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例えば俺の前世が勇者だったら、見知らぬ美少女が次々に押しかけて来たりするのだろうか?  作者: ゆす


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5-1 雪奈のかみさま

 黒目黒髪の青年、大湊進士は、ごくごく普通なサラリーマンである。

 祖父母から管理を受け継いだ少し古いが大きな一軒家を下宿屋に改装して、三名の住人(全員美少女)と住んでいる。

 なお、最近もふもふした大きな犬が増えた。



 夕食後。

 進士と美春、雪奈、アンネロッテは居間でくつろいでいた。


「最近、ご近所で空き巣の被害が増えているそうですよ」

 全員分のお茶を入れながら、小柄な色白和風美少女である美春が言った。


 なお、こう見えて美春はなんでもできる超有能な万能家政婦さんである。


「へー、複数の未成年女子を同居させている犯罪者ならここにいますけど?」

 黒髪でスタイルの良い今どきの美少女である雪奈が進士の方を見ながら言った。


「んん?誰のことかな。俺は健全な下宿屋の経営者だが」


「あんた家賃収入ゼロじゃない?」


「食費しか支払っていないおまえが言うな」


「そういえば わたしも やちん はらってない」

 金髪碧眼の西洋美少女であるアンネロッテが頭を下げた。


 アンネロッテは、留学のため来日した女子高校生であるが、生活費の入金手続きが遅れているため、未だに下宿の家賃を支払うことができていない。


「ふふっ、アンネは可愛いからそこにいるだけでいいのよ。

 進士は一回見るたびに一万円を支払うこと」


 色白スレンダーショートカットのアンネロッテは、黙って座っていれば西洋人形のように可愛らしい。


「ちょっと待って。雪奈が言うと冗談に聞こえない。

 アンネさんは、家賃のことは気にしなくて良いからね?」


「ありがとうございます しんし。 こんど からだでかえす」


「えっ!?」「えっ?」「ん?」


「は、働いて……と言うことですよね?」

 色白な美春の肌が青くなった。

 美春は肌の色が白いので顔色の変化がすぐにわかる。


「進士……このロリコン!」


「なんでだよ?!」

 この下宿屋の大家であるはずの進士の立場はなぜか弱い。



「冗談はさておき、ご近所の空き巣被害の増加について」

 進士は無理やり話の流れを元に戻した。


「基本的には、美春ちゃんがいてくれるからうちは問題ないわよね?」


「まったく もんだい ない」

 雪奈の言葉にアンネロッテがうなずいた。


「おいおい、美春さんは女の子だぞ。在宅中に空き巣が入ってきたら美春さんが危険じゃないか!」


「進士さん……」

 美春は進士の言葉に頬を赤らめた。


「なんで? みはるが あきす かえりうち」


「あはは。アンネさんは冗談も上手だね。こんなに『か弱い』美春さんが空き巣を撃退できるわけがないじゃないか」


「そ、そうですよ。空き巣こわいです」

 美春は目を泳がせた。

 なお、美春の前世はレベル150超えのニンジャである。


「と、言っても戸締りを強化するくらいしかできないけどなぁ。

 うちの番犬は大人しいから役に立つのだろうか?」


 最近飼い始めた金色の毛並みの番犬は、身体は大きくもふもふだが滅多に吠えない。

 なお、食事の量は進士の三倍である。


 結局、その日の夜は「各自が気を付ける」という無難な対策をとることで解散となった。


 その日の深夜。

 進士がそろろそ寝ようか思っていた頃。


 進士の部屋のドアを控えめにノックする音が聞こえた。

 ドアを開けると、そこには寝巻を着て、なぜか枕をかかえた美春が立っていた。


「なんだか家の外に人の気配がするのです」

 小柄な和風美少女の美春が進士を見上げて不安そうに言った。


「気のせいでは?(……美春さんが言うのであれば本当に誰かいるのか?)いや、心配だな」


 進士の美春に対する信頼度は高い。

 こう見えて、美春はなんでもできる有能家政婦さんである。


「そう言えば、うちの番犬は?」


「今夜はアンネちゃんと一緒にいるようです」

 普段は大人しい番犬だが、ひとまずアンネロッテは安全だろうと判断できる。


「では、雪奈にひと声かけよう」

 進士と美春は雪奈の部屋を訪ねた。


 ドアをノックすると、寝間着に着替えた雪奈が出てきた。


「どうしたの?二人そろって夜這い?」

 寝間着姿の雪奈は妙に色っぽかった。


「おまえが言うと冗談に聞こえないんだよ。

 庭に誰かがいるようなので念のため報告に来たんだ」


「ふーん。たぶん大丈夫よ。うちのかみさまに頼んだから」


「えっ?誰に頼んだって?」


「だから、かみさま。うまく追い払ってくれるわ」


 そのとき、裏手の庭で男の悲鳴が聞こえた。


「なんだお前は!うわぁっ!!た、助けてくれ!」


「ほらね」

 そう言って、雪奈はにっこりとほほ笑んだ。



 進士と美春、雪奈の三人が裏手の庭を覗いてみると、走って逃げてゆく二人の男の後ろ姿が見えた。

 必死に逃げてゆくあの様子では、二度とうちの敷地に無断侵入することはないだろう。


「……どういうことだ?」

 進士は首をかしげた。


「し、進士さん、あれを見てください」

 美春の指さす方を見ると、木陰の下に巨大な人影が見えた。


 庭に生い茂った樹木が視界を妨げるため、しっかりと確認するすることができないが、丸太のような手足と広い背中の巨大な男が立っているように見えた。


「あれが雪奈のかみさま……いや鬼か?」

 よく見ると大男の前頭部には雄々しく伸びる二本のツノのようなものが見えた。

 右手には、鉈のような分厚い刃物、左手には鈍器のようなものを持っていた。


 進士たちが驚いて見ているとやがて、大男の姿は影に溶けるように消えてしまった。



 進士と美春、雪奈の三人は居間にいた。

「説明してもらうぞ雪奈」


「あれは、うちの実家のかみさま。わたしに憑いて来てしまったから、今はこの下宿屋のかみさま……かな?」


「おいおい、大丈夫なのかアレ」


「悪い子には罰を与えると言われているけど、わたしに危害を加えなければ無害だよ。今はこの下宿屋のみんなを見守っている」


「確かに、見かけは恐ろしいですが、悪い気は感じませんでしたね」


「美春さんが言うなら心配しなくても良いものなのかな?」

 進士の美春に対する信頼度が高い。



 ほっと、ひと息ついたあと。

「あれ?雪奈。もしかして……俺、試されていた?」


「ふふっ。初めて会ったあの日。進士がわたしに無理やり迫ってきていたら……」


「全っ然、安心できないじゃないか!」


 下宿の防犯機能を確認した日の話である。


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