士が世話になっているはずですが……」
「アイツか……」(全員、アンネロッテを思い出して頭を抱える)
本人の知らないところで、勝手にシンシの評価が上昇していたのであった。
そして、その気は無いのに上層部に魔王のごとく恐れられているアンネロッテ(参照:Ex:05 天空城の魔法騎士)。




